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ドクガネルの牙  作者: 無音
13/16

きっと、救ってほしかった

7月初旬


____



「シューラ、全然学校来ないなぁ。いつまで休むつもりだよ…。もう1ヶ月は過ぎたぞ…」


「やっぱり…また皆でシューラくんの家に訪ねに行こう。絶対何か理由があるから」


「って言ったて、行くのもう何回目ですか…。説得しても結局来ないのは来ないんですよ。まあ新しい情報は手に入れられたけど。ねぇ、トワ氏?」


「えーっと…それは…」


「まさかねぇ…、トワちゃんシューラくんと一緒に暮らしていたとはね…」


「どうして早いうちに伝えなかった?もしかして俺たちに信用できないことでもあるのかよ!?」


「まあまあ一旦その話は置いとこう。お前もそんな安直な考えやめようぜ。トワちゃん可哀想だろ」


「テルマ、何あんた庇ってるのさ?」


「いやだから庇うとかじゃなくて」



「ねぇ、トワちゃんさー、ホントは何か知ってるのでしょ?いい加減教えなさいよ。ねぇ!」


「私は…何も…」


「あーイラつく…!!正直に言うわ。あんたのそのぶりっ子みたいな性格がすっごくイライラするの!!」


「おいノルア!それは今関係ないだろ!喧嘩してる場合か!トワちゃんも気にしなくていいから、とにかく今は様子を見て待とう」


「う、うん…。あの、、ノルアちゃん…」


「話しかけないで!!あんたの声聞くだけでイライラするから」


「ご、ごめん… 今は止めとく…」




.


.



視界の数字、そして魔獣一斉大量発生の日から1ヶ月が過ぎた。

死亡者・建物の破損があらゆる所で勃発し、テレビはニュースばかりの日々、学校は一時休校、医療不足などが当初人々を騒がせた。


目に見える数字は、『1020』を初めに1日経つごとに1つ減っていったことから、1020日後、つまりは数字が『0』になったとき何かが起きると世間の間でそう推測されていった。


私が通う片屋高校はなんとかすぐに再開できたけど、以来シューラは学校に行っていない。


シューラが行かない理由を私は知っている。それは、シューラの親友であるウルバくんが、魔獣に殺されてしまったから。



.


.




「ただいまー」


「お帰りトワちゃん」


「おじさん、シューラは?」


「今バイトに行ってるよ。それに魔法訓練所…だっけ?それにも通い出してるから、最近、帰ってくるの…遅いね…」


そう、シューラは魔法訓練所に通い始めた。魔法訓練所というのは簡単に言えば筋トレジムの魔法版みたいなもの。そして家に帰っても会話の数が以前よりも微妙に減り、部屋では筋トレばかりしている。


「そっか…、いいよ全然。今はただ()ねているだけだから…。おじさんはお酒、完全に辞めたんだね」


おじさんは大きく変わった。恐らく、もうこれまでの自分が嫌いなんだと思う。


「うん…すっかりね。それに最近は活動的になってきたよ。どうだい、家の外装は?見た目良くなったでしょ?」


「うん!おじさん凄い。私がナデナデしてあげるよ」



.

.

.


「ねぇシューラ、あなたが思っている以上に皆心配しているのよ?」


「……うん」


「学校…そろそろ行かない?」


「……うん」


「やった!じゃあクラスの友達に連絡するね!」


「……うん」


「……って、ちゃんと人の話聞いてるの!!?」


シューラは筋トレ中で、私の言っていること全て適当に「うん」で済ましている。


「もう知らない!!勝手に闇堕ちしとけばいいじゃん!いつまでもいつまでもそうやって死ぬまで一生!」


「んで何だよ。何かオレに言いに来たんじゃねぇのかよ」


「ホントに私が今言ったこと何1つ聞いてなかったんだね…」


「次はしっかり聞くから、言って」


「うん、じゃあもう1回言うから一旦ダンベル動かすの止めて」



シューラの心はダメダメだけど、きっと大丈夫。私なら、彼を励ます力があると信じているから。



「ならさ、どうすれば学校に来てくれるの?」


「…もうさ、わかんない。とにかく今は行く気がない…。もうどうしたらいいか、わからない…」

 

徐々に下を向いた。

悲しい、悔しい、そして憎しみがシューラの中にあるから、すぐに変えることはできない。けどもう十分待った。だからきっと大丈夫。


「話変わるけどさ、シューラはどうして片屋高校を選んだの?わざわざここに引っ越して名門校を選んだ理由は何?夢があったんじゃないの?」


「夢……? あぁ、そうだな…。あるけど恥ずかしくて言えねぇや…」


「将来明確に何になりたいかは知らない。でも、皆が憧れるような大きな人になりたいとかじゃないの?って私は思っちゃう。学校もバイトもトレーニングも頑張ってるシューラを一番近くで観てきた私の予想として、ね。」


夜空を見上げながらそう伝える。


「そうかもしれないな…」


「ウルバくんはシューラにどうなってほしいか考えたことある?答えはもちろん、夢に向かってほしいだよ。だから大事な親友の死をそんな復讐心に向けちゃダメ。夢に向かっていくバネにならなくちゃ」


丁寧に話すと何だか緊張してしまう。落ち着いて、ゆっくり語りかけるよう心掛けた。この言葉が響いてほしいと思って。


するとシューラは頭を抱えた。


「…わかってる、わかってるんだ!でも言わせてくれ…!もう、やる気がないんだ…。もう、疲れた…」


「じゃあいいよ。そんなのにならなくて」


「え……?」


「えいっ!!」


私はシューラの両頬をブチュッと挟み抑えて、顔を私の顔の前へと移動させた。


「な、なんだよ…!」


「私の目を見て。私、打ち明けるから、こんなにも真剣に説得しているんだって感じて。それがわかったら、シューラも真剣に答えて。いいね…?」


「お、おう…」



もうピリピリムードに持っていかないとシューラはダメなままだと思った。私は自分を犠牲にする。犠牲というか何というか、いつかは言えるといいなっことを今言う。じゃなきゃ、本当に、有るべき姿に帰ってこない。そう思った。




「私は________シューラのことが好き。カッコイイし、どんくさいし、天然でツンデレで可愛いし、それでもスゴくスゴく頼れる、そういうところ全部好きだから、早く一緒に学校に来てほしい。シューラがいてくれたらもっと学校が楽しくなる。ただ純粋に、一緒にいる時間を増やしていきたい。それが私の願い。シューラ、私、言ったよ。こんなにも言ったのだから、返事、くれるよね?」


私は、今ある自分の想いをできるだけ全て打ち明けた。シューラが早く立ち直れるようにと思って。



「……その好きって、どういう意味で…?トワが言いたいのは、恋的な意味で好きってこと…?」


「え? そ、それは…」


これは予測していなかった。あれだけ愛をもって語ったのにシューラがここまで慎重で鈍感だとは思わなかった。


「……そうだとしたら?」


そして臆病な私は、濁らせてしまった。


「_________だとしたら…、ゴメン…。オレ、好きな人いるから。…トワ思い切って話してくれたからオレも思い切って話す。オレ、クレハのこと好きなんだ…」


それを聞いて、やけに胸がグッときた


「そう…なんだ…」


「ダチが言うんだよ、トワと付き合っちゃえって。2人仲良いし、トワ可愛いし、最高じゃないかって。オレもトワ可愛いって認めるよ。好きな人狙っていくより今良い感じに進展してる人狙っていけって言ってくるんだよ。オレなんか、モテないから自分から告らないと何も始まらねぇ。だからトワから言ってくれたとき、それが恋としてなのか知らねぇけどスッゲー嬉しかった。もうトワで全然いいんじゃね?いけんじゃね?って普通に思った。けどダチと違ってオレはやっぱ一途だから諦めきれねぇんだ。オレってバカだよな、やっぱ他人とちげーよ。モテねぇなら尚更モテるために燃えてくるし頑張れる。そんでいつか告白して、キッパリ断られたら、そん時は第2候補みたいでワリィけど、オレからちゃんとトワに告白する。だからその時まで待っててくれねぇか……?」


魔獣大量発生のときもそうだけど、シューラは大事なときは真剣になってくれる。私に合わせてくれる。

…そういうところも好きなんだろうな、私。


「ふふっ…!バーカ、な~に熱くなってんの。私が付き合いたいなんて言った?そんなことしなくたって私とシューラは一緒に暮らしているから、もう毎日がデートみたいなものでしょ?」


「はぁ!?茶化したのかよ!?あとお前、オレのことツンデレって言ったな!?どっちがだよ!」


「私がツンデレって言いたいわけ!?どこが!?」


「お前みたいなのはツンデレだけで生まれてきたような生物なんだよ。自分が知らないのか??」


「あぁ!?何だって!?コノ、お豆さんが~~!」


「ぷはっ!どういう意味だよ(笑)」



|

|

|

|


私って、どうしてこんなにも勇気がないの?


人と話すときはあんなに陽気で大胆なのに



そうだ、わかった。私、1度も恋愛経験なかった。




.

.

.



「何だか言い合ってると疲れたね…」


「ははは… トワのツンデレ、久しぶりに見た気がする」


「えぇ?」


「最近暗いことばっかだったからな、まあオレのせいでもあるけど。それでトワもだいぶ気下がってていつもみたいじゃなかったから」


「うふふ。やっぱり本調子の方がいい??」


「そうだな」


シューラは明るさを順調に取り戻している。



「いいよ、明日から学校行く。いつまでもこうしちゃいられねぇことなんて、自覚してるから」


「シューラ…! 私、嬉しいよ!!」


込み上げる嬉しさが私を笑顔にする。


「もう寝ようぜ。オレ朝早いの、久しぶりだから」


そう言ってシューラは部屋の明かりを消した。




シューラ、


私は、


キミが好き_______。





***


「シューラが我らのもとへ帰ってきたぞ~!!」


「おいお前今まで何やってたんだよオラオラ!!」

「久しぶりシューラくん!」

「シューラくん、待ってたよ」


教室の朝はとても騒がしかった。


「皆、ごめんなさい!!!心配してくれてありがとう!!わざわざ家寄ってくれてありがとう!!」


「んなもん誰も気にしてへんって~」

「またシューラくん家入らせて!!」


とってもいい雰囲気。クラスメイトがずっとこうやって笑い合えたら、いいのにな。


そう集団外れから見守っていると、


「トワちゃん凄いよ!シューラをどうやって説得させたの!?」


「エヘヘ! それはヒ・ミ・ツ♥️」


「うわ~、絶対ヤラシイじゃ~ん!!」

「おい!女子いる中でそんなこと言うな!」



私のクラスはとても賑やかです。クラス全員が仲良くて、ノリが良くて、私は幸せです。

だからもう少し待ってくれませんか?担当者さん。


「ねぇ……」


「ノルアちゃん…」


側で見てる私に声を掛けてきたのは、昨日私に怒ったノルアちゃんだった。


「あのさ…、昨日は…その…ごめん…。私、おかしな人で、我を失ってて…。イライラしてたのは前からだから気にしないで。多分それで八つ当たりしてたっていうか…」


「ううん、大丈夫だよ。私ノルアちゃんと仲良くなれると思ってたし、喧嘩してもすぐ仲直りできると思ったから!」


私がパッと笑顔を見せると、まるで異性に惚れたかのようにノルアちゃんは顔を赤くした。


「そ、そう…!じゃあ、仲直りの印に、今度休日どこか遊びに行かない…!?」


「うん!いいね!」


ほら、この通り。互いがわかり合えば、人であろうと何であろう上手くやっていける。


「ねぇ、あなたも皆から人気あって凄いのだけど、アイツってさ、大してイケメンじゃないし別にクラスの中心人物でも何でもないのにどうしてあんなにも人気なんだろうね。ちょっと羨ましいかも」


ノルアちゃんはシューラの方を見てそう言った。


「きっと、一緒にいるだけで何かいいっていう人柄なんだと思う。稀にいるよね、そういう人」


.

.


昼休み



「なあ、大体オレらのクラス休む奴いねーのに今日4人くらい休んでるけど何だろうな?」


「はっ!シューラそれ誰かに言った!?」


「いや、これが初めてだけど?」


トワは一体何に焦ってるんだ?


「ほっ、良かった。シューラは全然知らないだろうからしっかり聞いてね。あのね、…可哀想なことにね、…死んじゃったの……。あの日で…」


「そ、そうか……。何か悪いこと聞いたな…」


そうか、ウルバだけじゃない。こんなにも身近な奴らが実際に亡くなっている。オレたちは、生かしてもらっているんだ。その心を、忘れないでおこう。




ドーーーーン!!!!!




「な、何!?!?」

「スッゴイ揺れたぞ!!!」



ピンポンパンポン


【只今、運動場付近で魔獣が現れました!生徒の皆さんは騒がず冷静に今すぐ運動場からなるべて遠い場所に移動してください!繰り返します!只今____】


「シューラ急ごう!_______ねぇ聞いてる!?」



魔獣だ…




魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 

魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ

魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ 魔獣だ




・ ・ ・ コ ロ ス



「ちょっとシューラ!どこ行くの!?そっちは危険な方だって!!!」

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