Act4:目覚めし竜の遺伝子
お待たせしました最新話です!初めてのバトル要素も入ってます!
その後、レキを連れたオルニス族の一行は一路、自分達の国の首都・ネオプテロスを目指して歩いていた。
「なぁ、ネオプテリクスには後どれ位で着くんだよ?」
アドリアは答える。
「お前のペースに合わせて歩いていたら、後30分は掛かるだろうな。飛べば10分足らずで着くだろうが」
「そうかい。そりゃ悪い事訊いたな……」
どうやらまだまだ時間が掛かるらしい。取り敢えずそれ位距離が有ると言う事だけは分かったが、それ以上にレキは人間の姿になったコルが気になるのか、時々視線を向ける。
「何よ、さっきから私の事チラ見して?私がホモ・サピエンスになったのがそんなに可笑しい?」
「いや、別にそう言う訳じゃないんだが、まさかこの世界にそんな魔法なんて力が有るなんて思わなかったからさ……」
此処で話は十数分前に遡る。突然スマホ型のデヴァイスを取り出して操作したコルは足元に魔法陣を展開させ、その影響により自らをレキと同じホモ・サピエンス、即ち人間の姿になったのである。
突然カラスの鳥人から人間の少女の姿になったコルの姿に、レキは唖然となるばかりであった。
「嘘だろ……カラスが人間になるなんて有り得ねぇよ………!」
すると人間態になったコルがレキに言う。
「驚いた?これは『D-Drive』って言って、自分のDNAを操作する事で別な生物へと変身する魔法式を展開する《《魔導技術》》よ」
「でぃ、でぃーどらいぶ?つーか魔法!?この世界には恐竜だけじゃなく、魔法なんてモンまで存在すんのかよ!?」
異世界に連れて来られ、絶滅した非鳥類型恐竜の生きた姿をその目で見る――――これだけでも驚天動地の極みだと言うのに、更に魔法らしき物まで見せ付けられるとは………。
「そうね。存在するって言ったらするわ。機会が有ったらもっとちゃんとしたの見せてあげるわよ。だけど、取り敢えずあんたに寄り添う意味で同じくホモ・サピエンスになってあげたんだから良いでしょ?さっ、分かったらさっさとネオプテリクスに行くわよ?」
「お、おう……」
兎にも角にも一生分驚かされた感じだが、まぁ異世界なんだから何でも有りだろう――――その時は自分にそう言い聞かせつつ、改めてアドリア達と共に目的の街へと向かう事となった訳である。
とは言え、やはりレキは気になって仕方が無かったのだ。この世界に生きる恐竜についてもそうだが、魔法と呼ばれる力についても、それ以前に彼等がどうやって自身の世界に来たのかも―――――。
そして現在、ネオプテリクスへと向かう道中でレキは改めてコルにD-Driveなる力について尋ねた。
「さっきお前、遺伝子操る魔導技術がどーたらこーたら言ってたが、お前等のこの世界には哺乳類も俺みたいな人類もいないんだろ?なのに良くそれでそんな人間の姿になれたな?」
コルは答える。
「それはサンプルになる遺伝子を向こうで収集したからよ」
「は?遺伝子を収集した?」
それはつまり、レキの世界で人間の遺伝子を採取したと言う事なのだろうか?するとコルの代わりにラククが代弁して説明する。
「コルの趣味はね、生き物の遺伝子集めなんだよ。そしてそうやって集めた遺伝子のデータをさっきの魔導具に読み込ませる事で、D-Drive出来る生物のレパートリーを増やしてるんだ」
「カラスが物集めるのが趣味なのはこっちの世界でも一緒なのは分かったが、それにしても変身の為の遺伝子集めなんざ予想の斜め上行き過ぎだろ……」
ラククの説明の前に、レキは呆れるばかりであった。だが言われて見れば最初に出会った時、コルは“あの世界の生命体の遺伝子集めの一環”だのと宣っていた。あれは要するにこの変身魔法に必要な触媒集めと言った所か。
カラスが収集癖の有る鳥である事は人間界でも有名な話だが、それにしても光り物やゴミでは無く生き物の遺伝子集めとは妙な方向に偏差値が高い。
だが、それにしても変身の為に使うのがスマホと言うのは魔法足り得る説得力が不十分で、どちらかと言えば科学と呼ぶべき技術では無いのだろうか?一瞬そう思ったが、其処はクラーク三原則に在る『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』と言う第三法則の下、敢えて追求しない事にした。
「……取り敢えずお前が人間の遺伝子を俺の世界で手に入れたから、そのお陰で今の姿になれたのは分かった。けど、人間の遺伝子なんてどっから手に入れたんだよ?」
至極真っ当な質問をレキが放つと、コルは間髪入れずにレキを指差した。
「え?何?まさか……俺!?」
信じられないが、コルが人間に変身出来る様になったのはレキのお陰だと言うのだろうか?
「てっ、てめぇ何時の間に俺から遺伝子の採取を……ってまさかあの時かよ!?」
「ピンポーン♪あんたを気絶させた時、あんたの髪の毛の細胞から採取させて貰ったの!」
得意気になってコルは続ける。
「それで、ホモ・サピエンスって言う動物のDNAを読み込んだ後にデヴァイスで瞬時に解析してライブラリに登録、後は私達それぞれに合う様にパーソナライズすれば誰でもあんたと同じホモ・サピエンスになれる訳♪」
何と言う事だろう。コルが人間の女の子に変身出来る様になった切っ掛けが、まさか自分自身に在ったとは……。これまでは元より、この先の人生の中で後にも先にもこれ以上無い程に自身が複雑な気持ちになっている事を、レキはこの時実感していた。
「勝手に俺の身体に何してくれてんだこの糞ガラス!?」と罵倒してやりたい所だが、別に自身が何も不利益を被った訳では無いのでグッと堪えて深呼吸する。
「魔法なんて言われたって俺の世界には存在しねぇから良く分からねぇが、お前等の文明がそれなりに発達してるって事だけは認めてやるよ。つーかスマホで変身なんざ大した魔法だな!」
半ば皮肉を込めてそう言い捨てるレキだが、対するコルは真顔で意味深な回答をする。
「残念だけど、D-Driveの真骨頂は其処じゃないわよ。これはあくまでも魔導具を使ってする“Technical-D-Drive”。本物のD-Driveは別に存在するわ」
「本物だと?お前等、スマホ使わねぇで変身出来る魔法とやらでも持ってんのか?」
懐疑的な眼差しでレキがそうコルに尋ねた時、不意に先程まで歩いていた5人の足がピタリと止まる。
「おい、どうしたんだよお前等?急に止まったりして…」
「レキ、お前は先に行け―――!!」
レキの問い掛けに対して険しい面持ちでアドリアがそう返すと、突然背後から聞き慣れない鳴き声が響き渡る。
「ギャオオォォ―――――――――――――――――――――――ンンンン!!!!!」
何事かと思って振り返ると、一行の背後から巨大な影が遠くから迫って来るのが見える。それは何と、RPGで良く目にする巨大な青緑色のドラゴン其の物であった。体高にして2階建ての一軒家位は有ろうかと言う巨体を揺らして向かって来ており、それにつられて大地も揺れ始めていた。
「ななな、何じゃありゃあ!?ドラゴン!?」
鳥人、恐竜、魔法と来て今度はドラゴン――――この1時間余りで異世界の洗礼を散々受けた手前、今更驚きはしなかったがまさか此処に来てRPGのモンスターの花形をお目に掛ける事になろうとは………。
「あれも一応翼竜類や鳥盤類、そして私達竜盤類と一緒に爬虫類から派生した種よ。D結晶によって誕生した超生物―――――――幻獣の一種で私達は超竜類って呼んでるわ!」
「幻獣!?ってか超竜類!!?」
聞いた事も無い生物の分類を聞かされて目が点になるレキだが、あんな化け物に襲われたら一溜りも無い。
「レキ!アドリアの言う通り君は先に行くんだ!」
「あいつはオイラ達が倒すから、この道を真っ直ぐ行きなよ!直ぐに追い付くからさ!!」
「け、けどよ……」
フェサとレグランから催促されるも、5人の事が心配なレキは二の足を踏んで自分が逃げ出すのを躊躇っていた。
「良いからさっさと来なさい!」
其処へ何時の間にか元のカラスの鳥人に戻ったコルが腕を掴み、そのままレキを遠くまで連れて行く。
「おっ、おいコル!?」
やがて直ぐ目と鼻の先までドラゴンが迫って来た時、アドリアとレグラン、フェサとラククは臨戦態勢に入っていた。
「大丈夫かよあいつ等……?」
ネオプテリクスに着くまで身の安全を保障してはくれるそうだが、いざ危険に遭遇するとなるとやはり心配になって来る。ましてやあんな巨大なドラゴンが相手では猶更だ。
激しい殺気を纏いながら追い付いて来たドラゴンは、アドリア達4人を前に咆哮を上げると、口から青い光線を吐いて攻撃して来る。
咄嗟に避ける4人だが光線の威力は凄まじく、着弾した箇所から大爆発が起こった。
「何て破壊力なんだよ、あの光線……!!」
その光景を前に、レキは改めて戦慄と恐怖を覚えた。最初にコル達鳥人と言う人ならざる存在を目の当たりにした際、同様の恐怖が無かったと言えば嘘になるが、それでも言葉が通じる分未だ平和裏に事が運んで命までは取られない確証が有った。
だが、目の前で今4人が戦っているのはまさにそう言う話し合いも何も通用せず、出会ったら最後、話し合いの余地も無く一方的に自身に死を齎す存在。言うなれば自然災害や猛獣の延長とでも言うべき、絶対的恐怖のそれだ。
光線が避けられるや否や、ドラゴンは再び咆哮を上げながら今度は巨大な爪の付いた腕を乱暴に振り回す。これも4人は咄嗟に避けるが、逃げ回ってばかりでは撃退する事は出来ない。あんな化け物を一体、どうやって退けると言うのか?
「―――――良い機会ね」
「えっ?」
状況的にどう考えてもピンチでしかないと言うのに、それをチャンスと好意的に捉えるコルの発言にレキは困惑する。
「良い機会ってお前、どう言う事だよ?」
心配そうに尋ねるレキに対し、コルはフッと笑って答える。
「レキ、あんたに見せてあげられるからよ――――D-Driveの本領をね!」
そう言うと同時に、突然コルの肉体から紫色のオーラが発せられた。コルだけではなく、先程からドラゴンを相手取っているアドリア、フェサ、ラクク、そしてレグランの4人もそれぞれ黄色、緑、青、赤のオーラを放つ。
するとどうだろう。5人の身体は個体差はある物の、見る見る内に大きく膨張。鋭い爪と牙、太い尻尾を生やし、或る者は羽毛が抜ける代わりに全身が分厚い鱗に覆われて行くではないか!
やがてオーラを発し終えた時、5人はさながら恐竜と人間の中間と言うべき姿へと変貌していた。因みにコルはトロオドン、アドリアはディノニクス、フェサはディロフォサウルス、ラククはメガラプトル、そしてレグランはティラノサウルスである。
「おっ、おぉぉぉっ………!!」
余りに信じ難い光景だが、目に映る5人の様子をレキは恐ろしいと思う一方で凄まじいワクワク感を覚えていた。全身60兆個の細胞が一斉に粟立つ気分だ。
「さぁ、行くわよッ!!」
「皆、反撃開始だ!!」
「OK!」
「任せろ!!」
「一瞬で片付けてやる!!」
恐竜人と化した5人は力強く大地を蹴り、勢い良く目の前のドラゴンへと突撃。無論ドラゴンも負けじと口から光線を放ち、太くて長大な尻尾と巨大な爪を振るい応戦するが、5人は持ち前の機動力で攪乱。
先陣を切って突っ込んで行くアドリアが鋭い爪でドラゴンの腹部を思いっ切り切り裂いたかと思えば、背後に回り込んでいたレグランが鋭い牙と顎で分厚い装甲に覆われた右肩を噛み千切る。フェサも一緒に左側面から首に噛み付いて離さない。
「ギャアアァァァァァ―――――――――――――――――――ッッッ!!!!」
だが、ダメージを受けつつもドラゴンは倒れる気配を見せず、尚も雄叫びを上げながら身体を激しく揺らしてレグランとフェサを振り払う。すると其処へ間髪入れずにラククがジャンプしながら顔面に尻尾攻撃を叩き付ける。そして怯んだ所へ今度はコルが猛スピードで背後から弾丸の如き飛び蹴りを喰らわせた為、ドラゴンはそのまま前のめりにノックダウン!
一方、この様子を眺めていたレキは、先程からの5人の戦いぶりに感心していた。恐竜人になって身体能力及びそれに裏打ちされた戦闘能力、取り分け攻撃力が格段に跳ね上がったと言うのも有るが、開戦の時点から既に5人が5人とも非常に洗練された無駄の無い動きをしていたからである。彼等の内情は知らないが、あそこまでの動きは一朝一夕で出来る様になる物では無く、弛まぬ訓練が無ければ成立し得ない物だ。「身の安全を保障してくれる」と言う先の言葉に偽りが無い事を確信すると同時に、彼等が決して只の化石泥棒では無いと言う事を、レキは改めて実感していた。
「良し、レグラン!思いっ切り噛み砕いちゃって!」
そんな中でコルがそう叫んだ次の瞬間、レグランの身体に再び大きな変化が起こった。
「分かった。ハアァァァ―――――――――――ッ!!!」
一段と強いオーラに包まれたレグランは、次の瞬間身体が更に膨張。何と本物のティラノサウルスへと変貌したではないか!
蛇足だが、来ていた服は量子となって消滅していた。
「ティッ、ティラノサウルスだ!凄ぇ!!本物の生きたティラノサウルスだ!!」
それは恐竜好きにとって永遠のスーパースターと言うべき最強の獣脚類。体長約11~13m、頭蓋骨だけでも約1.5mと小学校高学年並みに大きく、体重も凡そ約6~9t。最大30cmにもなる鋭い牙を口に生やし、その顎の力は最大8t!地球46億年の歴史において、これ程の咬合力を有した生物はこのティラノサウルスを除いて後にも先にも存在しない。
そんなティラノサウルスの登場を前に、レキは人生でもう2度と無いであろう最大級の興奮と感動を覚えていた。同時に先程から抱いていたドラゴンへの恐怖も、完全に脳内から消滅していたのである。
子供の様に目を輝かせるレキの目の前で、巨大なティラノサウルスへと化したレグランは素早くドラゴンの背後に回り込むと、首筋目掛けて勢い良く噛み付く。そしてその強靭な顎に全体重を掛けると、一気にドラゴンの頸椎を破壊、断末魔と共に絶命へと追い遣った。
「ターゲットの絶命を確認。掃討…完了!」
アドリアが号令を出すと、5人は元の鳥人の姿に戻った。因みにレグランも完全な恐竜の姿から元の姿に戻る際、衣服が元通りになっている。これも魔法とやらのお陰なのだろうか?
だが、今のレキにとってそんな事はどうでも良かった。
「お前等、凄過ぎ!恐竜になるなんざ大した力持ってるじゃねーか!」
目を輝かせながらレキは5人に労いの言葉を投げ掛ける。これに対してコルは言う。
「今のがD-Driveの真骨頂よ。」
「何?あれが真骨頂だと?」
首を傾げるレキに対して5人は説明する。最初に口を開いたのはアドリアとフェサだ。
「如何にも。この技術は元来、我々オルニス族が自身の内に眠る竜の力を呼び覚ます為の物だったのだ」
「竜の力を呼び覚ました時、俺達はそれぞれの遺伝子に強く残る竜因子を活性化させてご先祖様―――つまりサウルス族へと先祖返り出来る。けど、この力は肉体に相当な負荷が掛かるのさ。誰でも自由に竜化出来る訳じゃ無いんだよ」
2人の説明を受け、更にラククとレグランが補足する。
「最初はコルが使ってたみたいな魔導具を使って呼び覚ます事で竜化するけど、中には生まれながらに竜化出来る者もいるよ。まぁどっちにしろ、熟練度が上がれば魔導具無しで誰だって任意に竜化出来る様になるけどね」
「それで、任意に竜化出来る様になって肉体を鍛錬すれば、さっきオイラがやって見せた様に完全竜化も可能になるって訳さ!」
5人の説明を受け、レキは漸く納得した。
「あー成る程な。って事はあれか?お前等全員、その気になればさっきのレグランみたく恐竜人間から完全な恐竜の姿になる事も出来るって訳か?そんだけの鍛錬をお前等は積んで来たって事か?」
満場一致で5人が頷くのを見て、レキは完全に得心が行く。本当にこの5人はただの化石泥棒と言う訳ではなさそうだ。そもそもネオプテリクスのホルスなる人物の意を受け、“アウロラ様”を奪還しにレキの世界へ潜入して来る位なのだから、相応の実力を持ったエージェントなのは間違い無い。それこそこちらの世界で言うSASやスペツナズの様な特殊部隊並みの精鋭なのだろう。博物館で入り口が破壊された形跡も、恐らくはD-Driveで竜化して破壊して出来た物に違いない。差し詰めレグランが壊したのではなかろうか?
何にせよ、先程の彼等の竜化に関しても、繰り返し言うが鳥は現代の獣脚類。即ち鳥もまた恐竜其の物なのだ。となれば非鳥類型恐竜で直接の繋がりは無くても、同じ獣脚類に変化する異能を彼等が持っていても何も可笑しくはないだろう。魔法らしき物が存在する世界である点も、その説得力を強めている。
取り分け、レグランのティラノサウルスやコルのトロオドンと言う竜化にはレキも納得していた。前者はニワトリが遺伝子的にティラノサウルスの親戚と言っても良い存在だから。そして後者はカラスが賢い鳥で、トロオドンも同じく“最も頭が良いとされる恐竜”だから納得と言う訳である。
「分かったよ。っつっても未だ色々と分かんねぇ事が多過ぎるが、この続きはお前等の街で聞かせて貰うぜ」
「じゃあもう一気に行っちゃう?私達もえっちらおっちら歩くの面倒臭いし」
そう言ってコルは再びD-Driveを発動し、2mもの大きさのトロオドンへと完全竜化したではないか。
「ホラ、乗りなさいよ!」
「えっ?って、うおあっ!?」
「振り落とされない様に気を付けなさい」
そしてそのままレキを背中に乗せると、一呼吸してから一気に走り出す。
「おぉっ!速ぇ!この方が断然早いじゃねぇか!」
「周り見て見なさいよ」
「?」
コルに促されてレキが周囲を見渡すと、アドリアとフェサが空を飛んで飛翔。レグランとラククも再度竜化しながら大地を疾駆する。
「全く、最初からこうやって行けば良かったんじゃないのか?」
空を飛びながらアドリアが話し掛けて来ると、コルが返す。
「やろうと思ってたけど、其処へあのドラゴンが襲って来たんでしょ?まっ、こいつに私達の力を披露出来て結果オーライだから良いじゃん?」
「何だよ。あのドラゴンが出なくてもどの道披露してたのか…けど確かにさっきのシチュのお陰でより強く印象に残ったのは間違い無いな」
コルの回答に対してそう零すレキの視界には、同じ様に群れで走るオルニトミムスや悠然と歩くステゴサウルスにイグアノドン等、多くの恐竜達が飛び込んで来た。やっぱりこの世界は面白そうだなと、来たばかりでありながらレキはそう考える様になっていた。
何と無く空を見上げると、其処には翼竜達に交じってコル達と同じ様な鳥人達が空を飛んでいるのが見受けられた。するとコルが言う。
「ほらレキ、もう直ぐ其処にネオプテリクスが見えて来たわよ!」
「へぇ、あの街が―――――」
コルに促されてレキが前を向くと、遠くにニューヨークか東京都心の様なメガロポリスを思わせる巨大な街が見える。どうやらあれがネオプテリクスらしい。
向こうで上手い事話を付ければ、きっと化石と共に元の世界に返して貰える。そんな期待を抱きながらも、レキは真剣な眼差しでこれから自身が向かう街をコルの背中から遠く眺めていた。
だが、レキはまだ知らない。2つの世界を股に掛け、運命の歯車がこれから大きく回ろうとしている事を―――――。
と言う訳でD-Driveタイトル回収となりました。最初のDにはそのまま「Dinosaur(恐竜)」と言う意味が有りますが、Dの単語の解釈によっては違う意味にもなって来るでしょう。ともあれ、次からはいよいよ物語が動き出します!