え!?まだ続くんですか!?
え~と前の更新が……一年前くらい、だと……。内容が、頭にないよう!?
ガンの町に入るのに面倒な手続きはいらなかった。カイゼラフ公爵家の馬車だと家紋を見て理解した門番は特に審査することもなく素通りだった。さすがに公爵家というだけはある。
そして今俺たちはこの町で一番の宿屋に来ている。
「貴族が泊まるための宿、『黄白亭』……さすがというかなんというか、ゴージャスって感じだな」
『きっと成金の豚野郎がいっぱいいるよ!そして私たち美女四人を己が物にしようと近づいてきて……』
「そこをシノブがドッカーンッだよね。俺の女になに手ぇ出してんだ!って。むふふ、期待してるよ?」
「我が主の女である私たちに手を出そうとしたんですから当然の帰結ですね。正当防衛で滅びる国まで見えてきました。まあ大変」
我が主の女って、そこは『自由の白星』に手を出したらじゃないのか?まぁ言い方はどうあれ結末は同じになる気がするからいいか。
「み、皆様は我がカイゼラフ公爵家の大切な客人だと周知致しますので、何かあっても対応は私にお任せいただけると助かります」
リーン嬢が恐々としながら言うが、俺たちは『自由の白星』だからなぁ。自由は何よりも尊く、束縛は何よりも嫌悪する。リーン嬢に任せて問題が全て解決するならもちろん任せるのだが、俺たちはつい先日カイゼラフ公爵家と敵対する貴族の話もチラと聞いたばかりだ。力が力を為さないのなら、最初から俺たちで、と思ってしまう。ただまあ――
「取り敢えずお手並み拝見といこうか?」
『ダメなら全部消しちゃえばいいんだよっ!』
「僕たちの身はシノブが守ってくれるからね」
「頼りにしていますよ?我が主」
とまあ、俺たちには余裕がある。リーン嬢に任せてみてもいいと思えるくらいには力をつけてきた。本当にこれは頼れないとなったとしても自分たちで解決するさ。
それはそうとミラたちから頼りにされるのは悪くない気分だ。むふふ。もしかしたらリーン嬢もこういう気持ちが好きなのかもしれないな。わかるわかる。
「頼られないというのも新鮮な感じですね(ぼそ)……」
そんなリーン嬢の呟きには何処か、喜色が見えた気がした。
◇???◇
ガンの町中にあるとある場所、薄暗い室内にそれは蠢いていた。
「ギャァキャァキィヤァ……」
凡そ人と呼ぶには無理がある、醜悪で、生々しく、悍ましいナニカ。デビルアイという魔物が熱で癒着したかのようだと、知識ある者ならば言ったことだろう。
それは言葉を発していた。常人が聞いても不快としか思わぬその音を、確かに意味ある声としてとらえる者がその場にはいた。
「苦しいかい?死にたいかい?そうかそうかそれは大変だぁ。何故こんなことになっているのだろうね?おかしいよねぇ不思議だよねぇ?僕は君にその答えを教えてあげられる……知りたいぃ?」
青年と思われる男の声。本気で同情しているように聞こえるその囁きはしかして狂人のそれであった。何故ならこの醜いナニカを創り出したのは他でもないこの男なのだから。
「ギャァキャァキィヤァァ……」
「そうかそうか知りたいかぁ。なら教えてあげるのが父である僕の役目だねぇ。お前がそんな惨い姿になったのは……全部勇者が悪いのさァ!あいつがいたから今のお前がいるんだよ?ダメだよなぁ勇者なのにちゃんと魔王を滅ぼさないから。許せないよなぁ?……なぁ!?」
「ギィィィィ……」
男の顔は深く被られたフードで見えないが、誰であっても今この男が苛立っているというのは察することができただろう。男は目の前の醜悪なナニカに何度も何度も拳を叩きつけていた。
「ふぅ、ふぅ……許しちゃいけないんだ、勇者だけはぁ……!!だからお前も許しちゃいけないよ?決して許さず、決して諦めちゃいけない。いつかお前という化け物が勇者を呼び覚ますんだぁ……!!」
男は狂ったように手を伸ばすと、その化け物を乱暴に掴みなにか呪文を唱えた。怒り、憎しみ、恨み。凡そ負の感情と呼ばれるものをその言葉に込めて。
「ギィィィッ!?ギ、ギュァァ……ァァァァ!!」
変化は化け物を更なる化け物へと変貌させていた。既に歪に癒着していたその体が、更に溶解するように一つになってゆく。
男はそれを見て最後に満足そうに言葉を残した後、影に沈み消えていった。
男はこう言ったのだ。
「それは魔王の因子。君が魔王になるための最初のピースだ……」
ガンの町で、波乱が巻き起こる兆候を、まだ誰も察していない。
(*'ω'*)<ただいま




