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いきなり異世界の《半神》になった  作者: 八九秒 針
第二章 学園怪盗編
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逃亡の果てにこそ

 竜形態の天渡の背に乗りながら考える。俺は果たしてどんな姿をとるべきか?

 悪党としてはもちろん仮面つけるなりして姿は隠すんだが、今考えてるのは学園パートでの姿。最初は男か女かで悩み、女だと正直盛り上がりに欠けるだろうと男路線に決めたのだが……


「例え自分でも姿が違う男がみんなに近づくのは許せない……!!」


 このことでさっきから頭を悩ませ続けている。ちょっと自分でもみみっちいと思います。でも許せないものは仕方ない。


『私たちも例えにぃにでも見た目が違う男だとイチャイチャしたくないかな。やっぱり見た目は変えなくていいんじゃない?どうせ鎧の下の顔なんて一生ばれないよ。ダイジョブダイジョブ』


 天渡もこう言ってくれるし日常パートでは素顔でいくか?黒髪の俺と白銀の騎士の俺を結びつける者もそういないだろう。いやしかし筋骨隆々な大男はわかりやすいしそこだけいじるか?うーむ……。


 因みに今こうして天渡と会話できるのも、天渡が比較的ゆっくり飛翔してくれているからだ。結界を張るミラがいないと風で会話など到底できない。その分到着も遅れるが、もともと馬車などよりよっぽど速いのだから問題にもなるまい。学園都市の場所も確認済みだ。


「そういや俺たちって見た目は少年少女ってことになるのか?編入って言ってもリーン嬢は今中等部だよな?俺ら高等部が限界だろ、どうすんだ?」


 俺たちがこの世界にやってきたのは高校生くらいの歳で、そこから見た目の変化はないから高等部でなら問題なく通るはず。しかし如何に若く見える日本人といえど高校生を中学生で通すのは流石に……な。


『私は中学生だったんだけど?でも他の皆は確かにきついねー。ルプスとか大人の女性でも通るしミラはおっぱいが子供のそれじゃないよ。体の成長面で子供のままなのはイリスだけ――』

『――もしもしイリスです。我が主、天渡、今よろしいですか?』

『ひゃぁいっ!?ななな何も言ってないよ!?私はイリスが一番魅力的な女性だなって!そう思う!!』

『?はい、ありがとうございます。それで学園都市での私たちの立場について説明をしておこうと思いまして』

『あー説明ね説明!今ちょうどその話してたとこ!』


 ……び、ビビったぁ。天渡との旅路もここまでかと覚悟したぜ。イリスは妙に察しがいいとこあるから気を付けないとな。

 それで立場についてだったか?まさにその話を聞きたかったんだ。リーン嬢の護衛で学園入るっていってもグリス公爵は編入を勧めてきたし、その辺の話は全部イリスに任せればいいと思って聞いてきてないんだよな。イリス先生、頼りにしてます。


『学園ではリーン嬢の護衛としてまず天渡とミラが中等部に入ります。ミラはエルフの見た目をしていますから歳のことは誤魔化せるでしょう。エルフといえば早熟で知られていますからね』


 中等部入りは天渡とミラだけか?天渡はいけると思ったがまさかミラもとはな。能力的に適任なのは間違いないが俺はてっきりイリスが入るものと――


『――主?』


 ――思ってたことなんか一度もないけど、どんな状況にでも対応できるとこがあるイリス先生だからワンチャン?くらいには思ったかなーはははっ!


『ど、どしたよイリス。なんか声が怖いぞ?あ!勝手に学園都市に向かったこと怒ってるのか?いやホント申し訳ない……』


 ごぐり、と唾を飲む音が2つ。きっと俺と天渡だろう。頼む神様見逃してくれ――!!


『……………まぁいいでしょう。学園都市についたらきちんと説明してくださいね。それで話の続きですが――』


 た、助かったぁ……もう危ないこと考えるのやめよう。


『私とルプスは高等部に入ることになります。この4人に関してはグリス公爵からの推薦状があるので魔法技能の有無に関わらず入学できるでしょう。貴族でよく使われる手法なので問題にもなりません。ただ我が主に関しては独力で頑張ってもらわないといけませんが、何やら天渡とやっているようですし心配はいらなそうですね』


 ここで「俺悪党になるんだ!」って言ったらイリスどんな顔するかな。気になるがここじゃ見れないしまだ黙っとこ。

 しかし考えてみりゃ天渡とか魔法技能もってないもんな。白炎で押し通すものと思ってたが貴族の推薦があればそこスルーできるのな。ミラも魔力じゃなくて聖力だしうちに純粋な魔力持ちっていないんだよな。イリスが天力を魔力に変換して戦うくらいか。

 改めて貴族の力つえーと思いながらそういやルプスは?と適当に考えていると、天渡から声がかかった。


『にぃに!見えたよ、あれが、学園都市!』


 もう着いたか。流石に天渡の竜形態は速い速い。あまり準備を整える暇もなかったが最低限編入試験を受けるくらいはできるだろう。

 学園都市、あの場所には俺たちの夢が詰まってる。異種族、闘技場、そして聖王国。そこに俺がどれだけ絡めるかはまだ未知数だが、最悪天渡との対決だけでも果たせればそれでいい。


『学園都市が見えたのですね。私たちはリーン嬢の護衛をしつつ8日後には到着する予定です。そこでまた一度落ち合いましょう。主も天渡もあまり羽目を外し過ぎないように。では』


 イリスとの念話はそこで切れた。さあ、俺たちも学園都市を満喫するためにいざ動き出すとき――


『あ、そうそう一つ言い忘れてました』


 がくっ


『なんだイリス、俺今覚悟がいい感じにきまって――』


『――――学園都市に着いたら、主と天渡に()()がありますので。()()の我儘だと思ってお付き合いくださいね?では』


「『………………』」


 ふっ


「……悪はいつだって、正義に敗れるものさ……」

『そんなこと言ってにぃに一人で逃げる気でしょ?悪が逃げるのは当然とか言って。逃がさないからね?』

「演出だよ演出。最初から捕まってちゃ面白くないだろ?」

『逃がさないからね?』

「まぁ落ち着けよ天渡……」

『逃がさないからね?』

「あまt」

『逃がさないからね?』

     ・

     ・

     ・

     ・



     ◇



 学園都市内部にて。

 

「なあ我が妹よ。兄妹で手を繋ぐって歳じゃなくないか俺たち」

『やだなぁっ、私たち恋人でしょ?キャッ///』

「恋人ならせめて恋人繋ぎしようぜ。つなぎ方も握力も恋人のそれじゃねぇ……」

『もうっ!逃がしたく、ないの……言わせないでよ恥ずかしい///』


 この猫かぶりめ!周りからの視線もなんだか生暖かいものだし完全に騙されてやがる!だが焦るな、焦ったほうが負ける、これはそういう戦いだ。大丈夫、作戦はある。


 作戦はこうだ。

 まず隙を見てこの魔の手から逃れ、そのまま姿を変え追跡を逃れる。変えた姿のまま学園の編入試験を受け、そのまま悪党としても陰ながら活動する。

 この作戦のポイントは3つ。

 一つ、まずどうやって魔の手を離させるか。拘束は固い、一筋縄ではいかないだろう。見極めが大切だ。

 二つ、如何に本物の俺と合致しない姿を作れるか。一度逃げられても後でばれたらそこで終わりだ。またやり直す必要がある。

 三つ、ここが一番重要と言ってもいい。それは他の学園の編入生を俺に見えるよう誘導すること。これが上手くいけば俺の学園ライフは安泰だ。


 当初の予定とは違ってくるが、こなったら天渡も他のやつらも騙して俺は一人悪に興じる。


 すべては本物の悪を演出するため。茨木童子にも負けないと証明するため!


 覚悟新たに


「俺はやるぜ」


 戦いの火蓋は、もう切って落とされている。

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