見上げる夜空
「ただいまー」
「ねぇ!家いても暇なんですけど!」
玄関に入るといきなりトワが駆けつけてきた。
「はぁ?知らねぇよ。そんじゃあ、お前も家計のためにバイトしろ」
靴を脱ぎながら軽くあしらう。
「あー、それもいいかも…ってそうじゃなくて!私も学校行きたい!シューラのところの学校通わせて!」
トワのわがままターンが発動した。
「はあ?誰がお前の分の学費払うんだ?オレは出さねぇぞ。自分の金は自分のためにしか使わねえからな」
「じゃあホントにバイトする。私も学校行けるように学費貯める。いいでしょそれで?」
マジな顔をしていて止まる気がしなかった。
「まあいいけど…。でも、オレの行ってる片屋高校ってお前みたいなガキが入れるようなとこじゃねぇぞ?」
「何がガキよ!!全然余裕だもん!」
「あっそ。でもまた今度な」
「は!?」
「入いんのに手続きとか入学テストとか、カネ貯めんのにどこのバイトで働くのとかいろいろ決めることあんだろ?ワリィけど今日これからバイトあるから物言いできねぇし、帰ってきても疲れてやってられんからな。バイト明日もだっけ?」
「え?もう行くの……? やっと帰ってきたと思ったのに…」
「話し相手ならいるだろ。ほら、そこに転がってるじじいが」
「……あっそ、もう勝手に行けばいいじゃん…」
「…何拗ねてんだよ。勝手に行きますよ、勝手に」
***
「フラれちゃったね、トワちゃん」
「お、おじさん…! べ、別に…そんなんじゃないし!」
.
.
.
次の日
「ん?」
ブチュウー…
「キョエエエーーーーー!!!」
「コラ!授業中だぞ!!ってええぇ~~!!!」
あまりの驚きに変な声が出た。
窓にトワがへばりついていた。
「どうしたの!…ってえぇ~~!!!!」
窓を開け、トワを中へと引っ張り入れ込む。
「お前何しに来た!しかもここ3階だぞ!落ちたらどうする!」
「だって暇だもん!!おじさん寝てて何もしてくれないし」
トワはプクーーっとふてくした顔を見せる。
「いやだからって________」
「え、シューラくん知り合い?」
クレハが質問してきた。
「えー…うん、まあ……」
トワは黒板前へと駆け寄り、先生の隣に「えっへん!」といったように背筋よく立った。
「こんにちわートワでーーす!そこにいるシューラくんのカノジョやらせてもらっていまーす!」
「えぇ!!」
「「「えぇ!!!」」」
「ち、違うから!!」
じーーーーーーー
クラス中の男から鋭い目線が…
「へ、へーぇー…シ、シューラくん…カノジョいるんだぁ……」
クレハさん違うんです!!あとあなたの顔、笑っているようで怖いです…!!!
「あははww皆可愛い!ウソウソ、今のは冗談ですよーw」
ふぅー…なんて荒らし(嵐)だよ…
「私、近頃この学校に入るのでよろしくお願いしまーす!!」
「来んなバカタレ!」
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カァ カァ カァ
「そんなに学校に行きたかったのか?」
「わかったでしょ?どれくらい行きたかったか。ねぇ、まだまだこの世界、わからないことばかりだからさ、休日どっか連れていってよ。知らない遠い遠い場所にさ」
「遠いねぇ……。お前、この世界の果てがどこまでか考えたことあるか?」
「この世界の果て?」
「記憶ないんだし知らねぇよな。教えてあげるよ。果てなんてな、すぐに辿り着くんだよ。透明な結界がな、ドーム形になって陸を囲ってんだよ。透明だから外見えるけど、そこは何にもない荒野だ。その結界つーのが謎でよぉ、何やっても壊れないんだ。つまりオレたちは一生このドームから出ることができないんだ」
「それ、ホントに現実…?」
「そうだよ。でも真の世界は、もっともっと大地が広がっていると思う。そうやって考えることができるのも、オレたちは、結界を越えた遥か向こうに誰かいると信じているから!」
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3たいのかいじゅう
てんとうむしがおおきくなったかいじゅう
しっぽがつよいへびのかいじゅう
つばさがキラキラしているかっこいいとりのかいじゅう
「パ~パ~~」
「どれどれー?うーん?いるかなぁ?」
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ギラギラ
ギラギラ
ギラギラ
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ギラギラ
星が輝く夜空
そこにパッと新たに輝くのは
魔獣出現時の光だった
しかしそこに現れ、転げ落ちたのは
白いボロキレを着た、少年であった
そして少年は見上げる
その鮮やかな眼で