小さな数字
「車って何だ?」
「……えーっとぉ…た、食べ物だよ!」
「嘘つけ。さっきの文脈で食べ物なわけないだろ。いいから早く教えろ。車って何だ」
「だ、だからー…そ、その、架空の乗りも_____」
ウィィーーオン!!! ウィィーーオン!!!
ウィィーーオン!!! ウィィーーオン!!!
ウィィーーオン!!! ウィィーーオン!!!
「あ、あれ…」
バタッ
シューラとトワは突然その場で倒れた。
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中学3年、冬、雪の降る日
「シューラ、もう諦めて俺と同じとこ行こうぜ」
「どうして?」
「オメェは元から勉強になんか向いてなかったんだよ。それに喧嘩が強いだけで、実技もダメなんだろ?」
「やめてくれウルバ。気落としちまう」
「ホントどうしてそんなマジメになっちまったんだよオメェは。勉強なんてやっても無駄無駄。それに上の学校に行けたってよぉ、慣れない人間関係で息苦しくなるだけだぜ?」
「だから変わるんだよ」
「変わる?4年間もヤンキーやってたお前がそんな簡単に変われるのか?いやムリだ。生活全部変えないといけねぇ。俺が行こうとする高校勧めたのもそうだ。オメェにピッタリの環境だと思ったし、近いからいっつも集合時間遅れるオメェに優しいと思ったからだ。それにまた俺とタッグ組めてよぉ、最高じゃねーか。わかるか?」
「あぁ、わかってる。わかってるさ。親切に教えてくれてサンキューな。でもな、やっぱり諦めたくないんだ。オレの思ってること言っていいか?」
「へいへいどうぞ」
「・・・・人ってみーーんな変わっていくんだよ。もちろん今のオメェみてーに、昔っからのダチとずっとつるんでいたいって奴もいるぜ?オレだって少しは分かるぜその気持ち。でもな、誰もがそうじゃねぇ。夢に向かって突き進む奴もいれば、新しいダチ欲しくて探している奴もいる。社会が変わっちまう限り、人も変わんねぇといけない。だからオレらの関係も、いつか途切れるかもしんねぇし、そうならんかもしんねぇ。未来なんか、なんにも分かりやしないんだ」
「ならオメェはどうして変わりたいと思った?」
「オレはビッグな男になりたい。誰から見ても称えられるような、そんな男に。だからよぉ…、いつまでも狭い場所で糞溜めしてイキってられねぇんだ」
「それで片屋高校に志願ってか?あの超名門校ねぇ…。ハア…しゃあねぇなあ」
「ホントわりーな…。他の奴にも伝えておくわ。裏切ったと思われても仕方ねぇ。ボコボコにされるかもしんねーけどよ」
「もし受かったら、もう戻らないのか…?」
「受かっても落ちても戻らないつもりだ。でも暇な時は適当に顔出しにいくぜ。そんで遊ぼうぜ」
「じゃあまずは言葉遣いからだな」
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「はっ!」
あれっ…どうしてオレ倒れていたんだ…
後ろを振り返るとトワも横たわっていた。
「おいトワ!!起きろ!!」
「ん……あれ…どうして私、倒れて…」
「お前も同じ反応かよっ! って…なんだこの数字?」
なんなんだこれ…
視界の右端にうっすらと小さな数字が刻まれていた。その数字は___『1020』
「トワ、お前数字見えるか?何番だ?」
「私、1020って書いてある…」
「同じかよ…いったいなんだこれは!?」
「とにかく周りの住民さんにも聞いてみよ!」
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「おいじじい!大丈夫か?」
「え?おじさん今寝てただけだよ? ん?何この数字?」
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「急に意識を失って…。君にも数字が写ってるのか!?」
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「お宅も!?私たち家族全員倒れて、起きたら数字も同じ1020が視界に入ってるんです!!」
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「もしもしアレク!」
「シューラ!今携帯掛けてきたっことはお前の身にも起きたのか!?」
オレとトワだけじゃない。近所から遠くにいる友達までも不可解なことが______
「テレビ見よ!何か報道されてるかも!」
「そ、そうだ!」
いつもおちゃらけなトワも、今回は相当焦っている。
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【テレビをご覧になっている皆様!!今すぐ作業を止め、安全な場所で身を伏せてください!!突然意識を失う不可解な現象が発生しています!!工事をしている人は特に危険です!!私たちの視界に数字が表されていますが、それを気にするよりも先に今すぐ作業を中止して、安全な場所で伏せてください!!第二波の恐れがあります!!】
流石の異常さにテレビの速報も大慌てだ。
「クソッ…!他の奴ら大丈夫なのかよ…!」
「とにかくシューラ動かないで!おじさんも私にもっと近づいて」
トゥルルルル トゥルルルル ピッ___
「もしもしウルバ!」
「シューラ!俺は大丈夫だ!オメェは!?」
「問題ない!族のメンツたちは?」
「クルドさん現場で働いてるから掛けたんだが、出てこねぇ。もしかしたらヤベェかもしれねぇ!他もおんなじような奴らいっぱいで手付かずだ!でも今は自分の身を安全にしろ!」
「わかってる。切るぜ」
ウルバは無事で良かった。
あと誰心配しないといけない!?次はバイトの店長に電話するか!?_______
「もういいから今は静かにしといて!」
「んなこと言ったって心配はするだろ______」
「キャッ!」
ギラギラギラギラギラギラ
窓から眩しい眩しい光が目を襲う。
咄嗟に窓を開け外を見た。
その光景は、初めての光景で、この混乱時にはあまりにも最悪の出来事で、もうじっとすることなど許されなかった。
「終わりだ…」
何十体何百体もの魔獣が空から降り注がれた