狂撃
いつからシューラに対して敬語で親戚みたいな口調で話すようになったのだろう。
私は元々オリバーの国に住んでいた。エルメとシューラと共に。国の治安は悪いけど家はそこそこ良くて。家賃を気にすることはあったけど、お互い助け合えばそれはもう恵まれた家庭と環境で。
美人で人柄の良いエルメに猛アタックを続けたことで彼女は受け入れてくれた。私はエルメを愛している。エルメは私に惚れているのかわからないが。
子供を作るか話し合った結果、作らないって結論になった途端にシューラを預けてほしいと友人でシューラの実の父親であるテテューラが訪ねてきた。
私もエルメも困った顔をしたけど、いざ預かって育ててみれば苦労はするけども、とっても良かった。
だから1人産ませて兄弟にしようって言ったのだがそれも断られた。まあそれはそれで良いのだが…
何事もなく時が経った。このまま喉かな暮らしが続く、そう思っていた。しかし続かなかった。
4年前、つまりシューラが小学6年生の頃だ。
エルメが言った。
「私ね、もうすぐ任期を終えるの」
そこから続く言葉は嘘のような話で、いや、あれはやはりただのハッタリだ。私から離れるための作り話。
そうだった。思えば子供を作らなかったのも、エルメは私を愛してなかったからだ。だから拒否した。
それを気づかされたとき、私は諦めた。
「今まで……本当に……ありがとう!」
涙を流しながら見せるその笑顔も、もうやめてほしかった。
それまで真面目だったシューラも変わってしまった。荒げた口調に変わり、帰ってくる時間も遅くなり、そして中学生になってすぐに暴走族に入ったらしい。
「おいジジイ、これからはオレに対して敬語で喋れ。テメェの上から目線がオレをイライラさせんだよ。わかったか?」
最初は許してやろうと合わせていた。いつかその生意気さを叱ってやろうと思っていた。しかし完全に慣れてしまった。不良なシューラもしっかり者だから、もう私は言い返す気力も立場もなかった。
そして私は奴隷になった。
これは、あんなにも簡単に別れてしまった私への罪滅ぼしだ。
どうして抵抗しなかったのだろう?猛アタックした頃のあの粘り強さはどこにいったのだろう?結局は後悔だ。先のことなんか考えちゃいなかった。
片屋高校に進学を決めたシューラくんは、心配してくれたのか、私を引き連れて片屋の国まで行き、ボロボロの激安物件へと引っ越した。
シューラくんは規則正しく学校へ行き、私はというと、家で毎日酒に明け暮れる日々。忘れたいことを酒と共に流そうと努めているが収まらない。
生きる活力を失い、アルコール中毒で死んでしまってもいいんじゃないかとずっと思ってしまう。
これが私。私は弱い。立ち直る勇気がない。奴隷になる勇気はある。私はそういう人間。だから弱者らしく、責任を果たすため、最後はこういう選択も、ありなんじゃないかな……
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グガァァァァァ!!!
「おじさん避けてぇぇぇ!!!!」
アルマーは自分の役目を果たそうと覚悟を決め、もう止まろうとはしない。
「聞いてんのかあぁぁぉぁ!!!オレから離れるなって言ってんだろおぉぉぉぉ!!!!」
「え?」
シューラの周りに数多なる黒い粒子が纏わり付く。その姿にアルマーとトワは凝視するに他ならなかった。
そしてその一粒一粒が黒い膜から解き放たれるかのように、今、赤色の光が強く照らされる_____!
「シューラくん…!?」
「シューラ!! こ、これは……龍!?!?」