残念空気竜爆誕
一話からずっと感想くれてた方がレビューまでくれていたのに気づいて変な声でちゃいました。
これは漢ならやらねばなるまいよとハートが語り掛けてきたので勢いで書きました。所要時間は3時間。
勢いで書いたけどそんなに悪くないといいな・・・。
読んでくださってる皆様、作者、頑張ります。
《大天使》・・・・?今目の前のこの女はそういった。こいつは俺と同じ・・・・?
いや落ち着け、神が存在する世界だ、天使だって元々いるだろう。この《大天使》が俺と同じ世界からの転移者だとは限らない。俺と同郷の元人間なら俺を主などと呼ぶはずもない。
幸いこの十日で発声しても問題ないくらいにはなった。それに今はかなり力が安定しているような・・・・《大天使》がいるからか?
とにかく情報が欲しい、こちらからも接触を図ろう。
「天使!初めて見たな、様をつけるべきだろうか?いやでしょうか?なにせ実物の天使に会うなど初めてなものでな、いやでしてな。君は、いやあなたは俺を我が主と呼んだがその理由を聞かせてもらっていいか?いやいいでしょうか?」
なんだ上手く話せないぞ今の俺すごく失礼な奴じゃないか天罰とかきたらどうしよう。
見た目は俺とタメっぽい、けど天使だから若く見えるのは当然かも、いや本当に同じ転移者の可能性も無きにしも非ずだよな、あぁもうさっきから思考がまとまらない!!
「ふふふ、困惑されているご様子、それも無理はありませんね。なぜならば――」
『てっ、ててててて天使様!?しかも大天使様!?おおおおお神よ!あなた方は遂に――ぶあっはへっぶっ』
ウェルキム君、無茶しやがって・・・・天使、様、のお言葉を途中で遮って大声で話し出すなど言語道断――だと思う。天使、様、にグーで殴られても文句は言えないぞ、俺は庇わないからな。
でも自分より動揺してる奴見ると落ち着くってホントだな。
「私が話しているのです、お黙りなさい。私に、なにより我が主に失礼ですよ。次我らの会話を邪魔したら――わかりますよね?」
圧が凄い――と思う。ウェルキム君ぷるぷる竜にジョブチェンジしたから。でもあの完全に何人か殺ってる目は俺もちょっと怖いです。
『し、失礼しました大天使様!自分はこれより空気となります!ど、どうかお許しを・・・・』
最初はかっこいいかも、とか思ってたのにもうあれだな、見る影もないな。残念空気竜ウェルキム君爆誕。
この世界ではドラゴンは分からせられる種族だったか。なむなむ。
「さて、残念空気竜ウェルキム君が爆誕したところで――」
あれ?俺の心読んでる?
「――話を続けましょう我が主。心を読んでいるというより心の声を聴いている、が正しいですね、そのあたりの説明も含めてさせて頂きます。よろしいでしょうか?」
あ、はい。
「ありがとうございます。ではまず私は《大天使》で天使より上位の存在です。ここまでよろしいでしょうか?」
ここまでってまだたったのひとつしか――あ、いえ、なんでもないです、理解理解。
訂正、大天使様、ちょっとじゃくて凄く怖いです。
「我が主を怖がらせてしまうなど私の未熟の致すところ、猛省してこれから主と共に修行に励ましていただきます。それで――」
これから俺と一緒に行動することは確定なのな、別にいいですけど。
「――私があなた様を我が主と呼ぶのは私が《大天使》であなた様が《半神》であるためで当然の主従関係と言えます。それから私も主と同郷ですよ、どうでもいいことですが」
え?大天使は半分だけの神より下なのか?というか同郷っていったか?どうでもいいことか!?
「私もこの大地に降り立ってすぐに主を探して飛び立ったのですが主の大きすぎる力に大まかな方角しかわからず虱潰しに飛び回ることしかできずに途方に暮れていたのですがそんな折に十日ほど前からこの一点に集中していく神力を感じ取りまして、こうしてやっと馳せ参じることのできた次第です」
この転移者さん転移してすぐ俺を探したの?言い様によっては俺の匂いともいえる神力を嗅いで?
訂正、この《大天使》さん、凄くじゃなくて超怖いです。ストーカーかな?――あ、いえ、ストーカーは言い過ぎでしたね、全く俺のお馬鹿さん!
――これからは残念半神シノブと名乗ろう。ウェルキム君、俺たちナカーマ。
「我が主、そんな心の在り方でどうしますか!主は――いえ、今これは言うべきではないですね。我が主が私を恐れるのも、私に対して言葉遣いが安定しないのも、私をストーカーなどと勘違いするのも、すべては主の中の残った半分の人間性の所為です。主、これから私と共に《神》というものを学んでいきましょう」
いや、俺は《半神》でいいんだけど。
なんてゆーか、人間、捨てたくない。
「《大天使》さんは――」
「イリスです」
「――イリスさんは割り切ってるんだな。・・・・未練、ないのか?」
これは果たして聞いていいものか迷った。それくらいには目の前のこの女の子は清々しい雰囲気を漂わせているから。
「我が主はあるんですか?未練」
質問で返された。聞いてはダメだったか。
俺に未練ね・・・・。
「あるよ、と言ったら?イリスさんは俺が人間で在ることを認めてくれる?人間の心を、人間として生きた俺を、許容できる?」
この娘が前の世界でどんな風に生きたのか知らない。少なくとも今それを知る必要は俺にはない。
でも。
「俺は人間をやめないよ。俺が人間で在る理由は――」
妹が――天渡がくれた。
「妹さんですか・・・・いいでしょう。我が主にとって大切な方であったことはわかります。そんな妹さんを想ってのことなら認めましょう。今はまだ、我が主にも落ち着く時間が必要です。時が、要るのです」
これは認めてくれたと思ってもいいのだろうか?若干微妙な感じだが。
ていうかいい加減勝手に俺の心の声を聴くのやめろし。
「私は《大天使》であるからして、神の御声を聴くのは当然の事。そもそも我が主が神力の制御に未成熟なのがいけないのですよ?天使にとって今の主は目の前で大声で叫んで『俺の声を聞かないで』と言っているようなものです。はっきり言って、恥、ですよ?」
この娘、結構キツイ感じの子やな。
「そういえば、なんでイリスさんはもう《大天使》としての力に順応してるんだ?俺はお前の言う通りまだ神力に慣れていなくてな。こっち来てずっと特訓中なんだ。そこな竜に教えを乞うてやってきたが、どちらかと言えば竜より天使のほうが俺の力に近いんじゃないか?もしイリスさんが良ければ教えてくれ」
なんだかイリスさんに頼むのはさっき否定したばかりの「人間で在り続ける」というのをくるりんぱしているようで気が引けるが背に腹は変えられない。
俺は早くこの俺の知らないアシュラという世界を旅したい。
神としてじゃなくて、人間としてだからな。
この力は都合が悪い時にだけ使うさ。だから上手く使えるようにしておきたいだけ。我儘だってのは自覚してる。でも今の俺には友達をつくる機会もあって、その友達を守る力もある。
もしもの時に何もできない、昔の俺じゃないんだ。
だから――
「――だからウェルキム君、そんな顔しないでおくれよ。俺の素性だとか諸々なにも聞かずに訓練に付き合ってくれたことは本当に感謝してるんだよ?例えそれが俺を自分の住処から早く追い出したい一心のことだったとしてもだ。それについては大陸に渡るときウェルキム君を使おうと決めているから本当に気にしなくていい。それにまだイリスさんの返事も――」
「いいですよ、我が主。私としましてもそれは都合がいい。主が人間を捨てたくないことは理解しました。神の力の使い道も。その上でご協力させて頂きます。私にとって理由なんてなんだっていいんです。ただ今は、神に慣れてほしい」
承諾の返事をもらった。正直、この娘を自分の奥深くまで近寄らせるのは良くない気がする。でも別にそれはこの娘のことが嫌いだとか信用ならないとかじゃなくて、イリスさんにはイリスさんの心の在り様があって、それが俺とは合わないんじゃないかと思っただけだ。
いつの日か、今日この時の出会いを心の底から喜べる日がくるといいな、と思った。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)