イッチとニーナの兄妹会話
「いやー、にしても夏希ちゃんがチョッキって名前つけるとは思ってなかったな」
「えぇ?そうー?前にお兄に名字読み間違えられたのが印象に残ってるからだって言ってたよ」
「一十木を一寸木と読み間違えたやつな」
「それそれ」
「そもそもお兄はなんでそんな読み間違いしたの?一寸木なんて名字私見たことないけど」
近くにそういう人がいたから間違えたんでしょ?
「あぁ、まぁな」
「……なにそのニンマリ顔。気持ち悪いんだけど自覚ある?」
「わが妹ながら酷いよな」
「そう?歯に衣着せぬ素直なイイコでしょ?」
「はいはい」
オムライスを食べるのに使っていたスプーンをくわえつつニッと笑う妹に、行儀が悪いからやめるように伝える。
はーい、と素直な返事。
わが妹ながら大人になってもどことなく子供みたいな部分があることに、コイツ仕事中はこんな感じでやってないだろうな……と若干の不安を抱いてしまう。
頼むから他所でそんな行儀の悪いことするなよ。妹よ。
「そんなにチョッキって名前面白い?お兄ってジレとかジャケットのことチョッキって呼んでる世代?だから面白いの?」
「こら、そんなに離れてないのにそういう言い方するなよ」
「ごめん。じゃあなんでそんなに楽しそうなの?」
「知りたい?」
「……うん」
「あのなー……」
……
……
家の中だからそれほど気にする必要はないが、なんとなく声を落として話をする。
「え?」
「……マ?」
内容を聞いたあと、一度聞き返したあと、再度確認される。それににっこり笑って同意を示すと、少したった後該当する奴を指しつつ「かっわいそー!!楽しー!」と楽しそうに笑った。
わが妹ながら気が合うな。
内容を知ってるとなんとなくムズムズするし、周りからチョッキちゃんが呼ばれる度に、自分で呼ぶ度に、そいつがどんな感じなのかと思うと結構面白い。
本人にも言ったらお前は他人事だと思って!とちょっと怒られたけど、そのうち返事したらどうしよう……と心配し始めたもんだから、俺がいるときだったらフォローするから心配するなって!と伝えておいた。
俺の友人、ウミことヒロ。
その本名は、
一寸木 大海。
かわいそうに、自分の名字を使われてしまった上に、リアルでの知り合いの知り合いという関係で、フレンドになってしまった男である。
自分の名字を女の子に呼び掛けるのってどんな感じなんだろうな。
そんなことを面白がって言ったらまた軽く痛くないパンチをされてしまいそうだから言わないけれど。
遅い朝兼昼飯を終えた俺たちは各々の部屋から再びノイリオンへとログインするのだった。