表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

ショートショート2月~2回目

交差点

作者: たかさば

 まだ薄暗い、朝一番の、交差点。


 時刻はまだ、5時半。

 あたりに、車は、ない。


 静まり返る、まだ夜の気配が残る街。


 私を照らしているのは、信号の、光。


 緑色の光が、闇夜に慣れた私の目の奥を、刺激する。


 パカ、パカ、パカ、パカ……。


 歩行者信号が、点滅を始めた。


 ああ、今から…この信号は、赤に、変わる。


 ……急いで渡るべきか、立ち止まる、べきか。


 走れば、間に合うかもしれない。


 けれど…朝一番の、ぎこちなさのある体で…全力疾走する気には、なれない。


 ……歩行者信号が、赤に変わった。


 私を照らす色も、赤に変わる。


 高い位置にある、三色の信号が、黄色に変わった。


 鮮やかな黄色が、目に…眩しい。


 ……ああ、信号を、渡ってしまおうか。


 けれど、もうじき、赤に変わって、しまうから。


 高い位置にある、三色の信号が、赤に変わった。


 赤い色が、私の目に…染みる。


 ……赤は、危険な、色。


 赤は、渡ってはいけない、印。

 赤は、立ち止まらなければならない、印。


 あたりに、車は…ない。


 信号は赤だが、向こう側へ渡ることは、できるだろう。


 ……けれど、赤い、光が。


 ここは、渡っていいものではないという事を、示している。

 ここを、渡っていいと思っているのかと、問うている。

 ここは、渡ってはいけないのだと、伝えている。


 赤い光の、力強い輝きが。


 ここを渡っていいのかと。

 ここを渡れるのかと。

 ここを渡るのかと。


 目の奥に赤く焼き付けられる、信号の光が。


 無言で私に圧力をかけるのだ。


 お前は、私の光を、越えて行こうというのかと。

 お前ごときが、私の光を、越えて行こうとするのかと。


 ……ああ、今日も私は、信号に、従う事しか、できない。


 緑色に変わった信号を、ゆっくりと…渡り始めた。


 道と道が、交差する、この、場所。


 誰もいない交差点を、一人ぼっちで…渡る。


 緑色の光が、目に、眩しい。


 ……緑は、とても心地の良い…光。


 今、この道は、渡っていいのですよという、優しさを感じる。

 今、この道を、渡ることができるのですよという、安心感がある。


 ルールを守ることは、とても…気持ちの良い事だ。


 緑色の温かさに照らされながら、交差点の中ほどまで、歩みをすすめた、時。



 ……ぶぅうぅうう、ぶぅうううううん!!!!!!!!



 闇の向こうから、眩しい水色の光が迫った。


 車の進行方向の信号は、赤だ。


 大きな音を立てる車は、ルールを守って、止まるはず。



 ぶぅうぅうう、ぶぅうううううん!!!!!!!!



 眩しすぎる、水色の光、白い煌き、オレンジの灯火。


 ……ああ、この車は、もしかして。


 信号を、守らない………?



 私を照らす、車のヘッドライト、フォグライト、スモールライト。



 ……ああ、眩しい。

 ……本当に、眩しい。



 目が、眩んで、しまったから。


 ……避けることが、できなくて。



 ドぐワッシャあアアアアアアアががががアアアアアんん!!!!!



 ああ……信号を守らないから、私の体にぶつかってしまった。


 交差点の中央に飛び散る、中央分離帯と車の破片、コンクリート片、外れたタイヤ。


 そして…ぬるりと車体の中から、浮きだした……ピチピチの、魂。


 私はそっと舌を伸ばして、魂を、啜ろうと。


 ……ああ、抜けかかっているだけ、か。

 ……往生際が悪い。


 赤の警告を無視するくらいの力強さがあるくせに。

 魂の分離には、ずいぶん…女々しい。


 ……みっともない。


 私は、肉片に繋がっている魂を噛みきって、ずるりと吸い込み。


 信号を渡り終えたその場所で、両手を合わせた。


「ごちそうさまでした。」


 ……私は、正しい人として、生きていきたい。


 食後のあいさつも、ちゃんとしたいタイプなのだ。



 ……ああ、そろそろ、夜が明ける。


 闇が薄くなる前に、紛れなくては……。


 私は、交差点の向こう側に広がる……街灯のない路地裏に。


 そっと、身を、隠した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いつも通り、赤信号を守らない奴が……。 一方通行を守らない奴もいますよね。あれはほんと何なのかと思います。正面衝突不可避。
[一言] 南無南無ボウレン草……。 赤き閃光、暴走運転することtで飛び散るブタの如し。 我道直進、レーン義務を守らぬ獣に諭す言葉は必要ナシ。 草葉の陰、草草草墓草草草。 ……アムアム…ホウレン草。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ