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D-Drive  作者: Ирвэс
新天地アウロラ編
7/14

Act6:鳥の王といざ面談

お待たせしました!A.Q.U.A.R.I.Aの執筆が漸く一段落したのでこちらの方も進めて行きたいと思います。


それではどうぞ!

ホルスの応接室に通され、面談する前の事である。コルはレキに対し、これからホルスと話すに当たっての注意事項を伝えていた。


「レキ、分かってるとは思うけどもう1度言うわよ?私達はこの国の元首であるホルス様の命を受けてアウロラ様の奪還に来たの。そんな国レヴェルで大事な物を簡単に返して貰えるとは思わないでね。後、100%無事に帰れる保障だって無い事は覚悟しておく事!良いわね?」

「……まぁ、肝には銘じとくよ」


コルの言葉を受け、レキは自身の顔に緊張が走り、背筋すら無意識に伸ばしているのを感じていた。これから自分はネオパンゲアのトップと話す事になるのだ。例えるならそれは、自分の世界でも内閣総理大臣と話す様な物。そんな機会なんて普通に生きていたら先ず有り得ないだけに、ますます迂闊な言動は出来ない。

況してや此処は日本とは法律も文化も全く違う国。何かしくじれば、処刑か牢屋行きにされても何等不思議では無いのだ。此処からが本番である事を再認識しつつ、レキは応接室のドアノブに手を掛ける。



斯くして応接室の敷居を跨いだたレキは、机越しにホルスと対峙。無論コル達5人は元より、衛兵やそれ以外の官吏のオルニス族達が複数名、衆人環視としてその場に居合わせていた。無論コル達5人は元より、衛兵やそれ以外の官吏のオルニス族達が複数名、衆人環視としてその場に居合わせていた。

先程からずっと感じてはいるし分かってもいたが、周囲を鳥に囲まれて完全にアウェーと言うこの状況は、国のトップであるホルスと対面している現状に輪を掛けてレキに強烈な緊張感を齎している。本人もそれを自覚してか、顔に脂汗が少なからず滲む。

するとホルスが口を開いて言う。


「どうした?周囲を大勢のオルニス族に囲まれた中で、ホモ・サピエンスが自分1人だけと言う状況は緊張して話しにくいかね?」

「なッ!?」


その言葉にレキは驚きを隠し切れない。見抜かれている―――。目の前の鳥の王とも言うべきこの国のトップの目は決して節穴ではない。相手を見透かす様な眼差しも然る事ながら、相応に長く生きて経験豊富な年長者のみが放てる貫禄や威風。目の前の相手には決して嘘や誤魔化しは通用しない。


「……図星か」


するとホルスは徐に懐からコルの持っているのに似たスマホ型のデヴァイスを取り出すと、足元に魔法陣を展開。コルが披露して見せたTechnical-D-Driveの力によって何と人間の姿へと変貌したではないか!

その姿は40代半ばから50の坂に手が届くか届かないかと言う年頃の男性だったが、先程から感じていた雰囲気通り、威厳や貫禄のある顔立ちで酸いも甘いも知り尽くした印象すら漂わせている。


「なッ……何の真似だよ、ですか!?」


思わずタメ語になってしまったのを訂正しながら尋ねるレキに対し、人間態となったホルスは悠然と答える。


「何、周りがオルニス族に囲まれた中では君も緊張して話し辛かろうと思ってな。だからこうやって私自ら君に姿だけでも歩み寄ろうと思ったまでだ」


その回答だけでレキはホルスがどう言う人物か一気に分かってしまった。あぁ、この男は本物の(・・・)人格者であり(・・・・・・)正真正銘の(・・・・・)名君(・・)だと――――。

こんな奴が国のトップに立つ為政者なら、そりゃコル達は元より此処にいる全員お国の為に命を投げ出す覚悟なんだろう。少なくとも器と言う点に関しては、悔しいが自分など到底勝てず足元にも及ばない。いや、自分の世界でも此処まで立派な為政者は先ず居ないだろう。それこそ、日本の政治家連中にも爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと本気で思う位だ。

ホルスが人間態になったのを見ると、コルも彼に続いて再び人間の少女の姿へと変身して見せる。


「コ…コル!?何でお前まで!?」

「フン、あんたがガチガチに緊張して話し辛そうだったから、ホルス様と同じ様に寄り添ってあげようって思っただけよ」

「それってつまり、俺の為にまたその姿になってくれたのか?」

「まぁ…否定はしないわよ……」


何処かモジモジしながらそう返すコルに対し、ホルスは笑って話し掛ける。


「ハハッ、何だ?どうやらコルは君の事を気に入った様だね!」

「なッ!?別に私はそんなんじゃありませんッ!!」


そんなホルスのボケにコルが突っ込みを入れる遣り取りに、周囲は失笑に包まれた。だがレキにとってそれは、僅かでも緊張の枷から解き放たれる福音であった。物事のリズムとは、言うなれば緊張と緩和(・・・・・)の繰り返し(・・・・・)である。最も分かり易いのが漫才のボケと突っ込みであり、それをリズムないしはテンポ良く行えるのがプロの漫才師なのだ。因みにその様式美は平安時代から存在するらしいが、この鉄板のリズムは何処の世界でも変わらないらしい。

そう思いつつ、レキは改めてホルスと向き合い言う。



「じゃあホルス様、改めて言います。こいつ等が盗んだ化石を俺の世界の博物館に返して下さい!あれが貴方達にとってどんだけ大事か知りませんが、俺にとっても人類にとっても恐竜を知る大事な手掛かりであり貴重な歴史的遺産なんですからお願いします!」


勢い良く頭を下げて懇願するレキの言葉を、ホルスは無表情のまま黙って聞いていたが直ぐに口を開いてこう返した。


「――――アドリアからの報告によると、君は今から2年前にアウロラ様を発見した際、その御声を聞いたそうだね?」


コル達5人を含む一部の者を除き、ホルスの言葉を聞いたその場のオルニス族達は早速唖然となった。表情こそ殆ど変わらないが、明らかに驚いたリアクションを取っている。


「う…嘘だろ?」

「アウロラ様のお声をお聞きした……?オルニス族でもないホモ・サピエンスが………?」


別世界の人類が自分達が主と崇める存在の声を聞き、更には土の中から掘り起こしたと言う話は、その場にいたオルニス族達にとって余りに衝撃的であった。


「アドリアがもう俺の事は報告したっ言ってましたが、本当だったんですね……」


流石に下の兵士達にはこの時点まで話していなかった様だが、他の文官や大臣の様な重役の者達は事前にホルスから聞かされていたのか、コル達と同様に驚いた様子は見せていない。大事な情報は上層部が優先的に共有し、下の者には知らされない――――組織が基本的にそう言うピラミッド構造である点は何処の世界も同じな様だ。


「だが、残念ながらまだ君の話を完全に信じる事は出来ない」

「はぁっ!?何でですか!?」

「理由は簡単だ。君の話の裏が(・・・・)未だ取れて(・・・・・)いない(・・・)からだよ」


その言葉を聞き、レキは内心「そう来るか」と思った。それはそうだ。どんなにそれらしい事を言っても、彼等から見れば自分は所詮、いきなり降って湧いて出た見ず知らずの余所者。然も異世界の別種族とあっては心証だってそれ程良くはあるまい。そんな相手から何か言われた所で「はい、そうですか」なんて信じるなんて土台無理な話だ。

自分だって例えばいきなり目の前に宇宙人が現れたとして、そいつが何者かも分からないのに言ってる事なんて信じられる訳が無い。寧ろ、敵対種族かも知れない相手となれば不快や恐怖感すら覚えて問答無用で排除しようとすらするだろう。なのに彼等はそんな宇宙人も同然の圧倒的異分子である自分の話を突っ撥ねる処か、キチンと聞いて対話すらしようとしている。

この時点でオルニス族が人間と比べ、遥かに良識的神経の持ち主である事が分かる。


「ホルス様。こちらをどうぞ」


すると突然ホルスの傍にモア型の背の高いオルニス族が歩み出て、何やらSDカードらしき物が乗った(トレー)を差し出した。身なりからして大臣クラスの要人だろう。


「少しジッとし給え」


そしてレキの額にカードを当てると、突然SDカードに描かれた白い魔法陣のラインが緑色に発光する。その状態が30秒続いた後、ホルスは額からSDカードを外してコルを呼び付ける。


「コル、これを君の魔導具(デヴァイス)に入れてくれ」

「はッ、直ちに」


コルが受け取ったSDカードをスマホ型の魔導具(デヴァイス)に嵌め込むと、突然魔導具(デヴァイス)の画面が発光。コルが魔導具(デヴァイス)を近くの壁に向けると、画面から放たれた光はまるで映画のスクリーンの如く、レキが例の化石を発掘した時の2年前の映し出したではないか!。


「えっ!?これって、2年前の俺!?」

「そうだ。先程君の額に当てたカードは君の過去の記憶(・・・・・)情報を読み(・・・・・)取り保存(・・・・)する為の物だ」


ホルスの言葉に、レキは改めてこの世界の技術力の高さに敬服した。スマホみたいな機械が出た時点でお察しなのだろうが、まさか此処まで高度な文明だったとは………。正直、この世界の鳥達を未だ頭の何処かで舐めていた自分を恥ずかしく思うと同時に、人類の立つ瀬の無さに軽い自己嫌悪をレキは覚えた。


化石を掘り起こし、後日その事でマスコミから取材を受ける場面まで映し出された後で映像が途絶えると、その場にいたオルニス族達はコル達も含めて一斉にレキの方を向いた。表情こそ余り分からなかったが、全員驚いているだろう事は何となく分かった。


「此処に来る前に先に聞いてたけど、本当だったのね……」


最初に口を開いたのはコルだった。


「まさか本当にアウロラ様の化石を掘り起こしてたなんて驚きだよ、レキ」

「然もご丁寧にアウロラ様の御声を耳にしていたなんてな……」

「あの御声、大昔のサウルス族の遺産(レガシー)に有った映像記録で聞いたけど本当だったんだね」

「何にしても、これでレキが英雄と言う線は強まったな」


真実を目の当たりにし、口々にそう感想を発するCWSのメンバー達。他の兵士や文官達は目の前の事実が信じられないのか、未だにフリーズしたまま固まって言葉も出なかった。


「……まさか君が本当にアウロラ様の御声を聞いて彼女を掘り起こしていたとはな。」


レキの言葉の裏を取る事が出来、得心の行ったホルスは静かに、それでいて真っ直ぐ鋭くレキの顔を見据えて言う。それと同時に彼の脳内には先祖の伝承(・・・・・)が脳内に蘇って来ていたのだ。



『アウロラの神は我々の住まう世界と似て非なる世界より、竜の魂を持つ英雄を連れて戻って来る。英雄の資格持つ者、神と魂を共鳴し、その御心を知るだろう』 



まさか、目の前のこの人間こそがその伝承に該当する人物だと言うのか……?

沈黙を守るホルスに対し、気を取り直したレキは更にこう付け加える。


「それだけじゃありませんよ。こっちに来る前の今朝、俺はアドリア達に盗まれた化石が何処にあるか夢で見ました。然も発掘した時と同じ声で、『私は此処にいます』って訴えて来たんですよ!」


レキがそう告げると、先に話を聞いていたコル達5人以外その場にいた全員が驚愕した。まさか、アウロラ様がテレパシーでこのホモ・サピエンスを呼んだと言うのか?だが、先程の映像を見る限り嘘とは思えない。本当にこのホモ・サピエンスこそ、我等の神が選んだ英雄なのか……?

そんな風に考えるホルス達の心境など知る由も無いレキは、改めて自身の人間界への送還と化石の返還を要求する。


「納得してくれましたか?これで分かったでしょう?あの化石が俺にとっても俺の世界の恐竜研究でもどんだけ大事か!お願いですからどうか返して下さい!そんで、俺を元の世界に帰して下さい!」


握り拳をわなわなと震わせながら、レキは自分の想いを強くホルスへとぶつけに掛かった。


「あの化石は俺の地元の福井恐竜博物館に有るべき大事な物なんです!!俺の世界の恐竜の歴史を知る、大事な手掛かりだって、博物館の人や学者の人達も皆喜んでました……勿論、俺だってその手助けが出来て嬉しかったのに………!!それを奪われたら取り返そうって思うのが人情でしょう!?」

(いや、それあんた位なモンでしょ―――?)」


依然沈黙を守るホルスに対し、赤裸々な自身の想いを打ち明けるレキ。その様子に内心呆れながら、コルは脳内でレキに突っ込みを入れていた。

するとホルスはCWSの5人に目配せをすると、徐に沈黙を破って一呼吸を置き、こう言い放つ。



「気持ちと事情は分かったが、残念ながらアウロラ様の返還は出来ない」

「そんな………!!」


聞きたくなかった返事を受け、レキの表情は失望に歪む。そう返される事は先のコルの言葉から予想してなくも無かったが、いざ告げられるとやはりショックだ。此処まで強く訴えたと言うのに、何が間違っていたのだろう?そんな風に考える彼の様子など、それこそ御構い無しと言わんばかりにホルスは続ける。


「君が見つけた化石は我々オルニス族、延いてはその祖先のサウルス族全ての《《始祖》》であるアウロラ様御本人なのだ。その捜索の為に我々は、君の世界にだいぶ前からCWSの者達を送り込み、調査込みでその所在を探っていた。そして君の世界に於いて、我々にはアウロラ様だけでなく、更に見つけなければならない物が残っている。その全てを揃え、来るべき(・・・・)運命の時(・・・・)に備えねばならない。故に、今君に返せる物など此処には無い。どれも我々には必要な物なのだ!」

「マ、マジかよ!?だいぶ前から俺の世界調査して、その上で化石捜してたなんて………!」


更にホルスの口から続けて繰り出された事実に、レキは唖然となるばかりであった。まさかアドリア達この国の特殊部隊が前々からこの世界に来てあれこれ調査し、その上であの化石を捜していたなんて……。

だが、最初に会った時からこうして言葉が通じて会話が成立している点を踏まえると、少なくとも日本語の様な言語位は調べて話せる様になっていても何も不思議では無い。


だが、今はそんな事はどうだって良い。それ以上に先程のホルスの言葉から、レキには気になる事が更に数点出て来たのだから。


「…始祖ってさっき言いましたけど、そもそもアウロラ様ってのはどう言った存在なんですか!?来るべき運命の時とか見つけなきゃならない物って何なんですか!?其処から先ず分かんねーですよ!!」

「残念ながら、今は話せない。この件については我々だけの最重要機密だ。アウロラ様を掘り起こしてくれた事には感謝するが、余所者で何の地位も持たない君にこれ以上話す事は出来ない!」


化石も返して貰えない上に大事な事まで教えて貰えないとは何と言う歯痒さだろう。余所者だから仕方無いのだろうが、隔靴掻痒とはまさしくこの事だ。そうした遣り取りの後、ホルスは告げる。


「―――何も知らずに迷い込んだ身ならば多くを知り過ぎた手前、記憶を消して送還するか市民権を与えて永住を促しただろう。だが、君がアウロラ様に選ばれし者と言うならば話は別だ。アドリア達の護衛と監視を付けた上で君を元の世界に送り返そう。話はこれで終わりだ」

「はぁ!?何の事情も教えてくんない癖に監視だけ付けて帰すなんて意味分かんねーよ!!って言うかあの化石は俺が掘り起こしたんだから俺にだって知る権利位……」

今の(・・)君ではアウロラ様は手に余る!これ以上深入りする事は許さん!!私が帰れと言っているのだから黙って帰れ!!」

「うッ………!?」


鬼気迫る表情のホルスの気迫と鋭い眼差しに気圧され、レキは一気に委縮してしまう。竜頭蛇尾とはまさしくこの事か。


「連れて行け!」

「「「「「了解しました!」」」」」

「あっ、ちょっ、待てよお前等!!離せって、未だ話は……!!」


ホルスに命じられるまま、アドリア達は暴れるレキを抑え付けたまま強引に退出。応接室の扉が大きく音を立てて閉まると、近くにいたモア型のオルニス族の大臣がホルスに尋ねる。


「ホルス様、宜しかったのですか?あの様な異世界の者を、記憶も消さずに送り返しても……」

「アドリア達が調べた情報では、あの者の世界においては同じホモ・サピエンス以外に文明を築き、言葉を操る知的種族は存在しないと言う。帰した所で誰も信じる者はいまい」


確かに、我々の地球に戻ってこの出来事を話した所で、皆夢物語だと思って信じる者はいないだろう。恐竜がいて鳥人間がいて魔法やドラゴンまで居るファンタジーの世界なんて、漫画やアニメの見過ぎかゲームのし過ぎで現実感を失くした馬鹿と思われるのが関の山。そう見通した上で下した強制送還だった。

無論、理由はそれだけでは無いのだが……。



「竹内靂……か。あのホモ・サピエンスが真にアウロラ様に選ばれし者ならば、恐らく竜聖剣の在り処も―――――」


そう呟くと、早速ホルスはスマホと思しき者を取り出し、アドリア達のアドレスに向けて次の指令文を送信する。



一方、何処とも知れぬ場所に運ばれていたアウロラの化石は、祭壇の上で静かに、それでいて煌々と神秘的な光を放っていた――――。


後2話で新天地アウロラ編は終わりかな?

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