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おおよそ50人くらいはいようか。それぞれ鈴蘭や百合のように、白い薔薇のように美しく着飾った娘たちの、ちょうど40人目くらいにレイチェルも並ぶ。
身分の順から並ぶらしいが、入場の際に渡されたデビューの腕章に数字が記されており、その腕章を渡して列に並ぶのだ。
レイチェルは基本ちっとも社交的ではない性格の上、魔法史資料館で日がな過ごしているので、同じ歳くらいの娘の友達はほとんどいない。壇上に上がったら、王の開会の宣誓まではボーッと祝福とやらを授けられるまで、ポーズを決めて待っているしかないのだ。
(しかしすごいわね。。)
高位貴族に縁もゆかりも無いレイチェルは、列の先の令嬢達に目をやる。
皆一様に高くゆった金色の髪に宝石を飾り立て、目元につけボクロをつけている。最高級のシルクで素晴らしいカットのドレスはどれも王都の名サロンの手によるものだろう。人形のような完璧な美に、ほうっとため息が出る。
レイチェルは、もはや同じ人類とは思えないご令嬢達を遠慮なく眺めていたが、やがてホールからふと何やらレイチェルに不躾な強い視線を感じた。
(お姉さま?にしては強いし、お父様かしら?でも知らない人の目だわ。なんだか怒ってるのかしら。私どなたかに粗相したかしら。)
レイチェルは少し居心地が悪くなり、姿勢を整えてホールに目をやる。
今年一の規模の夜会だけあって、客層も未来の花嫁候補になりえる令嬢を一目見てみようと鼻息の荒い貴族の子息が前列を埋めて、その後列に娘の晴れ姿をみようとする親達が輪を作る。
不躾な視線は前列からでも後列からでもなかった。ホールの後方の、警備隊から?しかしレイチェルには騎士に目をつけられるような覚えは全くない。
(なんだか嫌な感じ。きっと気のせいよね。いいわ、今日はとっておきの!素敵なドレスですもの、楽しみましょう!)
高らかにトランペットが歌う。
「第二王子、ジーク・ド・アストリア殿下のご入場です」