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女神が女神に返る朝  作者: そらあお
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『カーテンコール』

『カーテンコール』




 


 震えるくらい足が(すく)んだ事はありますか?



 眩しいくらいの明かりに照らされた事はありますか?



 たじろぐ程の歓声を受けた事はありますか?



 鳴り止まない拍手を浴びた事はありますか?




 その光景をあなたはどの場所から見ますか?




 


 犬を連れた飼い主の女性は急いでいた。

 この後、二十二時から放送されるテレビドラマの前に犬の散歩を終わらせようと家を出ていた。

 帰ったら、シャワーも浴びたい。どうせなら、楽しみなドラマと共に温かくて美味しいコーヒーも用意したい。


 『早く帰ろう』と女性が犬のリードを持つ手を強く引いた時、犬は少し嫌がる素振りを見せたものの、飼い主の指示に従った。


 が、直ぐに犬はたじろぐというか、歩を進めるのを躊躇い、その場に立ち止まった。


 飼い主の女性が振り返って、音のした方を見た。


 犬も同じく音のした方を見た。


 音がする場所はこの地域を代表するランドマーク的な大劇場だった。観客の拍手が辺りにも漏れ聞こえていた。


 飼い主の女性も犬も、その漏れ聞こえる拍手の音にほんの少し耳を傾けるも、直ぐに家路を目指して、また歩き出していった。


 劇場からは尚も観客からの拍手の音が漏れ聞こえていた。





 劇場では大勢の客がスタンディングオベーションをしていた。

 つんざめく程の拍手喝采。


 観客の視線は舞台に立つ一人の女性、ヒロインに向けられていた。



 舞台の上から観客の鳴り止まない拍手を受けるヒロインの後ろ姿。


 


 カーテンコール。


 


 ヒロインの女性、凛として、大勢の観客に向かい、頭を下げていく。


 そして、ゆっくりと舞台の幕が下りていく…






 劇団・アクターズチョイスの稽古場で、相良心陽サガラ コハルが大鏡に向かい、着ているのは稽古着だが、スカートの両端を持つように、カーテンコールをイメージしていく。





 舞台の上から観客の鳴り止まない拍手を受けるヒロインの後ろ姿。


 


 カーテンコール。


 


 心陽、凛として、大勢の観客に向かい、頭を下げていく。




『トン、トン』という音。




 カーテンコールのイメージの中の心陽、上を見上げる。


【幕が下りてこない…何をやってる? おい、スタッフぅ】




 またもや、『トン、トン』という音。





 稽古着姿の心陽が我に返り、音のした方を見る。


 黒田世界クロダ セカイが立っていて、黒田は既に開いていたドアに向かい、もう一度、ノックする。


「いつから?」

「今……たった今」

「……見てた?」

「……見てない」

「本当?」

「……少し。ほんの少し」

「……」

「スカートはどんなん履いてるイメージ?」

「……記憶喪失にしてやる」と心陽が逃げる黒田を冗談ぽく追いかけていく。



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