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ウミとイッチのリアルでの夕飯

道具屋で絡まれているチョッキをウミがかばった数日後の時間軸

(本編39話以降)

 

「ヒロ、絡まれてるチョッキちゃんのこと庇ったんだって?」

「は?何で知ってるんだ?」

「掲示板に書いてあったぞ」

「なんで」

「輩に囲まれた少女を少年が庇ったって。でかい音の指笛とか殴られたこととか衛兵のこととか書かれてたな」

「まるっと全部っぽいなソレ……」

「読むか?載ってる板のタイトルとかURL送るか?」

「いいよ、自分でもスマートじゃない助け方だって分かってるし」

 そんな恥ずかしいの読みたくない。と小さく返すヒロ。


「でも下手に決闘とかになったら相手の力量によっては負けてたかもしれないわけだし、衛兵呼ぶって割とよかったんじゃないか?」

「……自分の外見が子供なことを利用してるけどな」

「というか、目立つだろうって分かってるのにヒロがそういうのに口出すとは思ってなかったな。普段なら後からフォローだろ?」

「……」


 そこまで話すとヒロは口をとじて黙ってしまう。


 元々他人と対立したり、衝突したりするのが好きじゃないし、慣れた奴にはたまに口が悪いけど基本的には温厚でお人よしな奴だから、ヒロが仲裁に入り、そのうえ相手を煽るようなことをしたというその話を聞いて驚いた。

 ゲームとはいえ、目立つのも、他人と衝突するのも好きじゃないと思ってたから。


「……壱也」

「うん?」

「……本人の成果を、当然みたいな顔して横からかすめようとするのってさ」

「あぁ」

「……嫌だろ。そういうのって、一回認めると当然みたいな面で何度も繰り返されるだろうし」

「……そうかもな」


 ぽつぽつと言葉を零すヒロに同意する。

 少し前の、ノイリオンを始めるよりずっと前のヒロの姿を思い出す。

 その表情は蔭りがあるものの、そのときよりもはるかにマシだった。なんとなくホッとする。どうなるかと思っていたが、少しずつは回復しているんだと思えたから。


「……ヒロはさぁ」

「?なんだよ」

「……いいや、なんでもない。俺も颯爽と絡まれた女の子を庇いに入る大海(ひろうみ)クンのことリアルで見たかったなーと思ってな!」

「壱也、面白がってるな?」

「そりゃ面白いだろ!」

「他人事だと思って面白がってるけど、多分お前だってあのときのチョッキを見たら後先考えずに突っ込んでたと思うぞ」

「そうか?」

「そうだろ。お前の方が直情的だし、曲がったこと我慢できないタチだろ」

「えー?子供の頃はそうだったかもしれないけど今はもうそんなことないと思うけどなー」

 俺ってはオトナになったから?オトナの男の余裕っての?

 そう続けて少しだけしなを作ると、うげ、と顔をしかめながら「言ってろ」と言われてしまった。


 ヒロが厚焼き玉子を箸でつまむのを見ながら、しみじみと思う。

 他人が当然のように成果を奪うことに対して、怒れるようになったんだなと。

 自分のためではないものの、その内容をおかしいことだと、不条理だと、不公平だと、怒れるようになったんだと。

 そんなことを、許容しなくていいと、してはいけないと思えるようになったんだと。


 優しさが気弱さに変わって、自分のために相手に何かをいうこともできなくなっていた頃。そこから離れて、時が経って、身体を休めて、ゆっくりして。

 そうしてここまでマシな表情をできるようになったんだな、と。

 そう思ったら無性に嬉しくて、ちびちびとビールを飲んでいたヒロの肩に勢いよく腕をまわして自分のジョッキを掲げた。


「さてと!ログインしたいのは山々だけど、せっかくこうして久しぶりに一緒に飯食ってんだ。思い切り飲んで食うぞ!」

「絡み酒うっとうしいんだけど酔っ払いじゃんかお前……」


 嫌そうなことを言いながらも、その表情はやわらかい。

 飲むスピードはマイペースなままだったが、俺の差し出したジョッキに自分のコップをカツンと合わせた。


このあと帰宅後、ウミはちょっとだけログインしたけど、イッチは妙なテンションのままログインして思い切り敵と戦いに出かけた

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