復活の呪文
ルプスが仲間に加わって1日。俺たちはその間ルプスから話を聞いたり、俺が戦った目玉の魔物が外鬼絡みかもしれないということをずっと話し合っていた。何故かというともちろんそれは
『飽きたー。この町飽きたー。刺激が足りないよ~』
「つまりは暇ってことだな」
現状俺たちはリーン嬢の付き添い。カイゼラフ公爵家の持つ情報は世間一般のそれとは比較にならんだろうし、是非この機会に……と思っているのだが。
「リーン嬢も公務とか言って僕たちを放っておくなんて悪い女だよねー。悪女だよ悪女!シノブはあんなのに引っかかっちゃダメだよ」
「年を考えろ年を。リーン嬢に手なんか出すわけないだろ、まったく」
「カイゼラフ公爵家の魔法に関する書物は気になりますから、もう少しだけ待ってダメならルプスの希望を先に叶えてあげましょうか」
「え?マジ?やったぜ」
まぁ暇だからそれもありか。でもルプスの希望って確か……
『うひょひょ!ルプスとまた殺し合えるんだねっ!あの剣技は凄かったな~忘れられないよ~』
悲報、『自由の白星』に戦闘狂増える。まぁ戦力という面で見たら凄く頼もしいんだがな。
そもそも何故ルプスがあの戦いに参戦してきたのかというと、それはルプスの種族に関係がある。話は遡るが……――。
◇回想◇
『なんでルプスは町を襲ったの?もしかしてアブナイ人?』
「ちげーっての。オレはただあの死霊騎士の性質に引っ張られてただけだ。そういう種族なんだよ、もともとオレは」
「種族というのは廻る者としての種族ですね?一体どんな能力を有するのですか?」
「オレは始星霊って種族になっててな。宿った魂の持つ特性や能力を記憶していくんだ。そんで殺されると今度はそいつに宿ることになる。ハハハ!マジもんの不滅だぜ」
「なにそれ最強じゃん。しかも今はシノブの力も使えるってこと?その女体を持ちながら?はーーーーーーーー。ぺっ!」
「唾とばしてくんな。もちろん全部の能力を貰えるわけじゃねーよ。一部だよ一部!シノブの能力だってなにが増えたのかまだわかんねーし。だからそんなクソでか溜息吐くなって」
「今どれくらい能力持ってんだ?」
「千は超えてるなー。使ってないやつがほとんどだけど」
「「「『はーーーーーーーーーーーー。ぺっ!』」」」
「だから唾とばしてくんなって!?汚いっての!!」
『ぺっ!』
「ぺっ!」
「ぺっ!」
「ぺっ!」
「やめろーーーーーー!!!」
◇回想終了◇
というわけでルプスは超強い。もしかしたら俺より強いかも?ガンの町を襲ったときは悪夢の人を殺したいという本能に逆らえなかったのだそうだ。でもそれでも本気で暴れるのは何とか抑え、剣技だけで戦い心を落ち着かせていたんだとか。目玉と出現が被ったのは偶然か必然か判断がつかない。
「まぁよかったじゃないか。もしルプスが剣技だけとかいう舐めプしてくれてなきゃ、今頃天渡もミラもお陀仏だぜ」
『ちょっとにぃには妹を信じられないの!?私が本気になったら世界が滅ぶというのに……』
「僕は癒し担当だよ?僕を守るのはみんなの役目でしょ?姫プを希望するな」
「そういえばまだミラと天渡に説教をしていませんでしたね。ちょっと2人ともこちらに――」
「『シュババッ!』」
イリスの説教と聞いて姿を消すミラと天渡。消したっていってもただベットに潜っただけだが。ていうかそこ俺のベット……。
「シ、シノブの匂いがするぅ……ハァハァ、スーハー」
『ミラもなかなかエッチだね。私はこんなの慣れたもんだよ。スゥゥゥハァァァ……』
「やめろマジで」
「こいつらには羞恥心ってもんがないのか?てかオレの体もシノブならオレの匂いも……くんかくんか」
「女体はもう色々違うから匂いも違うんじゃないのか?でもその辺いじってないしな……くんかくんか」
「ハァハァ、スーハー」
『スゥゥゥハァァァ』
「「くんかくんか」」
ベットの中で匂いを嗅ぎまくるミラと天渡。お互いの匂いを嗅ぎ比べる俺とルプス。そして残ったイリスはというと。
「…………皆さんは5人いるグループの中で2・2で分かれるとどういう事態が発生するか知っていますか?ええ算数ができる人なら子供でもわかるのですが一人残るのですよねでもだからといって残った一人がこの変態の中に混じろうというのも勇気がいりますというかそこまでして本当に混じる価値があるのかどうかというのもその残った一人には判断が委ねられるところでつまりは――」
呪文が聞こえる。そろそろ話題を変えたほうがいいかもしれない。5人でまとまって話せる話題に。
「あーリーン嬢があとどれくらい公務にかかりきりなのかわからんが、どの道もうすぐこの町ともおさらばなんだし、知り合いに挨拶でもしに行くか?フォウス殿とセリィ嬢くらいしか思いつかんが」
「あ?誰それ」
『あールプスは会ったことないんだったねー』
天渡が布団から顔を出しながらも話に参戦してきた。適当に出した話題だったがいい流れだ。これならイリスも――
「――そもそもとして5人いるのに1人しか考えない事態というのが間違っておりそれは何故5人で集まっているのかという哲学にも発展する問題で世界中の研究者たちが解き明かすべき議題であると私は確信しているが故に常々思考を繰り返してきた結果辿り着いた答えは――」
呪文が聞こえるな。そろそろ誰かイリス復活の呪文を唱えてやったほうがいいかもしれない。誰が適任だろうか。やっぱり俺だろうか。そうだよなだって皆見てるし。よし!
「イリス、みんなで出かけようぜ、挨拶まわりだ。俺たちの中の常識人であるイリスに頼ってばっかで悪いけど、こいつらアホだから俺と2人で引っ張っていこうぜ!」
流れの変え方。さりげなく入れたイリス個人への誉め言葉。そして最後の理由付きの「2人で」発言。完璧な対応に流石の俺もビビるぜ……。
「わ、我が主……!!そうですね、挨拶は大切ですよね。なんならアホは放っておいて主と私の2人でもよろしいかと。ルプスなんか部外者ですし、かといって宿で1人は寂しいでしょうから、アホを2人置いていきましょう。そうしましょう」
まぁたまにはイリスと2人っきりというのも悪くない。悪くないんだが……チラと3人のほうを見ると。
『古来より天使は人間よりはるか上位の存在として語られてしまっているけどきっとそれが悲しき勘違いの始まりで天使が傲慢になった理由でもあると私は考えていてそもそもが天使なんて人界に必要かどうかを問われればそれは地球の歴史を鑑みて宗教とかそんないらぬ問題にしかなってないからつまりは天使が大きな顔をするのははっきり言って恥ですよであって――』
「地球のどこかの国では唯一の男神が女神を囲ってハーレムを築いてたっていうけどあれ普通に考えて男が一人しかいないから女が群がるだけでその男神の魅力を真に理解している女神はごく少数だったと思うんだよねならその男神はその少数の女神を大事にするべきであってモテるからハーレム築こうとかいう思考は僕よくないと思うなだってその少数の女神が可哀相だもん僕ならヤンデレちゃう可能性がおよそ――」
「オ、オレ一人で宿で待ってるからよ……みんな気にすんなって、な?…………。」
まぁ最初から誰かを置いていくなんて選択肢はないわけだが、このまま2人を語らせたら俺の頭がおかしくなりそうだ。やっぱり『自由の白星』はじっとしてるより動いてた方がいい。
「はいはい全員でいくぞー。もちろんルプスもいくから準備しろー。ていうかルプスの服ももっとちゃんとしたの用意しないとな。そうと決まったらお出かけだな!ほらいくぞー置いてくぞー」
『天渡が復活した!』
「ミラが復活した!」
「主、冒険の資金が心許ないです。なにか売却しましょう」
「オレこの服動きやすくていいんだけどなー」
というわけで出発。ミラと天渡とイリスはいつもの装備、俺は大男版白銀の騎士、ルプスは真っ白タンクトップコス。女4人に男1人。これで問題が起きないはずもないが騎士装備だから起きないかも。まったり買い物とかしてーよな。なにも起きないといいんだけど……。




