こっからがなげーのさ
ちょびっと入院してました。ほんとにちょっとですけどね。
どうでもいいですねこんな事。
帰宅したので更新します。不定期更新の作品だから間がちょっと開いたのは許してほしいかななんて。
「で?結局なんでイリスさんは既にこの世界の力に適応できてるわけ?転移してすぐ俺を探したのなら特訓する暇もなかっただろう?なんか俺や世界についても詳しそうな雰囲気だけど。俺とイリスさんのこの違いは何よ?」
俺はこの世界にきて結構苦労してるんだが、イリスさんからはそれが感じられない。
まさか俺の知らないお手軽な便利ななにかが――
「《管理者》様にお願いしたら二つ返事で叶えてくれました」
・・・・さいですか。
あー俺も《管理者》とちゃんと話をしていれば・・・・っ!!
ま、こればっかりは後の祭りだ、気にしない方向でいこうか、仕方ない仕方ない。
くそっ《管理者》め!気の利かない奴だ!!別にいいんだけどさっ!!!
「はいはい、我が主。《管理者》様の悪口を言うのはやめましょうね。強力な力を与えてくださっただけでも感謝して然るべきです。それより訓練を始めますよ、まずはその駄々洩れの神力をどうにかしましょう。私の手をとってください、私のほうでコントロールしますから感覚を覚えてくださいね」
なんでもできるなこの《大天使》。もう頭が上がらないよ。ちゃんと成果はださないとな、頑張ろう。
一日目はイリスさんが顔を紅潮させて慣れるまで大変だった。どっちが慣れるまでかは語らない。神力は天使にとってとてもイイものらしい。
五日目にはある程度落ち着いた。何がとかどっちがとか聞くなよ?なお神力は少しずつ凝縮されていっているとイリスさんは語る。
十日目からはこの世界の情報を聞かせてもらいながらの訓練だった。ちょっと驚きの事実もあった。
二十日が経つ頃にはさん付けをやめてイリスと呼び捨てにする仲になっていた。久しぶりに人型生物と雑談をした。女の子との会話ってこれで合ってる?なお俺が我が主と呼ばれるのは変わらない。
一ヶ月すぎて気づいた。ウェルキム君たち何処いった?え?十日前には巣に帰ったって?挨拶くらいしろよな、俺のタクシー。ホントに空気になりやがって・・・・。
そんなこんなで時が経つ。
◇二ヶ月後◇
「我が主・・・・やっと、なんですね・・・・っ!!」
「ああ、やっと、だな。俺は遂に、遂に・・・・!!」
遂にイリスに頼らずとも神力を体の周りに纏わせられるまでになった。完全に体内で完結させられるのはまだ先になりそうだが。
「しかしこれで残る訓練はあと一つ、旅の日は近いか?」
思わずワクワクしてくる、この二ヶ月美少女イリスの柔らかな手を堪能できたのは嬉しかったがやっぱり冒険、したいでしょ。
渡るとしたら人族と亜人族の国々があるルールル大陸、そのここから一番近い海に面した人族の国、バー王国だよな。
にやけが止まらない。
「何を言っているんですか?神力を体内で完結できるようになったら次は戦闘訓練。我が主は素手で戦うのがいいですね。私は槍を扱いますが主を傷つけるのは無理なので安心です。格闘術を覚えましょうね、我が主。ここからが長いですよ、共に頑張りましょう」
・・・・旅はまだ先だとさ。武術って極めるって概念ないって聞いたんだけどどこまでやるの?今の俺に寿命とかはないけどさ、10年くらいで勘弁してね。
「今の主の心の御声はもう聴こえませんが、考えていらっしゃることはわかります」
そう言うとイリスはにっこりと微笑んだ。笑顔が眩しい・・・・。
「最低でも300年はここで修行しましょうね?幸いここデルイト島は広く、あらゆる魔物に溢れています。鍛えるには絶好の場所と言えるでしょう。運がいいですね、我が主?」
そっかぁ、俺は運がいいのかぁ、300年かぁ・・・・イリスとの出会いは果たして・・・・ま、人付き合いなんてこんなもんだよな。
強くなることに抵抗はない。
「末永く、よろしく頼む、イリス」
「はい、末永く、ですよ?我が主」
異世界にきてドラゴンに会って《大天使》に会って、この先300年のプランは決まった。
――これでいいのか《管理者》?何か思惑があって俺を、俺たちをアシュラに招いたんだろう?
ちょっとイリスから気になることも聞いたし、なんとなく俺にさせたいことも予想つく。
でもなぁ、俺を選んだのは失敗だったかもしれないぞ?俺が人間だって事、忘れんなよ。
「主?どうかされましたか?」
「ふぅ。いんや、なんでもない。気長にいこうか。さーて長い長い修行の始まりだ!まずは体内で神力を完結させることからだよな、どうすればいい?イリス先生」
「ふふ、それでは我が主、このイリス先生が教鞭してあげます。脱落者にはお仕置きですから、覚悟しておいてくださいね?」
この先生は厳しそうだ。でも楽しくやれそう。
俺は微笑みながら頷く。
「よろしい、では、少し今の状態で戦うことにも慣れておきましょう。神力を体内に宿した状態と体に纏った状態では勝手が違いますから。いくら主がお強いとはいえ出来て困るわけでもありません。早速森の中に入って魔物と戦ってみましょう」
今の俺は分かりやすく言えば棘の付いた金棒だ。棘がある分ただの質量で殴るより攻撃力がある。最初にウェルキム君たちを泣かした時より凝縮して神力を纏っているから単体相手に対してなら今の方がずっといいらしい。こういうのは上手く使い分けする必要があるな。
神力を完全に体内に内包した状態は際限なく耐久力が上がり、如何なる外的、内的要因に問わず生存能力に特化した、イリスに言わせればセーブモードらしい。俺一人がこの世界で生き残るだけならこの状態で十分とのこと。まぁ、一応覚えてはおこう。
そんなこんなで森の中に入る。ここデルイト島は直径400km余りの大きさの真ん丸い島だ。俺たちが今までいた湖はそのど真ん中にある。そこから南にウェルキム君たちが巣にしている山があり、これから魔物と戦うため向かうのは逆の北側だ。南側に寄るほど魔物たちの強さも上がっていくらしい。最初は弱めから、ということだな。
「では主。まず主には戦うことに集中してほしいので魔物の索敵と案内役は私が務めます。今の主に近づいてくる愚かな魔物はこの島にはいませんのでこちらから出向きますよ、付いてきてください。多少の自然破壊は後で私が天力の奇跡で再生しますからご存分に」
そう言ってイリスは3対の天使の翼を羽ばたかせ木々の上空を飛んでいく。凄い速さだ、見失ってお仕置きされては堪らん、さてどうやってついてくか。
「ジャンプだな」
俺に翼はない。神力で飛ぶことはできようが練習が必要だ。ならばここは大きく空高くジャンプしてイリスの居場所を確認、空を足場に軌道修正していけばいい。
「イリスはっと、いたいた。ちょい高く跳び過ぎたな、イリス呆れてら。魔物討伐で名誉挽回だ」
軌道修正をしイリスの下へ向かう、俺は同じ轍は踏まないぞ。このまま重力に任せて落下したらクレーターができましたってオチはいらない。空を足場にゆっくり、ゆっくりとだ。
イリスが何やら指をさしているのでそちらを見るとでかいクマがいる、全長15mくらいか?あれを殺れと、そういうことか。
拳を振り上げドカンと一発ってな。ぐしゃぐしゃになってら、これでいいのだろうか、何の訓練にもなってない気がする。
イリスを見る。
「まぁ、こうなりますよね。これが今の主の現状です、お分かりになって頂けたでしょうか?主がこの世界で普通に旅をするには神力を完全に体内に押し留めるのは絶対条件です。このデルイト島はいくらでも私が天力の奇跡で再生させますから、大陸に渡りたいというなら修練あるのみですよ」
「・・・・みたいだな。これじゃ畏怖の対象にはなれても友達はできそうにない。イリス以外にも友達欲しいもんなぁ」
そう言う俺にイリスが微笑みかけてくる。なんだ、まだ友達ではなかったか、確かに少々友達という関係を築いたというには早すぎたか、わかった、わかったからその「仕方のない方ですね」という顔をやめろ、やめて友達になったらそっと教えてくれ。
「主、散歩をしましょう。この広い島を散歩しながら修練に励んでいきましょう。時々座って休んでお話をしましょう。神力のコントロールにはイメージが大切です、友達の私が、お話し相手になりますよ。自然と触れ合うのも忘れずやっていきますよ。星の在り方を知ることはきっと主の助けになるでしょう。今この時既に、主の楽しい生活は始まっているんですよ?」
イリスが何を言っているのか、何を言いたいのかこの時の俺には分からなかったが、しばらくそんな生活を送るのも悪くないと新たな生活が始まった。
散歩しながら色んな力加減で戦ったり、時に走って跳んで散歩ってなに?って思った。
疲れることを知らないのは俺もイリスも同じ、休む意味なんてない。イリスに言わせれば休憩の時間は思ったより頻度多めでとられた。友達と認めてくれたイリスとの会話は面白かったし、俺にとってこの時間は休憩とはちょっと違う感じがしたが何気に一番楽しみにしてる時間でもあった。
自然と触れ合うというのは木の実を食べたり草花を愛でたりとそんな感じ。あの大きな湖にも潜ったり泳いだりと、つまらないとは言わないがそれはイリスがいるからだろう。不満はないが一番謎に思う行動だったりする。
そんな生活が一体、幾日、幾年、続いたのだろう。いつの間にか俺は神力の完全内包を会得していた。
こんな生活にも意味はあったのだなと知った。イリスは凄い奴で、いい奴だ。
『――神さまー。今日も無視かーい?はぁ、毎日欠かさずお祈り始めて50年。今日も君の兄君はいいシカトっぷりだよ、天渡ちゃん。もう何度も聞いてきたことだけど、本当に仲良かったのかい?お姉さん、疑っちゃうなぁ――』
また声が聞こえる。少し前からこの声は毎日聞こえるようになった。俺のことを神さまと呼び、祈っているとは到底思えない口調でちょくちょく話しかけてくる。イリス曰くこの声は俺が神力体内完全内包を会得したから聴けるようになった《聖女》――俺やイリスと同じ転移者の祈りの声だという。
それを聞いた俺は会ってみたいと思った。だからイリスに俺からも声を届けられるよう最近は休憩時間にコツやアドバイスを貰っていた、特定の人物とリンクを繋げるのは結構大変だな、なんて話しながら今日も今日とていつもの生活を送っていたら先程の言葉だ。
天渡と、確かに言った。この世界に来ても一度、いや一瞬だって忘れたことのない名前。
俺の大切な妹の名だ。
「イ、イリス!今、《聖女》が天渡と、俺の妹の名前を言った!!もしかしたら俺の妹もこの世界に来ているのかもしれない!!なんとか会えないか!?俺は早く天渡に会いたいぞ!!」
もう会えないと思っていたのに、俺は天渡を想う度、落ち込むばかりだったというのに!何を勝手に沈んでいたんだ俺は!!《聖女》の言葉からして、天渡はずっと俺に会おうとしてくれていたというのに俺という奴は!!!
「主、今の気持ちを、想いを、万能の神力に込めてただ『届け』と願ってください。それできっと、伝わるはずです」
俺は願う。イリスに言われたままにただ願う。
――そしたら、暖かい何かと、どこか懐かしい何かと、繋がった気がした――
『にぃに!にぃに聞こえる!?にぃにだよね?もう!おっそいよぉ。《管理者》にこの世界に転移するっていわれて、にぃにも一緒にこの世界に来るって聞いて!しかも神の力を持ってるって聞いて!!それならすぐ会えるかなって思ったのに全っ然音沙汰無し!!とにかくこれでにぃにの居場所も分かったからすぐ向かうからね!!あと、にぃににずっと祈りを捧げてた同郷のミラ姉も一緒だから、無視続けてた分、覚悟しておいてねっ!!それじゃっ!!』
あぁ、涙がでる。天渡の声、久しぶりだ。感動で返事できなかった。すぐ来るっていってたけど、こんなとこどうやって来るんだ?ああ、そうか。天渡は《天竜》になったのか。姿が変わったって俺の妹に違いはない。
待ってるぞ、天渡。・・・・と《聖女》改めミラ姉さん?
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