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いきなり異世界の《半神》になった  作者: 八九秒 針
第一章 半神降臨編
20/27

さらば尊き町

7000文字あります。それと追記ですがこの話までで第一章としました。それに伴い既に投稿していた計四部を削除し、書き直そうと思います。

読んでくださっていた皆様には誠に申し訳ありませんが、色々迷走していたので一回切り替えようかなと。

それでは第一章最終話をお楽しみください。

 ヒソヒソ、ヒソヒソ


 現在『自由の白星』メンバーでお出かけ中。『自由の白星』といえば絶世の美女揃いできっと有名だが、そこに混じる鎧姿のお大男。みんなの目にはどういう風に映るんだろうか?護衛か、はたまた雇い主とか?答えは――


「なんだよあの大男、俺たちの天使に近づきやがって!」

「ああ、アマト様。俺の親愛なる女神様。そんな男に騙されないでくれ!」

「ミラ様は慈悲深いからな、きっと断るに断れんのだろう。あの男の始末は俺たちが……」

「ああのグラマラスなお姉さんはもしかして白銀の騎士様の中の人か!?なんと美しい……でも何故大切な鎧をあんな大男に……ぐぎぎ」

「あの鎧サイズどうなってんだ?アーティファクトか?すげー欲しい」


 答えは「判断がつかないけど取り敢えず消えてくれ」だ。なおヒソヒソ話してる(気でいる)野郎共はこっそり(のつもりで)俺たちの後をついてきているが、そろそろ群れが大きなりすぎてなんかのパレードのようだ。


「ていうかお前ら人気だな。後ろの連中も推しが決まってる奴が多いみたいだし、ルプスなんか俺の人気をかっさらってないか?」


 ルプス除く三人が人気者になった理由は察しがつく。大方先の防衛戦で活躍した各門での戦いを見ていたんだう。強く、そして美しいとなれば憧れるのはわかる話だ。だがルプス、お前はむしろ敵側で町に侵攻してきてたのに何故俺のポジションにいる?ていうか俺も最後のほうは黄金に輝く番神として活躍したはずなんだけど!何故誰もその話に触れないのだ!?


「私は範囲魔法を放つのに彼らが邪魔だったので下がらせただけだったんですが、それがどうやら彼らには自分たちを守っていると映ったようで、翼も見せてないのに天使だなんだと好き勝手言ってくれてます。私は天使ではないのですが」


 あーうん。()天使ね。わかってるわかってる。俺もイリスと出会った当初はそこ強調されたなあ、懐かしい。


『私は魔物しか見てなかったけどなんで女神なんて言われてるんだろ?ベシベシって細かいの潰してドガガーンって纏めて潰して……うひひ潰すって楽しいんだねぇ……』


 天渡はきっと派手だったんだな。それが人知を超えて見えて女神とかか?これも天渡が可愛いから仕方ない。それはそうと天渡の相手はルプス頼むな、俺潰されたくない。


「ふっ、僕、完全勝利。これが全て計算通りってね。んふふ!」

「あーはいはい」


「いや悪ぃなシノブ。オレは別に人気とかどうでもいいっつーか、むしろメンドイとしか思わねーんだが、なんでこうなっちまったのか」


 ……あれ?ルプスって口調は悪いけどもしかして結構常識人?『自由の白星』で一番マトモなのって俺に次いでルプスだっりするのか……?こりゃやべぇな、気付かなかったことにしよう。戦争が起きる。


「あ、我が主、もう冒険者ギルドの前です。ここまま入りますか?」

「あーどうすっか、言って聞く奴らならいいんだが……」


 この後ろに引き連れてるのそのままにギルド入ったら流石に迷惑だよな。でも俺がなにか言うとむしろ悪化しそうだ。女性陣に任せるか。


「あ、僕にいい案があるよ。みんなこっち来て……ごにょごにょ……」

『いいね!それいこう!』

「仕方ありませんね」

「悪化しないか……?」

「はわわわわ」


 賛成3票、反対1票、はわわわわ1票。作戦決行。てかルプスお前はわわわわって……キャラ……。


「それじゃ皆いくよ~せーのっ!」


 ぎゅっ!


 ざわっ


「お、俺たちの女神が……あんな男に抱き着いて……ぐっはぁ!?」バタッ

「う、嘘だぁ!?嘘だと、言ってくれぇ……うっ」バタッ

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?」バッターンッ


 ミラの作戦、その名も「あなた達なんか目に無いの」作戦、成功。

 後ろには目から血を流した男どもが群れをなして倒れている。なんと無慈悲な……。ミラ、お前は無慈悲な女だよ。

 それはそれとして俺はとてもいい気分だ!前後左右をこんな美女たちに囲まれてとても幸せです。上からだとこう、圧し潰されるのが見えて……なんで俺鎧なんか着てるんだろ……くそぅ。


「さ、早くギルドはいっちゃおー」

「なんで私は鎧を着ているんでしょうか……」

『なんで私は鎧を着てないのかなー……』

「はうぅ……お前ら破廉恥だっ!」


 ここだけの話、大きさはミラ→ルプス→イリス→天渡の順で……いややめよう、なんか殺気を感じる。


「さ、さーて、フォウス殿は時間取ってくれるかなー?」


 俺は視線から逃げるように冒険者ギルドの扉を潜った。



 冒険者ギルドの中はいつもより人が少なかった。いや併設されている酒場にはむしろたくさんいるのだが、依頼掲示板などの近くには誰もいない。


『みんな朝っぱらからお酒飲んでるー』

「あ、もしかして報奨金とかでてたりするのかな?なら僕たちも貰える?」

「そういうえばそうですね。あまりの単純作業だったので報酬という言葉がでてきませんでした」

「俺は結構激闘だったんだがな。誰もあの戦いについて語らないんだもんな」

「シノブの戦いも誰か見てると思うんだけどなー」


 そんなことを言いながら受付窓口に向かう。選んだ先はセリィ嬢の受付にしたのだが、そのセリィ嬢はムキムキ大男になった白銀の騎士、つまり俺とルプスを見比べて困惑していた。


「え、えっと『自由の白星』の皆様、おはようございます、お待ちしておりました。ギルド長がお会いになられたがっていましたので、ギルド長室にどうぞ……」

「ああ」


 困惑しながらもしっかり業務をこなすセリィ嬢だったが、その目はやはり俺とルプスをチラチラと。しかし俺が代表して返事をするとその目は俺をロックオンした。


「あ、あの!シノブ様……ですよね?男性の方、だったんですか?」


 チラ、と今度はミラ達女性陣が俺を見る。「どうするの?」とその目は語っている。特になにも考えてないんだがな。考える必要もないと思っていた。成り行きに任せて対応していけばいいだろう、と。しかし――


「……なんで俺がシノブだと?この鎧を見たからか?」

「なんで……そりゃわかりますよ。シノブ様のことなら任せてください!女の勘を舐めてはいけませんよ?」

「勘……か。よく見てるな」

「だから勘ですってば。当たる確率120%の女の勘です」


 セリィ嬢はそういうが、勘も無意識の情報で下される判断とかなんとか聞いたことがある。俺の挙動か、言葉遣いか、なにがセリィ嬢に俺をシノブと思わせたのかはわからんが、本当によく見てる。まだそう多く話したわけでもないというのに。


「セリィ嬢、正解だ。俺がシノブだよ。こっちのは新しい仲間のルプス。今日ここに来たのもフォウス殿に用があったからだからもちろんギルド長室には行くんだが、その前にセリィ嬢にも挨拶しないとな」


 セリィ嬢の眉が、かすかに動いたのを見た。流石ギルドの受付嬢、感情を表に出さないようにしているのだろう。だが聞こえる、聞こえてしまう。


(――行かないで――)


 これは願いか。セリィ嬢の強い想いが願いとなって()に届いているのか。


「挨拶ですか?私に?ふふふ、『自由の白星』の皆さんとはそこまで関係深くないじゃないですか。ふふふ」


(――ここにいて――)


「シノブ、僕たち先にギルド長室いってるね」

「……ああ」


 ミラはこういう時気が利くのかなんなのか。察しがいいのか悪いのか。挨拶なんだから皆集まってなきゃダメだろう。


「あらあら、挨拶はシノブ様だけですか?そうですよね、そんな関りないですもんね。ふふ、シノブ様も早くギルド長室に向かった方がいいですよ?今回の報酬、凄いことになってますから」


(――一緒にいたい――)


「セリィ嬢、あなたには世話になった。なんだかんだいって冒険者について色々聞いてしまったし、俺たち『自由の白星』みんな感謝してる。新しく入ったルプスは実感がないだろうが、これからルプスの耳に入る冒険者の情報もあなたから聞いたものだ。だからありがとう」


 俺はこの声になんと答えればいいのか考えていた。ありきたりな挨拶をしたながら俺はセリィ嬢にどう応えればいいのかを。


「私は冒険者ギルドの受付嬢ですよ?それが仕事ですからシノブ様が気にされることはありません。『自由の白星』の皆様は礼儀も正しくて他の冒険者と比べて楽ですから。ふふふ」


(――私も連れて行って――)


「………………」


 何に迷ってるかはわかってる。俺にセリィ嬢を連れていく気など元々ないのだ。『自由の白星』は冒険をしたい。町での日常より魔境での戦闘を好む俺たちが、セリィ嬢を連れていくことなどできはしない。だが――


「これは逃げか……」(ぼそ)


 セリィ嬢を連れていけないことと、ここで聞こえる声を聞こえないふりすること、これは(イコール)で繋がらない。


「あの、シノブ様?どうかされましたか?」

「セリィ嬢、人と神が結ばれることはないと思うか?」

「え?それは……どうでしょう。結ばれたらきっとお互いが頑張った結果です。でもお互いが頑張れるほど愛があったなら、そもそも恋に人も神も関係ないと思います。好きになったら、恋の糸は結ばれるんですよ?例え相手が、どんな存在であっても……ってなんですかこの質問?ふ、ふふふ。やだ恥ずかしい」


 この世界にきて300年、それだけ生きていても敵わない人はいる。神が完璧だというのなら、ああやはり俺は神じゃない。

 

 これは人が人に恋の糸を結んだのだろう。


 俺は特段セリィ嬢を異性として見ていない。いい人なんだろうなとは思うものの、それが恋に発展することはないだろう。

 なら俺が出すべき応えは?


「セリィ嬢、遊びに行こうぜ!」

「え、えぇ!?」


 答えなんてわからない。ただ今は、この結ばれた糸を一方的に切りたくない。だから。


「ほれ行くぞー」

「え、えぇぇぇ!?今からですかぁ!?」


 俺はセリィ嬢の手を引っ張って冒険者ギルドを出た。ギルドの前には未だ屍が転がっていたがこれは無視する。


「し、シノブ様っ!困ります、私まだ業務の途中で――」

「フォウス殿には俺も一緒に謝ってやる!だから、いこうぜ!」

「あ――」


 俺はセリィ嬢の返答を待たずに彼女をお姫様抱っこして地面を蹴った。そして一歩二歩と空を蹴り――


「うぇぇぇぇえええ!?高い高い高い死ぬぅぅぅ!?」

「ははははは!!」


 目玉との戦いで見た景色、あいつを遥か上空までもっていったときの光景を、俺は今度はセリィ嬢と見ていた。セリィ嬢は目を瞑っているがな!


「目を開けてみろセリィ嬢!いい眺めだぞ!まるで人がゴミのようだ!」

「全然ロマンチックじゃないーーー!!」


 ロマンチックをお望みか。だがそれは諦めて貰おう!ロマンチックな思い出なんかむしろ恋の糸が強く結ばれてしまいそうだ。それはいかん、俺は去るのだから。


「風が気持ちいいな!そういえばこの近くで空の暗殺者と出会ったんだったな!シャドウホークだったか、来ないといいな!はははは!」

「降ろしてーーー!今すぐ降ろしてーーー!殺されるーーー!」


 もし魔物が来てももちろんセリィ嬢には傷一つつけさせやしないのだが、それは言わん。ここで「俺が守る」とか「怖いなら俺の顔を見ろ」とか言ったらロマンチックかもしれんが、今の俺は鬼だからな!もうしばしこうしていよう。


「なんか思ってたのと違うーーーー!!!」

「ははははははは!!!」


 時間にして10分ほど。俺たちは空のデートを楽しんだ。



 地上に戻った時にはセリィ嬢が安心からか失神してしまった。なのでそのままお姫様抱っこでギルドの職員用休憩室に運んでおく。


 ギルドホールに戻ると


「おいなんだよあいつ、無理やり女の子をさらって……」

「最低だな」

「セリィが可哀相だぜ」


 案の定見ていた冒険者たちから侮蔑の視線が飛んでくる。俺はそちらに向かって


「悔しかったら強くなるんだな!縮こまってるだけじゃランクは上がらねーぜ。ははは!」


 煽っといた。今回の件でわかったがこの町の冒険者は質が悪い。悪すぎる。彼らは努力というのを知るべきだ。またスタンピードなりが起きたとき、俺はもういないのだから。


(精々強くなって、セリィ嬢を守ってくれや)


 俺は怒りの目を向けてくる冒険者たち無視して、ギルド長室に向かった。



「失礼するぞ、フォウス殿」

「おお、シノブ殿。話には聞いていたが本当に男だったとは。いや驚いた。ははは!」


 あ、そういえばフォウス殿に男姿で会うのはこれが初めて……いや番神モードのとき会ってるよな?誰もなんも言わないのなんでだ?ちょっと寂しいぞ俺はぁ!


『チーっす、にぃに!もういいのー?』

「まったく酷い男だねシノブは。僕にはあんなに優しいのに!」

「我が主、今度私ともお空のデート、しましょうね」

「シノブシノブ見ろよこれ!金!とカード!」


 うちの女性陣はみんないいやつだ。変な気遣いしやっがって……。それはそうとイリスお前、天眼で俺たちのデート見てたな?そこは気を使ってくれてええんやで?

 それでルプスが見せたいのは金の入った袋と冒険者カードか。金はまぁたくさんだな。どれくらいあるのか全然わからんほどたくさんだ。ルプスの装備とかで金は使うしいいことだ。カードはルプス登録したとかそんなんって……


「あれ?俺たちBランクになったのか?」


 ルプスの見せたカードは確かにルプスの物だったが、そこには大きくBの文字が描かれていた。


「君たち『自由の白星』は今回のスタンピードおよび、目玉の魔王討伐に大きく尽力した。これはその正当な報酬と、評価だよ」

『私たち全員Bランクだよ!ルプスもねー……」

「お、オレも実力でいえば天渡より上だかんな!正当な評価ってやつだ!」

『お?殺る?殺り合う?よしコロスコロスコロスコロス……』

「や、やめろくすぐるなーーー!!あひゃひゃひゃ……」


 お前らホント仲いいな。戦いを通して得るものがあったのだろうか。

 しかしBランクね。目玉は魔王扱いか。あれを倒したとき俺は番神モードだったが……はてさてそのことに関する言及はなし、か。


「我が主、いいではありませんか。私たちにはまだこれからがあります。主の武勇も、これから嫌というほど広まりますよ」

「……そだな。よし!それじゃフォウス殿、世話になった。俺たちはじきにこの町をでるが、一緒に戦えてよかったよ。また機会があれば」

「こちらこそ、シノブ殿がいなければ目玉の魔王に町は破壊されていた。改めて感謝を。ありがとう」


 俺とフォウス殿は固く握手を交わす。これで挨拶周り終了……あ。


「あーそれとフォウス殿。今セリィ嬢が休憩室で寝てるんだが、大目に見てやってくれ。俺が連れまわしちまってな、すまん」

「ははは、シノブ殿から言われては仕方ありませんな。了解しましたぞ、ははは!」


 最後に言わなきゃいけないことも言えたし、これで大丈夫かな。


『じゃーねーフォウスさん!』

「ばいばーい」

「お世話になりました」

「オレまでBランクにしてくれてありがとな!」

「ではまた何処かで」

 

 各々挨拶も済ませ、俺たちはギルドを後にした。




     ◇




 宿に戻るとリーン嬢付きのメイドが部屋の前で待っていた。


「皆様、大変お待たせしました。リーン様の公務も終了しましたのでご出発したいと思います。誠に勝手なのですが学園の休みももう終わりが近づいておりますので付き合って頂ければと」


 急な話だがこちらも丁度挨拶まわりが終わったところ。ルプスのあれこれはむしろカイゼラフ公爵家のある町のほうがいいものを得られるかもしれん。


「いこうか、みんな」

『ようやくだね~!』

「待ちくたびれたよ」

「主が行くところが私の目指す場所です」

「貴族様にオレのこと紹介してくれよ……」


 この町も遂に別れる時が来た。

 馬車の乗り場に向かうとそこには既にリーン嬢の姿。


「あら?増えてますわね?ではその話も道中聞かせてくださいな」


 そんな適応力の高いリーン嬢の言葉と共に、俺たち『自由に白星』もガンの町を去ったのだった。




    ◇セリィ視点◇

「いっちゃった……」


 目が覚めた時、既にシノブ様はこの町にいなかった。


「あんなことして置いて行っちゃうなんて……悪い人」


 私の王子様はとても悪い人です。もうあんな人を想い続けるのはやめたほうがいいかも。

 

 でもねシノブ様、厄介なことに恋の糸は一度結んだらなかなか解けないのよ。だから――


「私はあなたを忘れません。だからあなたも私のこと、忘れないでくださいね」


 遥か上空、こっそり目を開けてみた時、私の恋の糸は強く結ばれてしまったの。


 人と神の恋が叶わない時、それでも人はずっと想いを伝え続けられると私は思う。


 だって恋の糸はもう結んだんですから。

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