貴様っ何奴!?
制御訓練をやり始めて早三日、俺は未だに訓練第二段階で行止まっていた。訓練内容自体はそう難しくないように思える。実際ウェルキム君もここで躓くとは思ってなかったらしい。求められてるのはただその力の性質を知れというだけ。
『力といっても色々ありましてな。魔法を扱うのに必要な魔力、身体の能力を底上げすることのできる覇力、癒しの効果を持った聖力、他にもまだまだありますが人類種が使えるのは主にこの3つですな。一般に人類種はこの中の一つでも持っていれば重畳とされています。そういった者たちは騎士や冒険者、神官になったりするそうですが・・・・これは蛇足でしたな。シノブ殿はこれのどれにも当てはまりそうにないですから、かなり特殊な性質の力をお持ちなのでしょう、焦らずいきましょうぞ』
とはウェルキム君の言。
俺も半分は人類種のはずなのだが放ってるオーラからしてこの3つではないとのこと。因みに俺の名前は試しに地面に書いてみたら普通に伝わった。書こうとした文字が日本語じゃくてアシュラの文字として頭に浮かんだのは不思議な感覚だった。
実際のところこの力で何ができるかはわかっているのだ、いるのだが・・・・
『なんでもできそう?はははっ、面白いことを仰る。万能の力を秘めたものなどあるわけが御座いません、まだご自身の力の性質をご理解できていないんでしょう。焦らずゆっくりやっていきましょう』
と言われる始末。この三日間寝ることもせず食事をとることもせずただ自分の中の力に意識を向けていたがこの結論しかでなかった。正直ウェルキム君を疑い始めてる自分がいる。
仙力なる寝ず食わずでも生きていける力もあるらしいがそれだけではここまでの圧力はだせないとのこと。複数の力をもった極めてレアなパターンかもしれないとウェルキム君は考え始めているようだ。
そんなことはないと思うがな・・・・。俺は《半神》、ならばもっているのは神力とかそんなんじゃないか?だが俺は実は半分神なんだ、と伝えたところで流石に信じてはもらえないだろう。
相手が自分より強いことと相手を妄信することはイコールで繋がることじゃない。
ガリガリッ、ガリガリガリ。
もういいやと思い木の枝で地面に『次の制御訓練に入りたい』と書く。これ以上同じ訓練を続けても時間の無駄だ。断られたら自分で頑張ろう。
『ふむ・・・・力の性質を知ることは大事なのですがな、まぁ今はいいでしょう、次の訓練をやればきっとお分かりになってくれるはず。では次ですが・・・・』
訓練第三段階は教えてもらったが微妙に舐められている気がする。最初に痛い思いをさせたけどそのあと下手に出たのが悪かったか?いやでも竜種は実力至上主義らしいしな・・・・いざとなったらまた分からせればいい。
ということで訓練第三段階が始まります。性質に合った起こせる現象をイメージして、それを最小規模で発動する。
俺の場合はなんでもできるがますはイメージしやすく危なくないものでいこう。
(曇れ)
さぁ、どうだろう。これなら制御できない今でも問題ない。
空を見ると、いや見るまでもなく辺りが暗くなった。ちょっと範囲は広いが見事に曇ってる、成功だ。
『な、なんだこれは!?魔王の襲撃か!?魔王は復活していたのか?』
ガリガリッ、ガリガリガリ。
こんなことでパニックになられても困るので、『これ、俺の仕業』と地面に書く。・・・・見てないな、しゃーない、わからせる。
パチンッ!
指を鳴らして音を立てる。それだけで十分だろう。というかそれ以上はまずい、殺しちゃう。
だが齎した変化は劇的だった。暴風が吹き荒れ湖が激しくうねり木々が葉を散らし空が晴れウェルキム君が涙を流している。最後のはどうでもいいな。
ガリガリッガリガリガリ『落ち着いた?理解した?ん?どうなの?』
全力で首を縦に振るウェルキム君。よかったよかった俺の思いが伝わった。
コミュニケーション、大事。
『シ、シノブ殿は凄いですな!大陸に届くほど曇らせ晴らす。ただ、その、晴らすときはそれも念じると良いと思いますぞ!えぇ!!それを繰り返し徐々に範囲を狭めてコントロールを覚えれば完璧ですな!!あとは力を完全に体内に内包させられるようになれば訓練は言う事なしの満点終了ですな!!どこへでも旅できますぞ!!そう、大陸とか!!』
俺を追い出したいのか?まぁずっとこの島にいるつもりもないけどさ。
この絶海の孤島から大陸に渡るときはウェルキム君タクシーを使おう、そうしよう。
来たる旅の日々を思い浮かべてさらに訓練を続けること十日、それは現れた。
「ああ、やっと見つけました、我が主。初めまして、私は《大天使》イリス。どうぞイリスと気軽にお呼びください」
3対の真っ白な翼、腰まで届く真っ白な髪、胸に真っ白な輝く玉をはめ込んだ真っ白な鎧。
《大天使》が現れた。
(*'ω'*)(*'ω'*)