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いきなり異世界の《半神》になった  作者: 八九秒 針
第二章 学園怪盗編
26/27

波乱を運ぶ白い鳥

諸事情で明日投稿できないかもしれません。でも失踪するわけではないので土曜日には投稿できると思います。よろしくお願いします。

 《ミッション!天渡の魔の手から逃れよ!》


「あ、天渡、俺ちょっとトイレに」

『じゃあ私あっち向いてるね』


 天渡はあらぬ方向を向いた!しかし手は離さなかった!……GAME OVER……


「お腹空いてないか?なんか買ってくるからここで待っててくれ」

『私は今幸せの気持ちでお腹いっぱいだよ……///』


 天渡は照れた!腕に絡みつかれ拘束は強くなった!……GAME OVER……


「アイタタタ!掌にできた豆が潰れたみたいだ!ちょっと手当させてくれ」

『私の愛で治してあげるから、このまま繋いでちゃ、ダメ……かな?』


 天渡は上目遣いで媚びた!更にシノブの下手な嘘に無言の握力!……GAME OVER……




「一体どうすれば……!!」

『どうもこうもないよ?私はこのままで幸せだから』


 ミッション発令からあれこれと魔の手を逃れる策を試みたが、天渡はそれを愛という無限の力でねじ伏せてくる。まるでプリ〇ュアだ(浅知恵)。

 

 今俺たち2人は手を繋いだまま学園都市の道を歩いている。周りには道歩く町娘などの一般人たち。最悪暴れて逃げ出すという案は、町に入った時点でアウト。行動が、遅かった……っ!!


「はぁ、とりあえず目的の学園ってやつに行こうぜ。魔法学園はどっちかな……」

『今はまだ夏休みだから生徒らしき子も見るねー。凄い熱い視線を感じるよにぃに』


 天渡は可愛いからな。中等部だろうが高等部だろうが視線を送らずにはいられないだろう。思春期の男共なんてそんなもんだ。これで『自由の白星』の女性陣が全員揃ったらファンクラブでも出来上がりそうだな。


 しかし事態はそんな可愛げのあるものではなかった。


「おい!そこの小娘!喜べ、このトッツァルト伯爵家が次男、マルル様の側付きにしてやろう!こっちにこい!」


 顔を紅潮させながら天渡にそう言い放つのは、金髪デブ少年。その視線は天渡の体中を舐め回すようにうろつき、特に短パンの下の太ももを見て「フヒッ」とか言ってる。気持ち悪い。


『キモイね!あとなんか臭そう!こっち来ないでね!』


 我が妹ながら言いたいことをド直球に言う奴だ。もうちょっとオブラートに包んでやった方が相手のダメージは少なく済むだろうに……。

 それにここは公共の場。貴族の横暴が珍しくないとはいえ、民草の不満や不安は募る一方だろう。が、しかし貴族の子息子女が集まるこの学園都市で、そんな子供の我儘など見慣れたものか。

 確か特に能のない貴族が通うのは、名誉学園とかだったか。その点リーン嬢はしっかり魔法の名家として魔法学園に入学しているのだからよくできた子と言える。

 さて、目の前のこの金髪デブ少年はなに学園の生徒かな?きっと名誉学園じゃないかと予想する。

 その予想名誉学園高等部くらいの金髪デブ少年は、天渡の無慈悲な言葉にしばし呆然としたあと、ハッと我に帰り、プルプル震え出した。


 俺と天渡はそっと耳を両手で塞ぐ。それを見た周りの人達も同様に耳を塞ぐ。そして――


「―――――――――――――!!―――――――――――――――――――――――――!!!」


 お口ぱくぱく。金髪デブ少年の叫び散らす姿が見える。彼は顔を真っ赤にし唾を飛ばしながら何やら言っているが、両手で耳を完全に塞いでいる俺たちにはまるで聞こえない。


「………………ん?」


 両手を、耳に………。すっと自分の手と天渡の手を見ると、


「勝ったッ!さらば光の日常ッ!」


 天渡の手が離れていたことに気付いた俺は、その場を脱兎の如く逃げ出した。


『っ!?しまったあああああっ!?』


 天渡が気付いたようだがもう遅い。俺はうるさいバカ貴族は放って自由に悪の道を進みます。これが最近のテンプレってやつか。


『まてやゴラアアアアアアッ!!逃がすと思ってんのかアアアアアッ!?』

「キャラ変わりすぎだろ……だが俺はそっちのほうが好きだぜ!『自由の白星』は自由を追い求めなくちゃな!」


 爆速で空を蹴りながら家と家の間を進む。後ろからは般若の顔をした天渡が翼だけだが竜の一部を生やして追いかけてくる。


「そこまでやるかぁっ!?って最初は俺も思ったけどな。多少追いかけるの面倒になっても人として外見変えるのはナシだろって。でも、考えてみたらそんなこといって俺を逃がす方がずっと後味悪いって気付いたんだ。俺たち『自由の白星』が、自由を出しきれなくて望む結果を掴めなかった、そんなの許せるわけがない。その天渡の思考、俺も結構理解してるけど、普通に理解できちゃうけど、俺は捕まりたくない。俺はこの想いにだけは、嘘をつきたくないんだ――!!」

『長々と語ってんじゃねエエエエエッ!ただ煽りながら捕まりたくないって逃げてるだけじゃねぇかアアアアアアッ!!』

「そうともいうー」


 そんなバカな会話を交わしながらも、道を曲がり、裏路地に入り、視線が切れた瞬間小鳥に変化し、表通りに戻って町娘の肩に乗る。


「あら小鳥さん?こんな真っ白な子みたことないわ。かわいい、連れ帰っちゃおうかしら?うふふ」


 三種の神器が変化するときに真っ白な羽毛となったが概ね計画通り。あとは(天渡)が過ぎ去るのをここでじっと待っていれば――


 ぎゅっ


「え?」

「あら?変わった鳴き声ね。寮は一人で寂しいからお友達ができて嬉しいわ。よろしくね、シロピー」

「え?」


 ぎゅっ、とハンカチのような布で足を結ばれたと思ったら、その布は町娘の手首に繋がっていた。あまりにも優しい手つきだったので拘束に気付けなかったようだ。シロピーうっかり。


(――って、シロピーって誰だよッ!?)


 俺を捕まえた女の子はるんるんスキップしながら町を進む。その足取りは軽やかで、手首に乗る俺にはなんら乗りづらさというものがなく、っていやいや。このままじゃ俺はどこの誰とも知らない女の子に誘拐されてしまう!どうする?声をだして正体を明かすか?しかし今は――


『出ぇてこおおおおおおいッ!!逃がさねぇからなアアアアアッ!!』


 爆速で俺たちの上を通過するナニカの叫び。あれに捕まったら、終わり――。

 今ここで話し出してこの女の子に騒がれるのはまずい。アレが来る。ならばここは一旦この娘についていって折を見て抜け出せばいい。

 大丈夫、学園の夏休みはまだ少し残ってる。試験が受けられるうちに抜け出せばどうとでもなる。むしろ天渡が落ち着くまでの隠れ蓑を手に入れられたと思えば悪くない。

 俺は自分にそう言い聞かせて大人しく女の子に手首に落ち着いた。


「エ?エ?」

「ふふ、ホントに面白い鳴き声ね。でもちょっとさっきと違う?」

「え?え?」

「あら、気のせいだったわ。うふふふ」


 成り行きで決まった意味不明の鳴き声を発しながら、この女の子実はいいとこのお嬢様なのでは?と疑惑を感じた。しかしそれもこれから行く場所を見ればきっとわかるだろう。なるべく天渡が近寄らなそうな場所に行って欲しいなぁ……。




     ◇




「ここが私の住んでるとこ。魔法学園の一般寮なんだけど、誰も来なくてつまらないの。でもこれからはシロピーがいるからずっと楽しくなるわ。うふふ、シロピー♪」

「え?」


 魔法学園、入れた。目的達成?いやいや焦るな、今の俺は小鳥だろ。しかし別に学園に入れたのだから人間に拘る必要もないのでは?思ってた学園の一ページとは違うけどもしあいつらに身バレしてもこの娘が守ってくれそう。

 これでいくか……?でもちょっとこの娘のことを知ってからでもいいよな。一見悪い奴には見えないけど、実は動物解剖が趣味の人とかだったら命が危ない。


「シロピー、何か食べる?」

「え?え?」


 適当に意味わからん鳴き声を発しながら彼女を観察する。後ろで一本三つ編みに纏めたホワイトの髪、垂れ目の大きな同色の瞳、おっとりした雰囲気。うん、普通にかわいいしすごく優しそうだ。だが判断を焦るな。焦ったほうが負ける、これはそういう戦いだったはずだ。


「シロピーは何が好きかしら?私はね……」


 少女は語り続ける。意味不明な返ししかしない小鳥に向けて。


「え?え?」


(――まぁ、たまには誰かの話をゆっくり聞くのもいいか)

 

 そんな風に感じた俺は適当に意味不明な相槌を返しながら聞き役に徹する。


 これが小鳥のシロピーと話したがりの少女――ユラメラとの出会いだった。

 

最後のとこちょっと迷走入りました。もしかしたら書き直すかも?でも大筋のシナリオは変わらないはずです(多分)

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