邪魔な飾り
「直近10年のデータを見ると、魔獣は出現してから1分25~30秒で消失する傾向が多い。この統計の結果から、魔獣は1分40秒経つと何かしらの作用が発生して力を失うことが予測される。
そして魔獣が人を襲う手段について。これは打撃と魔法によるものだが注意してほしい。我々が使う魔法というものは大抵、殴る行為と大して威力が変わらないが魔獣は別だ。まあ色々な種類がいるのは学習済みではあるが、言わばあれは銃だ。だから人が使う魔法と同じように考えてはならない。
この2つの観点から、魔獣と遭遇したときは必ず逃げることを意識してほしい」
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「っ!逃げるぞ!!!」
「でもこの数、どこに逃げればいいの!?」
「どことかそんなこと言ってられねぇ!とにかく1分40秒だ。この1分40秒でオレたちの生死が決まるから覚悟しろ!おいジジィ、テメェ酒と運動不足でまともに動けねぇんだからオレから離れるなよ!!」
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「ごめんねーアドボボくーん。君、リストラ確定したよ」
「え、え…え…? リストラ…ですか……? わ、私ですか…?」
「わからないかなー? はっきりと言わせてもらうけど君、無能だよ。何度も教えているのに何度も叱られているのに全く思った通りに動いてくれない。君のような人間をクズっていうんだよ。知ってるかい?」
「わ、わ、私は、これから…どうすれば…?」
「知らないよー!そんなことも自分で考えられないの~~?また就活だよ!就活!といっても次の職場でも追い出されるだろうね~。もう君40くらいじゃないの?諦めて生活保護始めたら~?」
「わ、私には愛する妻と娘が!_______」
「へー、そりゃすごいねぇ。嫁さんどうして君みたいな人選んだのかねぇ?直接聞いてみたいよ。やはり世の中愛というのは、顔でも人間性でもなく運命というものなのかねぇ?」
「待ってください!!ここが安泰なんです!もうここしか______」
「はっはっは!アドボボくん面白いねー。なんならもしも社員全員に対して土下座するとなれば考えてやっても______」
ギラギラギラギラ
「うっ、眩しい!」
「何だいったい!?」
ウウウオォォォォォォォ!!!!
「魔獣だああぁぁぁ!!!」
「うわあぁぁぁ!! !? 何をしている!?私を抑えてどうするアドボボォ!!!?」
「へ、へへ…いいタイミングだ…。部長、私はクズですがあなたもクズだ!二人で仲良く逝きましょうよ。魔獣さん、殺ってくれ!!」
「ふ、ふざけるなぁぁぁ!!!!」
「結局は異性であることと顔立ちの良さだよ。それさえあれば例え仕事が上手くいかなくても続けられるんだ。これだから人って嫌なんだ。なーーにが効率性だ合理性だ。感情1つで経済回っているじゃないか。下らない、こんな世の中私の方から願い下げだよ。あー妻は今何をして______」
バキバキバキバキバキ
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ボリボリ
「ポテチうめー!」
カチ カチ カチ
「あーなんだコイツ。俺様の神コメントに批判してんじゃねーよ。お前が頭おかしいんだよバーカ!失せろゴミ共。……ってなんだよ…いろんなヤツから返信あるけど全部批判コメじゃねーか。お前ら寄ってたかってぼくちんに攻撃するなよ。コイツらイライラ度マックスでマジで草生えるんだがwww」
ボリボリボリ
「ああ!?お前キモいんだが!!マジ本気出して家の場所特定して泣かしに行くぞオラ!!」
ボリボリボリボリ
カチカチカチカチ
「ってなんか外うっせーなぁ……何だよ一体…」
サー_________
「眩しっ。太陽当たるの久しぶりだなぁ______」
ブオコウゥゥィィアアァァァァァ!!!!
「うわぁぁぁぁ!!!!!ママァァァ!!!!!」
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「うわっ!!」
「おじさん!急いで立って!」
「あぁもうくそっ!!何もないとこで転けんなよ二日酔いめが!!」
「仕方ないでしょ!?もっと落ち着いて接してやってよ!」
「あ!?じゃあトワが全部やってやれ!オレ手伝わないぞ」
「あっそう!勝手にしてなさ_______」
ガアァァァァァ!!
「はあっ!!」
揉めている間に魔獣が目の前に訪れた。
「あ…あ…あぁ…」
アルマは固まり、身震いをし、動けなかった。
そして魔獣が襲い掛かる________
「くっっっそおおぉぉぉぉぁ!!!」
咄嗟にシューラが前に出て防御魔法を備えながら対峙した。
「シューラァァァ!!!」
ズガガガガ!!!
「ぐぅわあぁぁぁぁ!!!!!」
シューラの防御を軽く粉砕し、直で受けたのと同じくらいの痛みを味わい、大怪我をしたのと同時に悲鳴を上げた。
「大丈夫シューラ!!?」
ドドドドド!!!
「っ!いいから逃げるぞ!!」
幸いなことに、3人と魔獣の間に建物が崩れ道が塞がれたことで追撃が免れた。
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「ハア… ハア… ハア…」
「シューラちょっと待って!おじさん体力の限界越えてるって!」
「ハア!ハア!ハア!ハア!」
「おじさんいける?」
「……」
シューラは少し黙った後に小さく呟いた。
「…いい加減にしろよ役立たずが」
「え?」
「いい加減にしろよ!!!どれだけオレをイライラさせたら気が済むんだ!!!もう1人でどうにかしろよ…!!」
「シューラ抑えて!今は冷静にならなくちゃ!」
込み上げた怒りが爆発した。
「テメェの怠けた生活が影響して今ピンチなんだろ!?わかってんのかオラ!!テメェが全部悪いくせになんでオレら巻き込むんだよ!? ……なんでそんなに役立たずなんだよ…! なんで助けないといけねぇんだよ…!なんで、オレは、助けようとするんだよ……」
「シューラ…?」
「シューラくん……」
徐々に言葉に覇気がなくなるシューラに、トワとアルマは一点に目を向ける。
「なんで母さん…手離したんだよ……」
シューラは悲しそうに言い、トワはその言葉に疑問を持った。
「…母さんって?シューラ親見たことないって言ってたんじゃ______」
「私の妻だよ。もちろんシューラくんと血は繋がってないけど、私たちは家族みたいなもの…いや、家族だったから、ね…」
と、アルマは下を向いてゆっくり語った。そして自分の不甲斐なさに頭を抱えた。
「あぁ…!何をしていたのだろうか私は…!妻から教わったのじゃないのか…?どれだけ馬鹿なのだろうか…。私はもう、生きる価値なんてない…ただのクズだ……」
「後でいいから!考え事は後でいいから!」
トワは2人を急がせる。
「おいじじい……、オレが死んだらテメェのせいだからな…。そろそろ責任持てよ…コノヤロウ……」
大怪我を負っているシューラは身体の苦痛を味わいながらも話を続ける。
「うん…もう、辛かったからさ……、それにシューラくんにも大変迷惑かけちゃったからさ……、おじさん…ちゃんと責任果たすよ…」
「シューラ!そんなフラグ立てないで!!おじさんも!!今はそんな話いいからこの状況何とかしなくちゃ_____」
グガァァァァ!!!
別の魔獣と遭遇する。
「おじさん何してるの!?私たちから離れないで!!」
「は…はは…お、囮っていうのも、案外カッコ悪くないなぁ…。もうこの歳だからカッコつけること無いけれども…」
アルマは完全に自分を犠牲にする覚悟をしていた。
「トワちゃん、短い間だったけど、ありがとね。おじさんとっても楽しかったよ。
シューラくん、ごめんね。私のことは許さないでくれ。なぜなら私は、君が一生懸命稼いだお金を隠れて使ってお酒買ったりしてたんだ。私は正真正銘のゴミ人間だよ。
ははは……こんなブサイクで汚い人間を、どうしてエルメは選んでくれたのかな……」
グガァァァァァ!!!
「おじさん避けてぇぇぇ!!!!」