一途なアナタヘ
ガチャ
「やあ。オレに用って?」
「あ、来てくれてありがとう!」
「わざわざこの音楽室に呼ばなくとも直接声かけてくれればいいのに」
「別にいいじゃん、いろいろ話したいことあるし。それに、まあここは、君との思い出の場所でもあるし」
「はは、なんか照れるな…」
「私たち会うの久しぶりだよね?ここも懐かしく感じちゃう。君と初めて出会った約1年前くらい懐かしく」
「確かに。そうか…初めて会った日からもうこんなにも時間が経つのか…」
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2005年5月
(おい知ってるか?1年1組の超絶美少女の話。)
(あ?知ってるに決まってんだろ。前後左右隣の席の男子全員がその女に告白したってやつだろ?確か全員玉砕されたらしいな)
(でも凄いよな。あの天使相手に告白する勇気があるなんて。俺なんて絶対できないよ)
(そんなこと考えてる暇ないんだろ、多分。いや~~俺らと同い年とかマジ奇跡っしょ!___って噂をすればあそに!)
(キャー!クレハちゃんやっぱカワイイ//)
(私たちも後で声かけようよ!)
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「シューラくん、もう上がっていいよー」
「ん?まだ12時なってないっすよ?」
「大丈夫。高校生は学校行ってナンボのもんよ。それに1年生だろ?早く馴染んでいかないといけないだろ?」
「ありがたいっすけどわざわざ配慮しなくていいですよ。朝バイトつったって週一回だけですから。まあ今日はこれで降ろさせてもらいます」
「うぃー、お疲れー」
店の制服から学校の制服に着替えた。
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「席替えしたいと思いまーす!!」
「ええーー!!」「まだやらなくていいよぉ」
「よっしゃーーー!」「やったー!」
「あっでもシューラくんいないからどうしよう…」
「プレフ先生、俺シューラの分までクジ引いておきますよー」
「ありがとうアレクくん!」
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ピロロロロ
ポケットに入れているガラケーから電話の音が鳴った。通話先はウルバだ。
「もしもし、ウルバどうした?」
「どうしたじゃねーよ。昨日約束したじゃねーか。パイセン予定通りちゃんと来てくれたんだぜ?」
「いや、冗談だと思ったんだけど…。それで、マジで乗ったのか?」
「『乗った』じゃなくて現在進行形で『乗ってる』だぜ。いや~~女性専用車両って最高だな!マジで女しかいねー!そんで発令後すぐに女性専用車両に乗る俺らって何かカッコよくね!?」
「いやダセーぞ。あとお前ら自分のやってること犯罪ってわかってんのか?」
「あーもうシューラくんはホントうるさいな~。いつからそんな真面目ちゃんなのよ?パイセン!何か言ってやってくださいよ」
ウルバは先輩に携帯を渡したようだ。
「おーいシューラ。テメェ奢りな。あっはっは!」
「奢りって言ったって、次いつ会うんすか?もう切りますよ。オレ今から学校なんで。ウルバによろしく伝えといてください。アイツが電話相手だと長くなるんで」
面倒くさいので早めに終わらすことにした。
「お、おい!」
ピッ
(アイツら捕まっても知らねぇぞ…)
ふぅっと一息ついて学校への活気をつける。
桜の木々が立ち並ぶ春。つい先月、片屋高校に入学を果たしたオレ、シューラは、新たな学校生活に不安や期待を胸に抱きながら今を過ごしている。
同じクラスである学校一の美少女クレハの噂が広まりだしてからか、授業中に遠くの席から彼女のことをチラリと見る回数が増えたような気がする。
そういう想いもあってか、今は少しワクワクしながら学校に向かって歩いている。
ピッポ ピッポ ピッポ
天気が良い。
横断歩道の信号が赤から青に変わると同時に小走りをした。
タッ タッ タッ
「今日そっち、来るかも」
「えっ…?」
顔をしっかりと見ていないけど、向かいにいたオレくらいの歳の女の子がすれ違う瞬間にそう呟いた。
オレは驚いて後ろを振り返ったのだが彼女は振り返らず真っ直ぐ進むので、後ろ姿を見ることしかできなかった。
「?? あの子が片屋高校来るってこと…?まあいっか」
オレは気にすることなくまた小走りで学校へ向かった。
.
.
.
「すみません遅れました!」
オレが教室に入ったとき、数人クスクスと笑っていた。
「っしゃー!俺の勝ちーー」
「くそっ!また賭けに負けた~!」
は?何言ってんだ?
すると授業の担当の先生が
「こんにちわシューラくん。遅れてでも学校に行ったこのは偉いけど、今日は4時間授業でお昼には下校だよ?(笑) プレフ先生、前もって報告してなかった?」
「ほーら、やっぱ聞いてなかったよコイツ」
そう言われても頭ポカン状態だから、おそらく話聞いてなかった。
キーンコーンカーンコーン
「あ、終わっちゃった。今日習ったことはちゃんと家で復習してくださいね。それとシューラくん、本当に学校に来ただけだね(笑)」
ガーンとなって扉の前で固まっていた。
.
.
「よろしくね!シューラくん!」
「え?」
オレに向かって言ったのは、あのクレハさんだった。
「え、あっ、よろしく!…って何?急にどうした?あれ?ここオレの席じゃないの?」
「そっ。さっき席替えしたんだ~~。シューラくんはあそこ、私の前。だから改めてよろしくね!!」
「そうだったんだ。こ、こちらこそよろしく!!」
まるで神様が選んでくれたかのような豪運だ。
「なに~~?緊張してるの~~?」
クレハは低い姿勢で下から覗きながらオレの顔に寄ってきた。
「えっ、いや、違う違う_______っていうのは嘘かな、あははは! そりゃあ噂のクレハさんだから初対面は緊張するよ(汗)」
何とも拙い言葉で、みっともない姿を彼女に見せてしまう。
「まあそうだよね。私だって実は緊張しちゃったりしてるし。お互い様だね」
彼女はニヤケ顔でそう言った。
「そ、そうですねぇ…」
「あー後私のことはさん付けしなくていいよ。何だか仲良くないように聞こえるし」
「うん!」
アレクら男集団がこっちに寄ってきた。
「クレハー、コイツどう?いい感じ?」
「え、えーっと……私まだわかんないけどいい人そうかなぁー…?」
感想薄っ。
「おいお前ら、女の子1人にそんな寄ってくんなよ。困ってるかもしれねーだろ」
ここはカッコよく注意をして魅せる。
「なんだーお前、俺たちに取られるのビビってんのか?オイオイ!」
「ちげーよ!アホが。ていうか本人の前でデリカシーのないこと言うんじゃねーよ」
「アハハハハ」
「うふふ…」
顔を赤らめて教室を出るオレに笑い声を上げる男たち。そしてクレハさえも。
そして勢いで教室を出た。
「校舎でもぶらつくか…」
教室を出ても特に用がなかったので、まだ見慣れていない場所へ歩き回ることにした。何せ、この学校は広いもんだから。
ピロロロロ
店長からだ。さっき一緒だったのにどうしたんだろう?何か言い忘れてたのか?それともオレ店に何か忘れ物した?
ピッ
「はいオレです。店長どうしたんすか?」
「シューラくん、君今どこにいる?」
「えっ?学校ですけど。えーと、何か忘れていきましたオレ?」
「そっかもう学校いるのかぁ……。んーとねぇ、ちょっと伝えずらいのだけど…、今からでも遅くないし…今日はもう早く帰った方がいいよ」
…は?
「どういうことですか?何?人生相談的なやつ?それとも他に何かあるんですか?」
「だから言っただろ伝えずらいって!」
「いや、だからなんで!?店長、学校行ってナンボって昼前言ってたアンタがなんで急にそんなこと言うんすか?何か事情があるんですよね?」
「んじゃもういい!なんかこっちが恥ずかしくなってきたよ…。頼れる上司が気にかけただけなのに」
「じゃあ最初からそう言ってくださいよ。別に今困ってること無いんで切りますよ」
ピッ
なんだったんだ店長?あんな電話してまで相談に乗ってやろうみたいな人じゃないのに。
「音楽室ねぇ」
店長との歩き通話を終えた先に音楽室と書かれた看板表札を見つける。
その部屋の中から音が聞こえた。
とてもいい音色だったからバレないようにそーっと頭を出して覗いてみると、そこには女の子が1人、体を少し滑らかに動かせながらピアノを弾いていた。
「えっ、誰…!?」
うっ、、バレた……。
少女は焦った様子で、演奏を止めてこちらに顔を向けた。
「あ、あの……何か用でも…」
「あぁ!いやいや何でも…」
バレては仕方がなかったのでオレは体を出して近づきながら彼女に言った。
「今の続き聞かせてくれないか?」
「え?いや、でも、私…物凄く下手だから…」
そう言うと顔を赤らめて下を向いた。
「いやそんなことないよ、すげー上手に演奏してたし。だから聞かせてくれない?あっ、てかオレ1年生だけどもしかして先輩っすか?だとしたらこの口調まずいよね」
「わ、私も1年生だから大丈夫ですけど…」
「な、なら良かった」
少し強引ながらも説得させ、彼女はピアノを弾き始めた。
ポロロ~~~ン ピロロロロ~~ン
が、先程とは違い、音楽無知なオレですら多々ミスらしきものを感じた。
見ると、彼女は歯をグッと食い縛って少し汗が出ているようだ。
え~~っとー…
「き、緊張してるのかな?」
「ひぇっ!」
彼女はビクッとすると同時に演奏を止め、少し間を置いてうずくまった。
「…私、見られてると上手く弾けなくて…。」
「あ、そうなんだ…」
「昔からこうなんです。小さい頃からコンクールに出場していて____」
あ、過去の話でもするのね笑
「誰よりも熱意があって誰よりも練習してきたはずなのに、全然成長しなくて、それに本番は恥ずかしくて上手くいかなくて……、私入賞すらしたこと一度もなくて…でもまだ続けていて…」
「そ、そうなんだ…」
目に潤いが光って泣きそうになる彼女。こういった場合、オレはどういった声を掛ければ良いのだろうか。
同情はしてやりたいのだが…。わかる人にはその辛さが痛いほど伝わるし、オレだってそういう悲しい過去が…
過去…
あれ、オレの過去って何だ?どれだ?
_______
あぁ、何を考えてんだオレは。忘れられねぇ過去があるだろ。
「まあオレから言えることは、とにかく頑張れってことだな。オレもさ、夢あんだよ。今は恥ずかしくて言えねーけど、大きい夢が。それ叶えるためにも、やっぱ頑張んなきゃいけねぇ」
オレがそう言うと、彼女は感心したかのように穏やかになる。
「凄いなぁ…ちゃんと夢があるんだね」
「君だってあるだろ?まだ諦めきれてないってのは、その音楽愛ってやつがあるからだと勝手にオレそう思ってるけど、そうじゃないのか?音楽の道に進もうとは考えないのか?」
「ふふふっ。皆が皆そうじゃないと思うよ。音楽でもスポーツでも、ただ純粋に好きでやってる人が殆どだと思うよ」
「あっ、そうなんだー…。オレってなんか無知過ぎるというかただバカというか。それじゃあ君も___」
「いや、私は結構本気で考えてるよ。でなきゃあんなにも練習してないと思う。でも私って才能ないから…、だからそろそろ辞めようと思うの。もし次のコンクールで成果がなかったら、そのつもりで」
「え…!まだ高1なのに?」
「うんいいの。才能ないし、音楽業界って物凄く狭いか正直無理。上の人には笑われて、もういいやって諦めかけていて___」
「いや、それはダメでしょ」
「え?」
「どんなに無力で、馬鹿にされて、非難されても、そんな泣きたくなるような状態で終わるなんて絶対に嫌でしょ。そんな奴らを殺すくらい憎んで、憎んで憎んで、努力して、そして見返すくらいじゃないとオレは絶対に嫌だ」
「殺すって……」
「ん?まあただの表現だよ。ごめんごめん」
無意識に発したオレの汚い言葉遣いに、彼女は引け目を感じた。
「何だったのだろうこの時間。でもありがとう。なんだか勇気出た。次、頑張ってもしダメだったらまたそのとき考えるね」
「ありがとうって言われてもオレは大したアドバイスなんかしてないぜ」
「いいの!!感謝の気持ち受け取って!!」
「お、おう…」
今日一番の大きな声にキョドった。
「じゃあオレ行くから。さよならな」
行こうとするオレに、彼女は椅子から立ち上がって後ろからオレの服を摘まみ制止させた。
「ねぇ…、いつでもいいから…また来てね…」
こんなシチュエーション人生初めてです。心が叫んでいる。とてつもない可愛さが、ギュっと胸を締め付けた。
オレは振り替えって
「いいよ、また暇なときに_____」
窓の外からピカッと光が広がるのが見えた。
「眩しっ!何だ…!?」
「え?」
次の瞬間に、それはこっちに近づいた。
ヤツは_______
"『魔獣』だ"