下手くそなピースサイン
今回も読んで頂きありがとうございます。
インスタントフィクションです。
原稿用紙1枚の物語です。
寄せては返す思い出と波を感じて頂ければ幸いです。
砂に書いた文字は海水に2回ならされ読めなくなった。
好きという文字も嫌いという言葉もこの場所は薄くする。
それなのに、思い出したい時はここに来る。
いつも遅刻してくる。待ってないよって嘘もつけなくなって。
待たせた事なんて無かったと思うのに君は急ぎ足。
慌ただしく流れた時間の中で、浮かぶのは下手くそなピースサイン。
生れては死んでいく波を重ねてしょっぱさも感じて。
立ち上がって足跡をつける。波もここまでは消せまい。
嘘をつかない君がついた嘘を僕は信じた。
「おやすみ」って僕は言った。
君は知らなかったのかな。
「ちょっと休憩」で心臓を休ませちゃいけないこと。
それは休憩じゃないってこと。「おはよう」って言えないこと。
強く風が吹いて砂を運んだ。そうだ、波だけじゃなかったね。
明日も僕はここに来て、昇るか沈むかわからない太陽を見る。
また君を1日遠ざけるだけの日。
読んで頂きありがとうございました。
何かが心に残ってもらえたらと思って書きました。