仲間がふえたよ
予約投稿というのをやってみたくなったので、今回は昨日に続き投稿です。
不定期更新なのはこれからも変わらないのだよ・・・フフフ。
7/11(月) 「にやけるな」→「若気るな」に修正しました。
妹の天渡と、天渡とこの世界でお友達になったらしい《聖女》のミラ姉さんがここデルイト島にやってくるらしい。どれくらいで来るのだろう、楽しみだ。
天渡とのリンクは既に繋がった。今の天渡との距離、ここに近づいてくる速度、体力の残量、分かる、分かるぞ!!
この調子なら明日のお昼頃には再開できるだろう。まずなんと声をかけるか、うずうずして仕方ない。
こんな時はイリスと話すに限る。
「イリス」
「はい、我が主」
「久しぶりだな!元気にしていたか!!」
「主が何を仰っているのか分かりかねます」
いいんじゃないか?これでいこう。
あとは待つのみ・・・・。
◇翌日お昼頃◇
デルイト島の大きな鏡替わりになる湖で身を清め、髪を整え、イリスと横に並んで正座して待っている現在。それはやってきた。
『到っ着!着いたよ!ミラ姉!』
ズゥゥンと地響きをたて巨大な真っ白な竜が着地する。
ウェルキム君と比べると、尻尾と首が細く長い、鱗もゴツゴツというよりつやつやといった感じ。竜にも色々なタイプがこの世界にもあるようだ。この調子なら龍もいるか?
だがしかし今はそんなことより――
「久しぶりだな!元気にしていたか!!」
この挨拶だ!完・璧。俺だって伊達に長年イリスと生活していたわけじゃない。今の俺には友達がいるのだ!日本に居た頃の、妹としか会話の成立しない俺はもういない・・・・。
『わぁ、綺麗な人!天使の翼?3対だね。もしかして《大天使》さん?初めまして!私、天渡!《天竜》だよ!そしてこっちの人は――』
「僕はミラ。ハイエルフで《聖女》だ。初めまして、《大天使》さん。名前を聞いてもいいかな?ぜひこれから仲良くしていきたい、3人でガールズトークといこうじゃないか」
「ふふ、お友達が増えたようで嬉しいですね。私はイリス。《大天使》で間違いありませんよ。この世界に降り立ってかれこれ50年程。今までどんな風に生活してきたのか、積もる話もありますし、ガールズトーク、しましょうか」
『うんうん!まずは私はね――』
「まぁ、それはそれは大変だったでしょうに――」
「僕の一番印象深い出来事は――」
「・・・・ちょっと散歩してこようかな、なんて・・・・(ぼそ)」
『ひゃー!イリスさん私尊敬します!!握手してください!!』
「照れますね。そんな大げさですよ」
「僕もイリスさんと呼ばせて貰おうかな?構わないかな?イリスさん」
「・・・・いいけどな、慣れてるし。久しぶりにウェルキム君にでも会いにいくか・・・・(ぼそ)」
てくてくと南に見える竜が住まう山に向かって歩き出す。ウェルキム君タクシーは今、乗車可能かな?それなりに長くいたここデルイト島だが、お別れの時がきたな。結構あっけないもんだ。
そう思いながら歩いていると――
「はぁ、我が主。私が悪かったですから、お一人で何処かへ行かれようなどとお考えにならないで下さい。末永く、私と共にいてくれるのではなかったのですか?」
『にぃに、ごめんね。ちょっと意地悪したくなっちゃって。でも、久しぶりに会えて嬉しいよ!私のにぃに!これからは私も一緒!!』
「僕も謝る流れかな?50年も祈りを無視されてた件についてはイリスさんから説明を聞いたし、君の妹の天渡ちゃんからも悪い話は聞かないし、仲間外れになんてしないからこっちにおいでよ、シノブ君」
いつの間に俺は孤独が寂しく感じるようになったんだろう。日本に居た頃は天渡がいたが学校もあるし天渡にも友達との付き合いがあったから一人の時間は多かった。
アシュラに来てからはどうだ?ウェルキム君とすぐ出会って、イリスとずっと一緒にいる生活が続いた。50年だ。これがいけなかったのだろうか?いや、これはいけないことなんだろうか?
分からないな・・・・。
「あぁ、分からない・・・・」
「我が主」
『にぃに』
「シノブ君」
ずっと一緒に生活して見慣れたイリスの優しい微笑みが左から覗く。
いつの間にか竜の姿から日本で見慣れた人型の片目を隠したポニーテールになった天渡の姿が、髪や瞳、服装が真っ白になった状態で正面に佇んでいる。
ミラと名乗ったハイエルフが色白の肌、真っ白な瞳、オールバックにした真っ白な腰まで届く長髪、その端正な顔を右から覗かせている。
「・・・・3人とも真っ白だな。俺だけ黒基調で浮いてしまうよ。はは。俺は、シノブ。この世界ではそう名乗ってる。《半神》だ。今更イリスに言うのも、妹の天渡に言うのも変だが、もしよければ、俺と友達になってくれないか?」
いや、本当に改めて言うのも変な話だな。これじゃ今まで殆ど交流のなかったミラ姉さんに狙い撃ちで友達申請しているようなものだ。これは断られるか・・・・?
「ははは。天渡ちゃんに聞いていた通り、人付き合いが不得手と見える。でも話を聞いていた頃から君の事は気に入っていたんだ。僕は君の生き様を見てみたい。今日から僕ら4人、友達だ!」
む、むふふ。いかんいかん。笑うな。若気るなこの顔め!それ見たことか!!天渡たちがニヤニヤしてるぞ。だ、だが、だがしかし。
「むふふふふ。まさかこの俺に友達が3人もできるとは。そのニヤニヤ顔も今は受け入れよう。俺もニヤニヤがとまらないしな。むふふふふ」
『じゃ、改めて、4人でいっぱいお話しよっか!私の特技とかも見せちゃうよ!!』
そんなこんなでデルイト島に住民が2人増えて交流会が始まった。
天渡は竜の姿だと全長50mはある。竜種の中でもとびきりで大きいらしい。かっこいい、というよりも美しい、という言葉を進呈したいフォルムなのだが。
そんな天渡の竜形態の特技は真っ白な白炎を口から吐いたり、凝縮して熱線のようにしたりすることらしい。熱線のほうは見せてもらってないが、白炎は射程300mはあると思う。火力は聞いた限り、触れたら塵も残さないとか。
竜形態であと特筆すべき特技はというと、天空を駆けるその速度。細かい機動は苦手だが、大雑把に、例えば真っ直ぐ飛べばいいとなれば自分に勝るものなどいないと胸を張っていた。
では人型形態はどうなのか?というと、身体能力は元が竜なので言わずもがな、白炎を体のどこにでも纏わせられるのが大きい。放出量は竜形態ほどではないが、そこは本来の姿でない故十分と評価していいだろう。因みに服装はヘソのでた半袖の上衣に短パン、グローブにブーツ。相変わらず元気な奴だ。
天渡はこの世界に《天竜》として転移(転生?)した。降り立ったその場所は明らかに永い年月の経った荒れ果てた遺跡だったという。そこで天渡はそこかしこにいる光の玉――多分精霊だろう――に纏わりつかれて、離れようとすると悲しんでるのが伝わってきて中々遺跡から離れられなかったのだとか。
だが唐突に転機が訪れる。ある時からなんとなくとある方角から親しみの湧くなにかをかんじたらしい。天渡はそれを俺だと思い、光の玉と別れを告げ飛び立った。そこにいたのが――。
『ミラ姉だったってわけ!心同じくする者同士、出会うのは必然だったんだね!!』
ということらしい。ミラ姉さんが俺に祈りを捧げ始めたから心とか魂とかが繋がったんだろうか?
そのミラ姉さんはというと――。
「いやぁ、僕もあの時はびっくりしたよ。祈りを捧げたらいい事あるかな?なんて下心で始めたのに現れたのはおっきな竜ときた。体格差を見ただけで思わず失禁してしまうとこだった。すぐ人懐っこいかわいい良い娘なんだってわかって、結果的には楽しくなったし祈ってよかったと思ったけどね」
と、こちらも中々強か。
ミラ姉さんはこの世界にハイエルフの《聖女》となって転移した。降り立った場所は空飛ぶ自然豊かな浮遊島であった。そこは一言でいうなら楽園。美味しい果実や澄んだ空気、温泉なんてものまであったらしい。襲ってくるものなんていやしない。
ミラ姉さんはハイエルフだ。ただでさえエルフは寿命が長いのにハイエルフなんて老いて死ぬなんてことはない種族だ。つまりなにが言いたいのかというと。
「暇だった」
この一言に尽きる。
ミラ姉さんは退屈を知った。それで始めたのが祈りだった。《聖女》らしく祈ってみた。その結果現れた天渡によって退屈は消え去った。
ミラ姉さんの特技その1、守護結界。対象指定可能、範囲指定可能。色々守れる。
ミラ姉さんの特技その2、聖女の癒し。対象指定可能、範囲指定可能。死者だって死後時間が経ち過ぎてなければ蘇らせられる。
ミラ姉さんの特技その3、恵みの祈り。対象指定可能、範囲指定可能。自然に再生を齎し、込める祈りによっては聖地に変わることも。
ミラ姉さんはこんな感じ。服装は真っ白の下地に輝く白銀の蔓のような刺繍の施されたローブ。絵になるな。
「僕のお話はこんなところかなぁ?ささ、お次はイリスさんですぜ」
「私の話は面白くないと思いますが・・・・降り立ってすぐ我が主を探すのに奔走し、見つけて合流してからは我が主の面倒を見て、まぁ、はっきり申しまして楽しかったですよ?我が主と過ごす日々は」
嬉しいことを言ってくれるイリスだが、この50年で分かったことを詳しく述べると、まず翼は出し入れ可能。最初に言ってた槍を扱うための槍は、鎧の胸にはまっている天具なる玉が所謂アイテムボックスの効果を宿しているようでそこからでてきた。尚、槍も真っ白。
イリスの槍さばきは素人目にもわかる凄まじさ。俺の攻撃が当たったことはなく防戦一方だ。
イリスがもつ天力は奇跡を起こす力。デルイト島が今も無事なのはこの力のおかげ。でもイリスは天力を魔力に変換して魔法の練習をしてる。世界を旅するにはこのほうが都合がいいからだと。
一つの力を全く違う力に変換できるのは天力だからこそらしい。神力でもできないことはないが変換効率を考えたら絶対にやめておいた方がいいと言われた。
イリスはこんな感じ。そのあと俺の話をして交流会は終了。
『これでお互いのことは分かったね!これ以上はこれから世界中を旅するんだし自然と親睦も深まっていくよね!よぉし!じゃぁみんな私の背に乗って!早速そのルールル大陸のバー王国?に行こうぉ!!』
天渡がはしゃいでいるが無理もない。異世界転移して50年、碌に冒険してない。俺も神力の扱いには慣れた。仲間もふえたしそろそろいいんじゃないか?いいよな?イリス?
そんな俺の視線を感じ取ったイリスは――。
「はい、我が主。もちろんこれから本格的に戦闘訓練を始めますからご安心を。最初に言った通り、あと250年程、頑張りましょう」
俺の期待を裏切って、予想通りの返答をした。
イリス、お前はそういう奴だよ、分かってた。
「戦闘訓練を250年。イリスさんが言うなら仕方ないな。天渡ちゃんもいいね?旅はまだまだお預けだ」
『マジですかぁ・・・・。でもイリスさんが言うなら仕方ないですね。わかりました!やっるぞぉー!!』
君たちイリスに対しての評価高過ぎじゃない?俺も人の事言えないけどさ。
「ではまず我が主。神力を体外にださないで私たち3人と戦いましょう。天渡は白炎を纏って主に攻撃を、ミラは主の攻撃を守護結界で防御、私は遊撃です。ではいきますよ!!」
『うん!』
「おうさ!」
「いきなりだな!?しかも三対一か!イリスだけでもきついってのに・・・・っ!」
唐突に始まった戦闘訓練。
天渡の拳を腕で受け反撃するが白い障壁に阻まれ止まる。その隙に後方からイリスの槍が脇腹を殴打する。体勢が崩れることはないがびっくりする。その間も天渡の白炎を纏った攻撃ラッシュは続き、俺は反撃の相手をイリスやミラ姉さんに変えようも、イリスには当たらない、ミラ姉さんには届かない。必然的にまだ天渡の相手が一番楽という状態になる。といっても俺は防戦一方なわけで・・・・ナニコレいじめ?
ずっと天渡の攻撃を捌き続けるが終わりが見えない。ミラ姉さんの体力がなくなるのを待つしかないか?結構キツいぞこれ。
「はい。一旦これくらいにしましょう。お疲れ様です。どうです我が主?戦闘訓練、頑張る気になりましたか?」
「ああ、もっと強くならないとな。神力を体外に出さすとも、あの状況を乗り越えられるくらいにはなりたい。250年もあっという間かもな」
目標は戦闘区域を広く使って各個撃破できるように、だな。一か所に留まってちゃいい的だ。
『それにしてもにぃに硬い硬い。私の攻撃全く通じてないよ』
「僕も守護結界にもっと応用を効かせて用いれば・・・・」
戦闘訓練に対するやる気が上がったのはどうやら俺だけじゃないらしい。
イリス先生は流石だな。
「しかし、我が主には格闘術が合っていると思っていましたが、神力を使わないのであれば武器や防具があってもいいかもしれませんね。主が傷つかないとはいっても、生身では攻撃の幅が狭いですし、防げる攻撃も限られる。神力を使う時には武装解除すればいいのですし、どうですか、我が主?」
む?いきなりな話だな。だが一理ある。先程戦っていて盾や剣があればとは思っていた。
「そうだな。大盾と長剣が欲しい・・・・かな?それがあれば大分変ってくると思う」
「お?いいじゃないか!ならどうせだしフルプレートのアーマーも作って、剣、盾、鎧、全部真っ白にしちゃえよ。旅に出るとき四人揃って『自由の白星』!とか名乗ってさ。ちょい安直かな?でもいいと思わないかい?」
『いい!いいよそれ!!ならデザインもかっこよくしないとね!!頭の部分も脱げないから、ドラゴンみたいに口がガパッと開くようにして、角もつけよう!!くぅ!わくわくしますな!!』
なにやら勝手に話が進んでく。鎧いる?イメージカラー的に必要か。ふふふ、確かにわくわくしてきたな。あ、でも――。
「作るったってどうやってよ?この島には珍しいだろう鉱石くらいあるにはあるが、加工するための技術も設備もないぞ?」
この問題がある。結局大陸に渡ってから揃えるしかないのか。それまで格闘術を頑張りますかね。
「いえ、この島で揃えられますよ。多少時間はかかりますが、どうせあと250年ここにいるんです。『自由の白星』、結成しましょう」
え?できるの?流石のイリス先生だ。イリスがいれば何も心配はいらないな。
『じゃ!『自由の白星』結成会議を開くよっ!全員集合!!』
「「「おー!」」」
「まず最初に、作るのは『神器』です。でなければ主に相応しくありません。この相応しくないの意味は、分かりますよね?それで、『神器』を作るために必要となる鉱石は、私が天力の奇跡でまず器の鉱石を生み出し、それに主が神力を毎日注いでいきます。100年です。100年毎日私がいいというまで神力を注いでください。そうして出来上がった鉱石を私と主で協力して形にしていきます。その時天渡とミラもなにかしたければ今のうちから準備しておくと良いでしょう。大まかにはこんなところです。質問はありますか?」
質問なんてない。全部イリスに任せる。俺はイリスの言われた通りにやってくさ。
『はいはい!質問です!私の鱗とか使えないかな?100年もあれば何枚か勝手に落ちると思うんだよね!』
「《天竜》の鱗は粉状にして混ぜればさらに素晴らしい『神器』が出来上がりますね。いい着眼点ですよ、天渡」
「はいはーい。僕も質問。僕の祈りは役に立つ?」
「《聖女》の祈りは出来上がった『神器』に付与することができます。いつでも祈りは更新できますし強力になるのは間違いないですから、とても役に立ちますよ、ミラ」
わいのわいのと話が盛り上がっていく。俺はいい友達を持った。
あーでもない、こーでもないとデザインの話をしたりして、満天の星空の下、夜は更けていく――。
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