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ジークは対外的には完璧な王子様を演じて、御令嬢とのお茶会の真っ最中であった。
ジークの政務の中で一番の苦痛はこのお茶会だと、ルイスにはいつも愚痴ているが、どんな御令嬢とのお茶会でも完璧な笑みを浮かべて優雅にこなす。
そしてお茶会の終わりには、ほぼ全ての御令嬢が頬を赤く染め、上気して帰途につくのだ。
ジークの数々の特技の中でも突出しているのが、この御令嬢のあしらいだとルイスは思う。
「ただの技術だよ。相手に気持ちよく話をさせて、聞きたい情報を得るのさ。惚れさせる一歩手前で突き放すのがコツだね。」
面倒くさげにジークは言い放つ。
特技ではあっても好きな仕事では決してないらしい。
(キラッキラの美貌のジーク王子様以外にそんな技誰が使えるんだよ。。。)
本日の御令嬢もジークをウルウルと見つめ、必死で気を引こうと社交界での噂話や何やらを続けている。
ジークはキラキラした微笑を絶やす事なく、しかし御令嬢の言っていることは何一つ聞いちゃいない。ちなみに令嬢の名前を覚えるのがいちいち面倒なので、お茶会の御令嬢は全部「美しい方」「薔薇の園の君」のどちらかでしか呼ばない。
つかつかと、後ろに控えていたルイスが近づいてきて、ジークに何やら耳打ちをした。
ジークは立ち上がり、それはそれは美しい憂い顔で令嬢にこうのたまう。
「美しい方、話は尽きないが、今日は時間切れだ。野暮な客がやってきてね。」
ーさて、先程の転移魔法で連れてきた客人の事か。
「また次回お目に掛かろう。ゾイド、入れ。この美しい方を送った後に話を聞いてやろう。」