変わろうとすること
「まだ皆さんが入学して1ヵ月とちょっとしか経っていませんがー、今日から新しいクラスメイトが1人増えまーす。入ってきてーー」
担任のプレフ先生がそう言うと同時にその人は教室に現れた。
「やっほーー!初めましてトワでーーーす!あ、昨日も会ったから初めましてじゃないかーーあはは!ww」
「うわー!トワちゃんだー!」
「よろしくーー!」
クラスメイトからかなり歓迎されている。
「ねえねえ昨日トワちゃん言ってたけどって本当にシューラのカノジョなの?」
「いやだから違うって!」
オレは素早く言い返した。
「ゴメンねー、私のカレシっていうのはウソ。なんかあの時は空気盛り上げたかったのぅ」
「じゃあ2人はどういうカンケー?」
「あー…えーっと…」
「あはは、実は私________」
!? まずい…
「実は記憶がありません」って、そんな人様に迷惑をかけることを言いそうな気がして身震いした。
「実は私、シューラのいとこで最近こっちに引っ越してきたの」
「「へーー」」
意外とまともな回避方法でほっとした。
「えぇっとー…そろそろ先生喋ってもよろしいですか(怒)」
「あ、さーせん…」
キーンコーンカーンコーン
「トワちゃんといるときのシューラくんってどんな感じ?」
「けっこうお茶目で可愛いよ。常にカッコつけようとしてるからバレないように気安く話さないところとか」
「そうなんだーー」
おい、勝手にオレの人物像を造るな。
.
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「えーーとですねぇ、今日はp87のアウゼス支配体制、そして100年魔法記の学習をしていこうと思いますう」
トワの奴、黙って授業受けられるのか?
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「そして西暦1000年に_______」
「あーーもうつまんなーいー!もっと楽しい授業にしてよー、つるっぱげセンセー」
あ…やっぱりダメだった。
「つ、つるっぱげ先生だと…!! 君!この教職員である私になんてことを!!」
「ねえみんなー、今グラウンド使われてないし外で遊ぼーよー!」
「おお!いいね!やろうぜやろうぜ」
周りのクラスメイトたちがトワの提案に乗り気になった。
「コラ!ダメに決まっているだろ!」
「センセーも一緒にどうですかぁ?」
「ダ、ダメだと言っている…!そもそもそんなことで時間を費やすより、人類が歩んだ歴史を学ぶ方が良いというのがわからないのかね!? お、おいシューラくん!君は確かトワくんのいとこさんだとプレフ先生から聞いているが、何か言ってやったらどうなんだ!?」
…
「…固いっすよ先生。授業の1回や2回、皆でギャーギャーしたっていいじゃないですか」
「な、なに!?」
「別にトワに肩入れしてるわけじゃないっすよ。んなわけで、よし、オレも混ぜてくれ。ってか全員で行こう」
トワの面倒でイライラするのも損するだけだと思った。
「サンセー!」
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しーーーーん
………
「はぁ…」
教室は静かになった。
わたくしクレスコ55歳男性職業教師。幼き頃から歴史に興味を持った私は、故郷山田市では当時18歳高校生にて、世界中のあらゆる歴史を熟知していたことから『歩く世界史』と呼ばれるほどの男であった。ある日友人に歴史を教えたとき、あの気持ちの高ぶりは素晴らしかった。そんな私は教師を目指して努力し、超一流の銀畑鳳凰大学への進学を成し遂げた。その後も学習を怠らず優秀な人材となった私は、神聖なる片屋高校の教育者となって早30年。今となってはストレスが溜まる日々。新人だった頃の輝きはどこへ行ったのやら…
「まったく…最近の若者といったら……な~~にが外で遊ぼうだ!あぁ!人類が長い年月を掛けて築き上げた文化というものを本を通じて体験する素晴らしさを知らんのかね?というかこの学校おかしくないかぁ!??筆記試験の他になぜ魔法実技試験や対人試験が入試に実装されてあるのだ?だからこの学校もどんどん廃れて______ブツブツブツ_______」
「あの~……」
6人また教室に戻ってきた。
「なんだね君たち?外に行ったのじゃ…」
「私たち、先生の授業が好きで…、先生は魔法のようで、話をしっかり聞くだけで私を歴史の世界へと引きずり込んでいくかのような感じがして、本当に好きなんです。だから今人少ないけど、授業の続きお願いできますか?」
「僕からもよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!!」
「き、君たち……」
あぁ、この仕事、まだ辞めなくて良かった…!まだ今の若者も捨てきれたもんじゃない…!
「よし!じゃあさっそく_________」
バリバリバリ!!
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「う、やべー…うちのクラスの窓割っちまった…」
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「せ、先生……?」
血だらけ教員クレスコになった。
「ゴラアァァァァ!!!」
放課後
「ねえ、シューラどこ?一緒に帰ろうとしたのに」
「え、トワちゃんシューラくん家の近くに住んでるの?」
「え?いやーー…まあそんなところ?笑」
カサカサカサ____________
オレは今トワにバレずに1人で帰ろうとしている。
なぜ一緒に帰らないかって?それはちょっと恥ずかしいからだ!カップルだと周りから思われるだろうし、それになんかアイツめんどくさい!
よし、裏庭ルートだ!!
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「はい、今日の分」
「…」
「おい、さっさと渡せよ」
「…僕の定期券を奪ったのはお前らか!!?」
「あん?あーーもしかして昨日のやつ?あれどこやったっけガハル?」
「覚えてねーな~、確かドブに捨てたって俺ら?」
「あーそうだそれそれ。もう見つかんねーし、諦めていつも通りカネくれや金持ちくん♥️」
「……持ってない」
「あ?嘘ついてんじゃねー!!」
ガッ!!
「ほえーー、あっぱあるじゃんいっぱい」
「あ……あが……」
「さっすが金持ちーー!」
「おい、テメーら何やってる」
「あ、何お前」
「オメーらマジぶっ殺すぞ…」
「上等だっての!」
「おい…行くぞお前ら…」
「は?どうしたんだよガハル?コイツもまとめて______」
「いいから早く」
スタスタスタ
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「おい、大丈夫か?」
シューラは手を差し伸べた。
「君、昨日の?」
「そ、タバコくんだよ。いるか?タバコ」
「ははは…いらないよ。…それより恥ずかしいな、バレちゃって。僕、いじめられているんだ。昨日もここにいたのはそういうこと」
「センパイ、名前は?」
「え、あっ、アイキョウだよ。よ、よろしく…」
「アイキョウね。オレシューラ。それにしても情けねーよセンパイ。背高いのにビビっちゃってどうするよ?ちょっと陰で見てたけどなんで反撃しないの?」
「それは…、僕、弱いから……見ての通りガリガリで。それに魔法だって、あいつらよりも全然使えなくて…」
「じゃあ負けないように鍛えればいいのに。ヒョロいなら筋トレすればいいし、魔法だって使えば使うほど成長するって聞くんだから______」
「できないんだ。両親は医者で勉強に対して熱心だから、嫌だけど僕はずっと勉強していかないといけないんだ。じゃないと医者を継げなくなるから」
「……すぅ…はぁ…」
シューラは少し黙った後に言った。
「…やっぱタバコ吸うか?」
「え?」
「お前の言ってること言い訳にしか聞こえねぇ。何が勉強あるから鍛えられねぇだ。1日にどれだけ時間あると思ってんだ。どーせ家でゲームちょいちょいやってるんだろ?その時間減らして復讐心燃やせよ。それに親にちゃんとイヤって伝えたのか?勝手に勉強を強制的だと感じてねーか?」
「そ、それは…」
「まあ仮に伝えたとしてクッソ否定されたらマジで1回グレてみろよ。髪染めて暴走族入っていろいろしてみなよ。そしたら真剣に親と面と向かって話せるぜ。多分叱られるけどその時の親しっかり見て、マジで大切に思われてないって感じたら家出すればいいんだよ。もう高校生だからできるだろ?適当にクソ遠い田舎の方まで逃げて誰だか知らねぇ独り身のじいちゃんばあちゃんに声掛けたら泊めてもらえるだろ。アイキョウにはリセットが必要だと思う。そのためにも、手始めにタバコ吸ってみないか?」
シューラは情熱的に、そして落ち着いて言葉を伝えた。
「…シューラくんは凄いよ。そんな決断力があったら、僕苦労してなかったのかな…」
アイキョウは斜め下を向きながらそう言った。
「言っとくけど、オレは助言するだけで直接的には助けないからな。男なら1人で解決しろよ」
「うん。できるだけ頑張る。タバコ、1本もらっていいかな?」
「おうよ!__________ってあれ?ライター切れた…」
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