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「女神の恵みがあらんことを。輝く人の道に光あれ。」
もはや棒読みの祝福なのではあるが、やはり王族の「祝福」を受けると、受けた娘たちは一瞬光輝き、今日の白いドレスと相待って、光輝く若い美しさが匂い立つ。
ジークにはどうでも良いことだが。
(あーさっきから前列でギラギラさせて令嬢見てるのはどこの馬鹿息子だ。うわ、この令嬢は香水一瓶使ったか?臭い。。この令嬢はなんか堂々と壇上で口説いてきたけど、俺って馬鹿にされてるよな。。あと何人だ)
花の顔を一筋も歪めることなく、微笑を湛えたままいろんな事を考える。
もう心が疲弊したころ、奇妙な魔力がゆっくり、確実に近づいて来るのを感じた。
微笑みを絶やさずに、しかしキッパリと部下を呼ぶ。
「ゾイド」
魔道隊長は呼ばれる前に横に控えていた。
「御心のままに」
黒いローブのケープをあげる事なく、答える。
「何が近づいている」
ゾイドはその赤い目をギラリと見渡し、告げる。
「魔力を持った何かが壇上に。東の古代魔力です。お気を付けください。」
そして後ろに控えるが、ゾイドが体内に魔法陣を練っているのが感じられる。攻撃体制だ。
(東の古代魔術?攻撃力も少ないそんな古の魔術をこの壇上で展開するなど、目的はなんだ)
先ほどまで半分眠りかけていたジークの眼に光が宿る。
令嬢の一人がこの魔力の源だ。目的はなんだ。
「ローランド」
「御意」
魔力の源である令嬢は誰だ。一見すると何一つ変化のない美しい壇上の貴公子達は、それぞれ臨戦態勢に入っていた。
(面白い。退屈していたところだ。)