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いきなり異世界の《半神》になった  作者: 八九秒 針
第二章 学園怪盗編
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いざ舞台へ

 俺は闘技大会に参加する。しかし素顔を晒すことはしない。ならばどうするか?決まってる、残った手段は一つだけ。


「金だろ……!!」

『私もう寝るね、おやすみー』


 時刻は深夜、良い子は寝る時間。天渡はとっても良い子だからちゃんとオネンネしないとね。天竜になって睡眠いらなくなっても天渡は良い子だもんな!


「俺も寝るか……闘技大会参加のための秘策を思いついたんだけどなー。ぐーぐー」

『あれ?もう朝?まだちょっと早いけどいい時間ー!ほらにぃにも起きて!遅刻しちゃうよ!』


 いったいどこに遅刻するというのか。そういえば昔はこんな感じで起こしてもらってたっけ……。


「ぐーぐーすぴーすぴー」

『もう!お兄ちゃんってばしょうがないなー。昔っからこれしないと起きないんだから……』


 昔起こすときよくやってくれたことと言えば、添い寝!まさかあれを今になってもう一度――


『必殺っ!極・白炎け――』

「あれ?もう朝か!こんなに明るいじゃんかよーははははー!」


 寝ている兄に向かって必殺の一撃を放とうとするとは、我が妹ながら恐ろしい娘に育ったもんだぜ……!

 ベットから体を起こすとすぐ横に白炎を纏った天渡が立っていた。部屋が明るいなー。


『おはよっ!お兄ちゃんっ!』

「おはよう天渡。とりあえずその白炎纏った拳を降ろそうか」


 深夜だってのにこんなバカ騒ぎしてたら誰かくるかもしれないが、この屋敷で俺たちは既に一定の地位を確立していた。


 《バカに効く薬はない!》


 そこに加え客人という扱いまであったらそらもう誰も来ない。昼間はやけに自意識の高いメイドが常に張り付いてくるが、こんな深夜までは流石にいない。彼女はきっと良い子だから寝てるんだろう。


 つまり今この部屋には俺と天渡の2人だけ。昼間にはできなかったあんなことやそんなことも誰にも邪魔されず果たせるのだぁ……!


「第一回!僕が考えた最強の悪役コンテストーーー!」(小声)

『今度はちゃんと考えてよね。なにささっきの、金だろ……!!、ってのは。もっと真面目にー』


 公爵家付きのメイドがいる状況で悪役になりたいだなんて話はできないからな。ごっこ遊び程度の話で済まされるならいいんだが、俺がこれからやることに嘘はない。

 学園都市で開かれる闘技大会、その無差別級犯罪者枠に参加するべく、俺は悪党になる!


『そこまでやるかぁっ!?って最初は私も思ったけどね。多少チャラくなっても白に染まるなり外見変えるなりして誤魔化せよって。でも、考えてみたらそんなわかりずらいにぃにと戦うより、ちゃんと自由を謳歌できてるにぃにをぶちのめすほうが、ずっと気持ちいいって気付いたんだ。理解はされないかもしれないけど、それこそイリスたちにだって、理解はされないかもしれないけど。けど、私は、この想いに嘘はつきたくない――!』

「長々と語ったけど要するにわかりやすく俺を倒して気持ちよくなりたいってことだな」

『そうとも、言うかも///』


 照れんな。

 しかし実は俺も人のことは言えない。天渡の感性に同意するのはちょっと憚られるところがあるが、何を隠そう俺が悪役になることを選んだのも、ある想いからだった。


(ヒーローバカな面のある天渡が悪党にチャンピオンの座を奪われる。きっと勝ったら気持ちいいぞぉ)


「ふは、ははははは!」

『ふひ、ひひひひひ!』


「ちょっと注意しにきたのですけど、見なかったことにしよう……」(ぼそっ)


 笑い合う俺と天渡のいる部屋のドアが、ちょっと開いてた気もしたが大丈夫だろう。大事な話はこれからだからな。


「さて、真面目に悪党の設定諸々考えますか。一言に悪党って言ってもド畜生に堕ちるつもりはないしな」

『ホントは学園にも来て欲しいんだよねー。美少女4人集まっても男が群がるだけだし。リーン嬢いれたら5人だね、あの娘も貴族令嬢だけあってなかなか可愛い』


 そうなんだよなあ、悪党やるのは闘技大会のためで、それ以外が俺にはない。やはり俺もどうにか学園に侵入できないものか。

 変装?変身?そんな感じで学園生活を送るのも悪党の1ピースと考えれば悪くない。だが問題はどうやって編入するかだ。実力は申し分ない、しかし学力は除く。前世の知識が役立つところは多少あるだろうが、この世界特有の問題はどうにもなぁ。


「明日、この辺のこともまた聞きに行くか。グリス公爵に」

『リーンぱぱも大変だねぇ。ま、恩を返すためと思って貰おうかな』


「やっぱり注意はすべきよね。今は静かだけどまたご当主様のところに突撃されても困りものだし……」


 がちゃ


「クハハハハハ……」

『キシシシシシ……』


 そっ、と扉が閉まる音が聞こえた気もしたが問題ない。俺たちは明日に備え構想を練った。




     ◇




 翌日。明日はもうリーン嬢と学園都市に向かうことになっている。そういえばイリスたちは編入の件を知っているのだろうか?まあイリスなら知ってるか、イリスだし。

 そして俺と天渡はというと


「『たのもーーー!!』」

「お願いとまってぇぇぇぇ………」


 縋りつくメイドを引きずりながらグリス公爵の執務室へと飛び込んだ。


「おや、どうしたね?うちのメイドに不備でもあったかな?」

「いやいやこの嬢さんはしっかりしたものだよ。ただ少し妄想癖があるようだが」

『もうちょっと怠惰ってやつを見せてあげたほうがいいよ。指の隙間からチラチラ見てきて興味津々って感じ』

「言わないでぇっ!」


 グリス公爵は顎に手を当てなるほどと頷き、それから前のように紅茶を出してくれた。


「貴重な意見をありがとう。ところで今日はなにを知りたいのかな?」


 話が早くて助かる。

 俺は悪役のことは伏せ、編入の条件などを詳しく聞いていった。すると


「編入は今の時期ならちょうど試験があるはずだよ?最近は世間も慌ただしくなって学園離れも珍しくないからね。ただ、試験は夏休みが終わるまでだから、私の推薦関係なく編入したいなら急いだほうがいい」


 なにやら俺のしたいことがバレているような気もしなくもないが、止めないということは信頼はされているのだろう。ド畜生になるつもりはないから安心してほしい。

 それはそうとどうやら俺は一足先に学園都市に向かわねばならないらしい。


「天渡」

『もちろん私もいくよ、一人で先行くなんて言わないでよね。大体『自由の白星』の足は私でしょ?忘れたのにぃに』

「天渡……忘れてなんかねぇって。いこうぜ、学園都市!」

『任せて!』


 思い立ったが吉日、というか秒で行動あるのみだ。時は一刻を争う。

 俺は学園都市の編入試験を突破し、表では学園の青春を、裏では悪党の日々を送るのだ!

 

 悪党のコスとか日常の姿もすぐ用意しなければ。ここが神力の使い時か……。


「行くんだね。本当はリーンの護衛を頼みたいところだか、危険は道中だけではない。きっと学園でもあの子を狙う愚か者はでてくる。だから改めて、どうか娘をよろしく頼む」


 グリス公爵はそう言って頭を下げた。それ軽々しくやっちゃいけないって俺知ってる。だがそれが覚悟の証なら、俺の答えは決まってる。


「任せろ」

『なんだか楽しくなってきたしねー』

「……ありがとう。最後に一つだけ、編入試験は最終的なところでは秀でた魔法技能が認められればまず合格だ。それは魔力総量であったり覚えている魔法であったりと様々だが、君たちならなんとかしてみせると私は確信している。頑張りたまえ」


 なるほど、これはいいことを聞けた。この情報は悪役の設定にも応用できるかもしれないな。表と裏は繋がるものだ……。


「ありがとう、では行ってくる!イリスたちには念話で伝えとくから安心してくれ。では!」

『新時代の幕開けだああああヒャッハーアアアアッ!!』


 俺たちは手を振るグリス公爵を後ろに捉えながら、部屋を飛び出し屋敷を飛び出し空に駆け上った。

 このまま地上から見えなくなるまで上昇したら、竜形態の天渡に乗って俺は準備に入る。


『もしもしイリス、オレオレシノブだけど』

『我が主?雑なオレオレ詐欺のようなことをしてどうしました?暇でしたらこっちを手伝ってもらっても――』

『俺と天渡、先に学園都市に行くから!』

『え?ちょっとどういうことですか説明を――』


 説明?そんなん決まってんだろ。一言で言うなら――


『学園怪盗物語の幕上げだ!』


 大空の中を竜が舞う。その波乱の象徴が更なる波乱を乗せて。

 

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