シアワセになるためのクセ
ふと浮かんだ、物語にまで昇華しきれなかったもの。あらすじとかプロローグだけで終わってる感じです。
私にはクセがある。
壁際に立って上を向くこと。
何かするわけじゃない。ただぼんやりと天井や空を見上げて、時が過ぎるのを待つのだ。
私の周りには人が多い。
いろんな人が集まって来る。
でも私が中心にいるわけじゃない。私を可愛がってくれる姉が、人を惹きつける人なのだ。
私には好きな人がいる。
少し年上の優しい人。
知り合ってからまだ日の浅いその人は姉の友人で、姉に片想いしているのだ。
姉は皆から好かれている。
いつも家族の中心にいる。
私も姉が大好きだし、両親も姉を溺愛している。家族みんなからの愛を一身に受けているのだ。
姉は明るくて優しい。
いつも友人達に囲まれている。
老若男女分け隔てなく、裏表もない人柄で誰からも愛されている。友人達から親愛を集めているのだ。
姉は美しい人だ。
いつも求愛されている。
毎日のように恋文が届いているし、人前に出ればあっという間に求婚者達に囲まれてしまう。男性達から愛を乞われているのだ。
姉は唯一の妹である私を可愛がってくれる。いつも優しいし、気遣ってくれる。だから私は埋もれずに済んでいる。
私は姉のオマケだ。付属物のようなもの。
両親にとっての私は姉の大切な玩具。
友人達にとっての私は無害な存在。
男性達にとっての私は姉のペット。
大切な玩具は取り上げず、壊したりなくしたりしないように気にしていれば良い。
無害な存在なら可も不可もなく、当たり障りないようにしておけば良い。
ペットはペット、結婚した後は実家に置いて行くものだから今だけ良い顔をしていれば良い。
私の周りには絶えず人がいたが、それは姉が私を手放さなかったからに過ぎない。
いつだったか、姉がこっそり教えてくれた。
「私はアナタが可愛くて仕方ないの。誰にも渡したくないからずっと一緒にいるのよ」
もしかしたら、異常な執着があるのかもしれない。でも私は嬉しかった。
だって、この世界で『私』を見てくれるのは姉だけだったから。
物心ついた時からずっと、私の中には寂しさがあった。
寂しい、淋しい、さみしい、サミシイ。
心の中にずっとあって、消えたことがない。『それ』は当たり前のように肥大化していって、今はもう心の中にはない。
『それ』は、私の背後にいる。
『それ』は、私の足元にいる。
後ろを振り向くと私にぴったり寄り添って存在していて、足元を見ると私にしがみついてこちらを見上げている。
私の寂しさは『影』になった。
寂しささえ感じなければ、私は幸せ。
寂しさに気付かなければ、私は幸せ。
だから私は見ないようにした。
壁に背中をくっ付けてしまえば後ろを振り向けない。これで見ないで済む。
上を向いてしまえば足元は見えない。これで見ないで済む。
ああ、私は今とてもシアワセ。
いつか物語として書くかもしれません。