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追放された錬金術士の子育てアトリエ生活 ~パパは可愛い双子の娘たちを甘やかしたい~  作者: 上村夏樹
第1章 追放されたけど、双子のホムンクルスと幸せに暮らすので問題ない
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第2話 可愛い双子のホムンクルスのパパになりました

 あらためて双子のホムンクルスを見る。


 一人は金髪でクセ毛の強い碧眼の少女で、もう一人は銀髪ロングの灼眼の少女だ。二人とも身長は低めで、歳は10歳にも満たないと思う。


「君たちはホムンクルス……でいいんだよね?」


 俺が話しかけると、金髪少女がこくりとうなずく。


「そだよ。あたしたちは双子のホムンクルス。あたしが姉で、この子が妹なの」

「しゃべれるんだ……!」


 素晴らしい……コミュニケーション能力だけでなく、知能もある。過去に読んだ文献のとおりだ。

 ひょっとして、俺ってとんでもないことをしちゃったのでは?


「もしかして、あなたがあたしたちのパパ?」

「へっ? パ、パパ?」

「うん。あたしたちの生みの親なんでしょ?」


 まぁたしかに生みの親だけど、パパとはちょっと違う気がする。

 でも……なんかいいな、こういうの。

 こうやって無邪気な子どもと話していると、寂しさが紛れる。


 和んでいると、金髪少女がニコッと笑う。


「えへへ。優しそうなパパでうれしいな」

「あ、うん。まぁパパっていうか、俺は錬金術士で……」

「これから毎日あそぼうね! パパ、だーいすきっ」


 ズキューン!


 可愛い笑顔にハートが撃ち抜かれた。


 なんだ、この尊い気持ちは。娘を持つ父親ってこんな気持ちで満たされているのか? なんだそれ最高じゃないか。


「パパ。生んでくれてありがとう」


 続いて銀髪の少女が礼を言った。

 この子は金髪の少女と比べて、表情の変化が少ない。声も抑揚がなく、落ち着いている。


「どういたしまして。そういえば、君たちは名前があるの?」

「ない。だから、パパに私たちの名前つけてほしい」

「名前か……」


 こんなに可愛らしい少女たちなんだ。

 彼女たちに相応しい名前をつけてあげなきゃ。


「それじゃあ、金髪の君はエヴァ、銀髪の君はノラだ。どうかな?」


 名づけると、ノラは自分の名前を何度も愛おしそうにつぶやいた。


「ノラ……ノラ……パパから貰った大切な名前。大事にする」

「あはは。気に入ってもらえて何よりだよ」

「……ふふっ。パパとお話していると、お胸がぽかぽかする。パパ、だいすき」


 ズキュン! ズキューン!


 再びハートが撃ち抜かれた。


 こっ、この子も可愛い……おもわずぎゅっと抱きしめたくなるような、素朴な可愛さがある。


 俺決めた。この子たちのパパになるわ。


 ノラの微笑みに萌え落とされていると、エヴァがぷくーっと頬をふくらませた。


「あー! ずるいよ、ノラ! あたしのほうがパパ好きだもん!」

「何言ってるの。私のほうが、パパ好き」

「だーめー! あたしのほうがお姉ちゃんなんだからね!」

「それ関係ない。こういうのは気持ちの問題」

「なにさぁー!」

「なにおう」


 きゃんきゃん喚くエヴァと、冷静に切り返すノラ。

 なんとなく、二人の性格と関係性が見えた気がする。


「ノラのあほ! パパはあたしのものなんだからねっ!」


 むぎゅ。

 エヴァは俺の右腕に抱きついた。


「エヴァずるい。パパは私のもの」


 むぎゅっ。

 今度はノラが俺の左腕に抱きついた。


「あぁー! 離れてよ、ノラ!」

「エヴァが離れて。そこ邪魔」


 二人は睨み合い、どちらがよりパパのことが好きかで揉め始めた。

 いい……可愛い娘たちに慕われるパパとかいうジョブ、幸せすぎる。


 勇者パーティー追放されて本当によかった。ありがとな、スリラ! おかげさまで、俺はパパになったよ!


 だが、いつまでもケンカさせておくわけにはいかない。

 俺はケンカの仲裁に入った。


「エヴァ、ノラ。二人とも、ありがとな。俺も二人のこと大好きだよ」

「ねぇ! パパはあたしとノラ、どっちが好き!?」

「どっちも好きすぎて決められないよ。だから……二人にはずっとパパのそばにいてほしいな。それがパパの幸せだよ」

「パパ……うん、わかった! ノラ、仲直りしよ?」

「うん。パパのためなら仕方ない」


 二人は笑顔で仲直りした。


 なるほど。ノラよりも幼そうに見えるエヴァだが、やっぱりお姉ちゃんなんだな。見た目よりも、ずっとしっかり者だ。


 姉妹のやり取りを微笑ましく見ていると、アトリエの扉がガチャっと開いた。


 家に入ってきたのは近所に住む古い友人だった。名前をマルコという。俺の数少ない知り合いの一人だ。


「おーい、フリック! お前帰ってきたんだって? だったら、俺んとこに顔出しに……」


 マルコは俺を見て固まった。


「マルコ! ひさしぶりだな。どうした? 感動の再会で感極まっちゃったか?」

「いや……何してんのお前」


 マルコに指摘されてハッとする。


 しっ……しまったぁぁぁぁ!


 裸の幼女二人を侍らせているこの状況!

 絶対に勘違いされてるよねぇぇぇ!?


「待ってくれ、マルコ! これには深い理由があって……」

「あ、うん。いいよ、言わなくても……今は多様性を尊重する時代だ。お前の性癖がアレでも俺はお前を受け入れるよ」

「違うよ!? 俺はロリコンじゃない! この子たちは娘で、俺はパパだ!」

「パパ……お前、まさかその子たちを金で一晩買ったのか!?」

「パパ活みたいに言わないでくんない!?」


 ド変態ロリコン鬼畜パパ野郎だと思われたかもしれない。死にたい。


「かばいきれないな……じゃあ俺帰るわ!」

「待て、マルコ! 話を聞いてくれ――」


 ばたん。

 マルコはドアを閉めて出ていった。


「ううっ……なんで帰国初日にこんなことに……」

「パパ泣いてるの? 元気だして!」

「ふぁいと、おー」


 俺が泣いていると、エヴァとノラが頭をなでなでしてくれた。


「ありがとね……ぐすん」


 こうして俺の幸せなアトリエ生活はスタートした。


 ……近所に「変態になったフリックが勇者パーティーを追放されて帰ってきた」と誤報が広まったのは、また別のお話。

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