ガンの町防衛戦 ――南門 降臨――
4/17に投稿したやつを一回削除して書き直しました。(4/18)
流れ的には大体一緒なのですが尺をちょっと伸ばしてみたり。
戦闘描写がむつかしいです……。
「行動開始!」
俺の合図と共に全員が動き出す。イリスが東門、天渡が西門、ミラがフォウス殿とリーン嬢を連れて北門へ走る。倒れていた一般人は既に救助され退避済み。よってこの場に残ったのは俺とこの目玉だけだ。
「寂しくなっちまったなぁ、目玉野郎。それともお前はその目玉の数だけトモダチがいるのか?あー答えなくていい、お前の声など理解できん。やはり語るならこの剣が必要だよなぁ!」
【栄光剣ミカエル】 チャージ1%
「戦場を移そう。ここは俺たちが壊していい場所じゃない。守るためにあいつらも町の外に向かったんだ。わかれとは言わん、ただ邪魔してくれるな」
『ギィィィィ!!』
目玉野郎の魔力による波状攻撃。ああわかってたよ、会ったばかりだがきっとお前はそういう奴だとわかってた。だってお前さっき、倒れてる人を見て笑ってたよな?口でじゃねぇ、口なんか何処にあるのか知らねぇ。ただ
「そのムカつく目を止めろ。凄く不愉快だ」
言って聞かないのはわかってるが、言わずにはいられない。こいつの侮辱を、誰かが咎めないといけない。そして今それができるのは俺だけだ。ならそれは俺の役目。だから言わずにはいられんのだ。
【栄光剣ミカエル】 神力チャージ5%
「この辺でいいか……お前のその不快な目、叩き斬らせてもらう!」
神力のチャージは取り敢えず5%でいい。これ以上は町への被害が無視できない。それに早く南門に行かないと。俺もあいつらにそこを任されているんだからな。
「参る!オオオオオオオ!!」
『ギィエェェェェェェェ!!』
俺は【守護盾ミラーネット】を前面に構え突貫する。剣の射程に入ったら思いっきりぶん殴って戦場変更だ。
しかし目玉野郎も近づかれまいと必死の抵抗をする。魔力を出し惜しむことなく魔法に変え、圧倒的な数で弾幕を張る。その数は本来一つの生物が出せる規模を大きく超えている。こんなことができる魔物などほんの一握りだ。考えられるとするなら、こいつは一つの生命じゃない。目玉一つ一つが魔法を別に放っているのだとしたら、この規模も納得できるというもの。しかしそれ以上に参ったことは
「ぐっ……重いっ……!!」
一撃一撃がまるでイリスと天渡の攻撃を思い出させるようだ。前には進めている、しかし奴も後方に下がっていっている。このまま真っ直ぐ下がり続けてくれるなら、南門まで通ってもらうんだがなぁ。
『ギィィィィ』
しかし目玉野郎はあの不快な目をしながら空を飛び始めた。俺の上から攻撃をし続けて地面に縫い留める算段か?どこまでも不快な野郎だ。
「思い出すな……神器を貰ったばかりのころ、調子に乗ってイリスにこんな感じで動けなくされたっけか……」
それでその後は天渡の超パンチ連打だったか。あれなんて言ったけな?忘れたなんて言ったら天渡の奴怒りそうだな。俺たち『自由の白星』はかっこいい技名考えるの大好きだから。……そう、自由だ。俺は今自由を奪われてる。おかしな話だ。こうならないように力をつけてきたってのに。
神力を完全に解放すればきっとこの目玉野郎は敵じゃない。でもそれは、それをやってしまったら、俺は人間を捨てることになる。俺に人間を捨てる覚悟はまだできていない。例え俺をこの世界に呼んだ管理者が《神》を求めていたのだとしても、俺は《半神》がいい。ただ――
「なんで《半神》ならいいのかっていったら、そりゃあ俺の勝手な解釈さ。半分人間なら、あいつらと一緒にいられるって思ったんだ。俺は『自由の白星』の半神シノブ。俺の自由を奪っていいのはあいつらだけと決まってる!」
このまま押さえつけられてちゃいけない。町をどこまで巻き込むかわからんが、神力という万能の力の真髄を見せてやる。
目指すは遥か上空。今、目玉野郎は俺の真上にいる。縦に伸びる円柱を意識して、爆速のエレベーターが如く!
「重力反転!シールドバッシュッ!」
【守護盾ミラーネット】を真上に掲げたまま足が浮上するのがわかる。その速度は動きの遅い目玉野郎相手なら避けられまい。まぁ目玉野郎も反転した重力に従って上空に飛んで行ってるから当たらないがな。
だが、作戦成功だ。もう十分だろうと重力の反転を解いた時、そこはガンの町を遥か下に見据える高さだった。
『ギィィィエェェェェ!!』
「高いと怖いか?安心しろ、今から叩き落としてやる!」
今の俺と目玉野郎の位置は少し横にずれている。このまま斜め下に叩き落とせばちょうど南門辺りだろう。ただちょっと目玉野郎まで距離がある。でもここはもう周りを心配する必要のある町中じゃない!
【栄光剣ミカエル】から光の刃を創り出す。それは神力の剣。大きく輝き眩い光を放っている。
「天剣ッ!!」
『ギィィィエェェェェェ!!!』
振り下ろされたその一撃は、魔力障壁を突き破り、目玉野郎を捉え大きく下に吹き飛ばした。
そして目玉野郎を追いかけ空を蹴り降り立った場所は南門から離れた町の外。。
「ここが俺たちの戦場だ。存分に戦おう」
『ギィィィィィ……!!』
今の天剣の一撃を喰らってなお、目玉野郎は生きていた。忌々しそうにこちらを睨み、その数々の赤い瞳で殺意を露わにしてくる。
「「「グルルルルル」」」
「「「ギャーース!」」」
「「「キイイイイ!」」」
そして南門に群がっていた魔物たちも俺に敵意を向けぞろぞろと侵攻してくる。パッと見た感じいるのはゴブリンやウルフ系、後は蛇系の魔物だろうか。どれもこの近辺で知られるランクの低い魔物たちだ。
「なら無視でいいか。目玉野郎との戦いで勝手に死んでいくだろ」
それにいくら質が悪いと言っても冒険者はいる。町の衛兵もだ。多少なら彼らに任せても大丈夫だろう。ていうかしっかり戦って貰わんと困る。こっちは思った以上に強敵の目玉野郎の相手だけで苦労しそうだ。
「さて、ここからはテンポをあげていくぞ!神衣!」
神衣は要するに神器すべてに神力を纏わせ、攻撃、防御、敏捷を底上げするバフのようなもの。この状態で戦えば周りへの被害は大変なことになるが、今周りには魔物しかいないから問題ない。
【栄光剣ミカエル】 チャージ 10%
「ゆくぞッ!オオオオオオオオッ!!!」
『ギィィィィエェェェェッ!!!』
激しい戦いが、南門の外で始まった。
張られる弾幕。絶えることのない魔法を前に、俺は目玉野郎を中心に円を描くように走り回り、少しずつ距離を詰めていた。もちろん群れてる魔物はそのついでに倒している。
「あいつの魔力は無尽蔵か?魔力切れを狙うのは無しだな。避けながら距離を詰める!」
少し迷った末、【守護盾ミラーネット】を収納し、【栄光剣ミカエル】を両手で構える。剣一本で戦うのはあまりやってこなかったが、これでも150年も剣を使って模擬戦をしてきたんだ。扱いが下手ってことはないはずだ。
『ギィィィィ!!』
目玉野郎の放つ魔法の嵐を、時に払い、時に流し、時に斬り伏せ距離を詰めていく。
『ギ、ギィィィ!?』
その姿はまるで激流に流れる一本の流木のように、荒々しく、力強く。迫りくるその勢いは恐怖を齎しただろう。
「シッ!」
そして勢いのまま一閃。その一撃は確かに奴に傷を与えた。
「このまま削り切る!」
剣による乱舞は止まらない。
【栄光剣ミカエル】 チャージ50%
未だに決め手に欠けると理解しつつ、必要なら神の戦技を使うことまで思慮にいれて、戦いは続く。
◇
「はぁ……はぁ……」
『ギィィィィィ……』
戦いが始まってからどれだけ経ったか。周りに既に生きた魔物の姿はなく、静けさを取り戻していた。この場で生きているのは俺とこの目玉だけ。しかし両者体には傷が目立った。
【竜鎧テンキス】は至る所にヒビが見え、神力による修復もしていない。
目玉野郎は斬られては再生してを繰り返し、しかし流れた血は血だまりを作っていた。
(ちょっと強すぎじゃねぇか?俺も神力はそこまで使ってないにせよ、流石にこれをただのSランク魔物と片付けるのは無理がある気がする。《半神》と戦いでここまでやれるんだからこいつ魔王かなにかか?まさかイリスから聞いたアレが関わってる可能性も――)
そこまで考えて頭を振る。アレは俺がこの世界に来て300年、出現したことはないはずだ。今更こんなところでたまたま俺の前に現れるなど、あるはずがない。だってそれはまるで何かに監視されているようではないか。
「ああックソッ!やめだやめだ、下らんこと考えてるよりさっさとこいつ倒して、あいつらの顔でも見に行くかね」
イリス、天渡、ミラ。あいつらの方はどうなったか。この戦いが始まって随分経つがここに来ていないということは、あちらの戦いもまだ続いているんだろう。魔物のスタンピードなど彼女たちにかかればあっという間だと思ったが何かアクシデントが起きたのかもしれない。心配だ。
「早くあいつらの顔が見たくなった。もう終わらせよう」
手にしている【栄光剣ミカエル】を構える。
【栄光剣ミカエル】 チャージ100%
「まさか本当にこの技を使う時が来るとはな。初めてだよ、お前が。誇っていいぜ、目玉野郎」
切っ先は真っ直ぐ奴に。腰を落とし、前傾姿勢で強く足に力を籠める。
「失われし神の絶技の見よッ!神突ッ!!」
その一撃は、光速を超えた。
響く轟音、消滅する大地、走る一閃。
剣の切っ先が奴を捉え刺し貫いた瞬間、黄金の嵐が吹き荒れた。
神突:神が己の世界から外敵を排除するための特攻技。必中にして防御は不可能。その一撃は次元を超える。
神力が体内に溜まり続ける中、その量がある一定を超えた時流れてきた知識。《半神》が真に神たりえる力を持ったと認められた証なのか、その知識は完全なる神の技能を俺に教えてくれた。
その得られた神の知識の中の一つ、守り、戦うための戦技。それが神突。本来の使い方とは違うだろうが、これが今の俺にできる唯一の神の戦技だ。
神突で刺し貫いたままエネルギーを爆発させる、神突・爆鎖。本来ならこれは自爆攻撃らしいが、今回俺は【栄光剣ミカエル】という依り代と、《半神という半端な状態で放ったため死ぬことも剣が壊れることもない。つまりは辺りに尋常じゃない被害が出ること以外、問題という問題はない。
神突による攻撃が晴れ、砂埃が薄くなっていく。今の一撃は本来この地上で放たれることのないもの。これで倒れない奴などいないだろう。だというのに――
「これで倒れねぇのかッ……!!」
手にはまだ何かを刺し貫いている感触が残っていた。そして奴の呻き声も。
『ギィエェェェェ……』
目玉野郎はこれでもかというほど血を流し、見える瞳はほとんどが潰れていた。しかしそれでも再生はとまらず、ゆっくりと、元に戻ろうとしている。
「これで倒れねぇってことは、やっぱてめぇ、外鬼のッ……!!」
目玉から一旦距離をとり思考する。考えていた最悪の事態。かつてイリスから聞いた神を滅ぼした存在。それがこいつに力を貸しているなりしているのなら。
(こいつは、危険だ)
ここで確実に滅ぼす必要がある。そうしなければ世界が滅ぶ。外鬼は神を滅ぼしてそれ以降姿を見せていないと聞くが、今こうして俺の前に外鬼の手のかかったモノがいる。
もしかしたら今回の騒動は俺が引き寄せたのかもしれない。俺が、《半神》が人里になんて現れたから。
でもそれは今考えても仕方ない。デルイト島にいた頃は手を出してこなかったのだし、いざという時はあそこに戻ればいい。でも――
――あいつらと別れるのか?
嫌だ。いつからこんな甘えた男になったのかわからない。でも、嫌だ。
――俺にこいつを倒せるのか?
倒さねばならない。イリスの、天渡の、ミラの笑顔を見るためには、必ず。しかしなら足りないものがあることもわかっていた。
人間をやめる覚悟だ。
目玉は再生を続けながら流れた血で陣を形成しようとしている。己の血を用いた術は強力な反面、副作用もあるが、この場面であいつが使うことの意味は無視できない。
――俺は人間だ。人間がいいと自分で決めた。
目玉の再生と術式の構築が着実に進んでいる。
――だが誰が俺を、半神を人間と見てくれた?してくれた?
ただ佇む俺に目玉が不快な目線を向けてくる。
――あいつらがいたから。俺は人間で在れた。あいつらがいれば、きっと俺は、神になっても――
なんのために戦うのか?その答えはずっと前から知っていた。見つけていた。
目玉の術式が完成する。あとは発動するだけ――。
『ギィィィエェェェェェ』
目玉のその目を見た瞬間――
「その不快な目に、あいつらを傷つけられてたまるかよッ!!」
覚悟が、決まった。
「オオオオオオオオオッッ!!!」
神力解放 モード《番神》
世界アシュラに、再び神が降臨した。
削除したやつにはギャグ要素ちょっと入れてたんですよね。でも酒飲み冒険者の視点はやっぱりいらないと思いますね。




