大好きな人のために
一応、完結とさせていただきます。
読んでくださった方のご意見を反映していこうと思っていますので、資料集の話数が変わっていくかもしれません。もし、新着に上がっていましたら(非表示でもブクマしている方には上がるのかなぁ?)あ、また情報不足分書いてるんだなと笑ってやってください。
頂いた感想や意見から本文を加筆する作業も同時に進めておりますが、基本的に内容と流れ・結末を変えることはありません。ご意見を頂いたことを参考にしつつ表現やぶつ切りかなと思うところなど、もしくは足りないかもしれない彼らの情報などが増えることが希にあるかも……ですが、ここに上がっている内容以外は書き込みませんし、新しいキャラが突然ということもありませんし、いなくなった人物が急に生き返ることもありません。
本当にこのお話にご興味を持ってくださった皆さま、ありがとうございました。
では、最後。
現在差し込んでいる第2エピローグと迷った方の第2エピローグで締めたいと思います。
○大好きな人のために
小麦粉に混ぜた砂糖がバターに包まれオーブンの熱に溶ける匂い。あまいあまい、とても甘い匂い。
ワカバが落ち込んだ時にはいつもラルーが作ってくれるもの。
いつからか、ラルーはその焼き菓子作りにワカバを手伝わせた。
薬作りと変わらない。決められた物、決められた量を入れていく。決められた手順で決められた状態を作っていく。
だけど、白い粉はワカバの言うことをなかなかきかず、宙に舞った。卵とバターは上手く混ざらず、小麦粉の小さな団子をよく作った。それでも、お菓子作りの時だけはラルーは優しく微笑み、手伝ってさえくれる。そんなラルーはワカバとは違い、隣で綺麗に手早く粉をまとめていくというのが常だった。
ワカバが最初に作った焼き菓子は、粉こなしていて美味しくなかった。二度目に作った焼き菓子は固くてふんわりしていなかった。
「大丈夫ですわよ。わたくしはワカバの作る焼き菓子の方が好きですわ」
そんなことないのに。
ラルーが作る焼き菓子はいつもちょうど良くしっとり。ちょうど良く甘い。ちょうどよくさくさく。
今も焼き菓子は二段に分かれて上段にラルー、下段にワカバだった。上に入れるか下に入れるかはいつもワカバに選ばせてくれる。
きっと、本当に薬作りと同じなのだ。
人間の作る薬と魔女の作る薬のように、その差はいつまでも埋まらない。
「うん」
ワカバは甘い匂いを嗅ぎながら、少し思う。
ワカバは人間の作る薬が劣っているとは思っていない。だけど、ラルーのように作りたいと「もっと」と望む。
「さて、そろそろ焼き上がりますわよ」
「うん」
ラルーの作る焼き菓子は今のワカバにとってはきっとこれで最後。
「あのね、ラルー。わたしね。負けようとは思っていない」
「えぇ、なにも心配なんてしていませんわ。あなたは誰にも負けない魔女ですもの」
「ラルー……あのね……」
ラルーがワカバの隣にそっと立つ。とても柔らかく良い匂いだ。安心できる良い匂い。ラルーにワカバの迷いを伝える必要はない。そう思った。
「……美味しくできるかな?」
「きっと美味しく焼き上がりますわ。何も心配なさらないで。わたくしはあなたの作るお菓子が大好きですもの」
あなたが望む世界をわたくしは望んでいるのですから、いつまでも味方でいさせてくださいね。
焼きたてのお菓子がオーブンから取り出され、香ばしい匂いがお台所に充満した。
○ありがとうございました。




