変わったこと
帰宅にて
ガタンゴトン ガタンゴトン
「次はー、逢坂~~、逢坂~~」
リセットしよう!今までの気弱な自分も、何事にも暗く考える自分も。
ピッ
頑張ろう!最初は無理してでも、心が痛んでも。
タッ タッ タッ
僕はやる、変えるために。まず初めにお母さんに言ってやろう。もう僕は勉強がしたくないって。
徐々に家へと近づく最中の出来事であった。
「うぃーーす!また会ったねぇアイキョウくーん」
「久しぶりーー、3時間ぶりだねぇーー」
いじめ組が僕の帰りを待ち伏せしていた。
「さっき邪魔が入ったから中断したけど、せっかく揃ったんだし続きしようぜ」
「お前ら…!!」
どうしてまた悪夢が続くんだと思うと、怒りが込み上げてきた。
「ええ?何何?俺らとやるつもり?いいよいいよ!」
あ______そうだ、僕は変わろうとしているんだ。こんな不意打ちは聞いてないけど、心の準備はもう整えてきた。これは、過去の自分を変えるチャンスだ。
「へー…、それでわざわざここまで来たんだ~~。君たち、そ、そんなにも僕に構ってほしいの? バ、バカだよね。もう逆に僕のこと好きなんじゃないのー…笑」
「あぁ!?ふざけてんのかテメ_____」
ドカッ
僕は、初めて人を殴った。
殴ったという僕の驚きと殴られたという相手の驚きが相まって、お互いに沈黙が現れた。
や、やった…!!
ははは!シューラくん!僕やっと__________
ドガッッ!!!
「ぐあぁぁ!!」
「テメーよくも……おい!全員でコイツ殺すくらいやるぞ!!!」
ドガッ ドカッ バコッ
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…………
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「アイツらいっつも3人で寄ってたかってんだろ?1人じゃビビッちまう根性なしなんだよ、センパイみたいに」
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…まだだ、まだだ!まだだ!!
「うぅ!!」
「ちっ!魔法かよ!」
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「あーー終わった終わった…」
「もう疲れたわー…コイツ面倒くさいからもうあんま関わらいようにしようぜ…」
「よし金全部貰って帰ろうぜ…」
スタ…スタ…
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僕は仰向けに倒れながら静かな夕焼け空を眺めた。
「何あの人ー…。あんなところで寝そべっちゃって…(コソコソ)」
アイツらも容赦なく殴ったり蹴ったり魔法を使ってきたものだから、身体や服はボロボロで、もう親に黙って言い逃れできる姿ではなかった。
「シューラくん、助言ありがとう…。でも、新しい自分が生まれるまで、、いったいいつまで我慢しなくちゃいけないんだ…!もうしんどいよ…」
ふと出た涙を流しながら、独り言を呟いた。
.
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「あ、あんた…どうしたのその姿……」
「ゴメンお母さん。今まで黙っていたけど、僕いじめられていたんだ」
母さんは驚いて恐る恐る電話を取り出そうとした。
「そうだったの…なら早く言ってくれれば良かったのに。とにかく学校に報告しなくちゃ」
「あ、でも大丈夫!これから僕いっぱい努力して強くなるから!やっぱどんなに良さそうな学校でもいじめっていうのは無くならなくてさ~、片屋高校でも僕以外にそういう人けっこう見てきたんだけど、やっぱ大抵はヒョロヒョロな人だったりおとなしい人だったんだ。だから強くならないといけなくてさ、それでもう正直に言うけどさ、僕、勉強もう辞めるよ。その時間をトレーニングや家族との会話に費やして、家でも学校でも有意義な時間にしていくからさ。ね?いいでしょ?」
叱られるのは覚悟していたけど、叱られたくないからあえて明るくそう話した。
「そう。じゃあ勝手にすればいいじゃない」
「え?」
「その代わりもうあんたに作るご飯も、あんたのために払う学費もないわ。もうぜーんぶ勝手に1人で解決しときなさい。もう世話しません」
「そ、そんな無責任な…!」
「無責任じゃないわよ。あんたは私たち『親』に育てていただいているのよ?なのにそんな恩を知らずに勝手に道を外すのならこっちだって願い下げよ。きっとお父さんも同じ意見よ」
「どうして!?勉強しない、タバコ吸ってる高校生だっているのに、どうして僕はそうなろうとしたらそんな扱いを受けるんだ!?」
「は?あんたバカじゃないの?そんなの、よそはよそうちはうちに決まってるじゃない!バカな大人が産んだ子どもはどう人生を歩もうが勝手だけどね、こっちは医者と医者が産んだ子どもなの!あなたは生まれたその瞬間から優秀な大人になるという使命があるの」
「勉強することが優秀な人とは、か、限らないし…それにどうして、そんな…極端な考え方しかできないんだ…」
「それに何?いじめられたくないから強くなる?そんなのしなくたってあんたがさっきしたように、いじめの告白を早くしておけばいいの。そしたらお母さんや学校側が対応するのだから、あんたはただ勉強すればいいのよ」
「そんなのじゃ対応しきれない…。そ、それに違うんだ……。ぼ、僕は自分をもっともっと変えたくて……」
「あなたは勉強だけ頑張って立派な社会人になればいいの。そしてゆくゆくは年収2000万超えのお金持ちになる。そのために今が大事なの。それがイヤならここから出ていってちょうだい。それともやっぱり母さんの言うことに従うなら、さっさと今日の塾の準備をしなさい」
だ、だめだ…。僕は…
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「マジで大切に思われてないって感じたら家出すればいいんだよ」
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………
「…ごめんなさい、僕が悪かったです。塾の準備をしてくる…」
「わかったらそれでいいのよ。とにかく学校に電話するから」
「待って、あと1日だけ、待って…」
ごめんシューラくん…、僕には勇気がないよ…
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2階へと上がると、妹が待ち伏せていた。
「そういや私の3階の部屋の窓からアンタ見えたけど、アンタボコボコにいじめられてたねー!見ててチョーウケたんですけどww」
妹のことなんかどうでもいい。どうでもいいけど、どんな人でさえ悪口を言われると悲しくなる。
ガチャ
そして自分の部屋でうずくまった。
.
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「塾、行ってくる…」
自転車を漕ぎながら向かった先は塾ではなく、僕が住む片屋の国を越えた峰川の国の山奥だ。
物凄く時間が掛かった。3時間くらい?
崖の上を登っていく。
皆さん自殺を考えたことはありますか?
もし自殺をするなら、人に見つからない場所でしましょう。
死体が転がっている姿を人に見せないために。
救急車代、葬儀代、火葬代など、死んだ後にも迷惑をかけないために。
友達を、悲しませないために。
シューラくんは、悲しんでくれるかな…
ヒューー
頂上はよく風が通る。
只今10時24分。外は暗くて景色がよくわからない。
死んでしまったら嫌なことも無理やり忘れてくれる。
そう考えながら僕は勢いよく崖を飛び降りた。
ただしここは魔法の世界。何か奇跡が起こるかもしれない、そんなヘンテコな世界。今空中にいる自分も、何かで助かるかもしれない。
今日、知ったことがあった。それは人を痛めつける楽しさ。初めて人を殴ったとき、僕はやっと頭のネジが動き出した。しかしそのネジは、ストレスが溜まると共に脆く、いつしか外れてしまう。
外れたとき、壊れたような思考が浮かび上がる。
ーー キライナヤツラミンナコロシタイ ーー
ここは魔法の世界。神様でも、人でも、魔獣でも、エイリアンでも、自然現象でも、何でもいい。
僕に力をください
【いいだろう。その願い、受け取った】
え!?
頭の中でテレパシーが駆け巡る。
【リミッター解除だ。それが、お前本来の力だ】