ランプの精霊「なんでも願いを叶えてやろう」俺「ムニャムニャ……それじゃあ今年のバレンタインデーは義理チョコ禁止で……」
チュン……チュン……(鳥の鳴き声)
俺「フワァーッ! よく寝たっつーの! 憂鬱な月曜日でも元気いっぱいだぜーッ!」チラッ
目覚まし時計『8時10分ですぜ』
俺「ウヒャーッ!?」(目飛びだしーッ!)
俺「な、なんてこったッ! お前なんで起こしてくれないんだよーッ!?」
目覚まし時計『そ、そう言われても……土日は昼まで休みたいからってアラーム設定を切ったのはあなたデス』
俺「うるせーッ!?」(チョップーッ!)
目覚まし時計「ぐえーっ!?」
俺「ち、ちくしょーッ! さっさと着替えないと遅刻するーッ!?」(脱衣スッポンポーン!)
俺「制服制服ーッ!」だだっ!
足ひっかけッ!
俺「グェーッ!?」ズテーンッ!
俺「いてて……く、くっそトホホ……いったい誰だ、床にランプなんて置いたのは……」
俺はランプを手にとってしげしげと眺めた。
このランプは冒険家をしている父が送ってきたもので、所有者の願いをひとつだけ叶えてくれるという。
しかし、ランプの精が現れるのは必ず主人が寝ぼけ眼のときで、たいていしょうもないお願いに使われてしまうという性格の悪いマジックアイテムという話だった。
俺「まっ……所詮はウワサだけどな。って、こんなことしてる場合じゃない! 着替え着替えーッ!」
そのときの俺は慌てていて、階段を上がってくる足音に気がつかなかった。
バターンッ!(扉あけーッ!?)
幼馴染「コラーッ! いつまで寝てるのーッ! って……」
俺「あっ……」(すっぽんぽーん! 丸だしーッ!)
幼馴染「い、いやーッ!? あんでおちんちん丸出しなのよーッ!」(100トンハンマーッ!)
俺「ふ、不可抗力だーッ!? グェーッ!?」(死亡)
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俺「トホホ……朝から致命傷受けたっつーの……」(コブすりすり)
幼馴染「あ、あんたがこんな時間にまだ着替えてないのが悪いんでしょ? 起こしにきてあげたんだから感謝しなさいよね ふんっ」ツーン
俺(く、クソーッ! このアマーッ!)ぐぬぬーっ!
この女の子は幼馴染み。幼稚園のころから家族ぐるみのお付き合いをしているおとなりさんのポニテJKだ。
昔は「俺くんとけっこんすりゅ!」などと可愛いことを言ってたものだが、思春期になってからはこの通り、すっかりツンツンになってしまったのだ。
俺「トホホ……昔の幼馴染を返してくれよ……」
幼馴染「ん? なんか言った?」
俺「いや、別に……ん?」
道の先のほうを見ると、女子高生が男子高校生にキレイに包装された小さな箱を渡そうとしてるところだった。
女「はい、バレンタインデーチョコ。言っておくけど義理だからね!」
男「そんなこと言って、どうせ本命の照れ隠しなんだろ?フフッ」
俺「ち、チクショーッ!? そういえば今日はバレンタインデーかーッ!? 道の真ん中でイチャツキやがってムカつくーッ!?」
女「ば、バレンタインデー? あ、あぁ、そういえばそうだったわね」あせあせ
俺「? なんでそんな焦ってるんだ?」
女「べ、べ、別に!? ま、まぁバレンタインデーなんて、チョコくれるような女の子がいないあんたには全く関係のない行事よね!」
俺「な、なんだとーッ!? なめんじゃねーっ! 俺だってなーッ! チョコくれる女の子くらいなーッ!?」
幼馴染「えっ!? い、いるのッ!?」アセアセーッ!
俺「……いません」
幼馴染「な、なんだそっかーッ」ホッー!
俺「こ、このやろーッ!? なんでうれしそうな顔してるんだーッ!?」
幼馴染「し、してないわよ、別にそんな顔!」
パァーンッ!
そのとき先ほどの男女の間から破裂音が聞こえてきた。
「わーっ!? なにーッ!?」「チョコレートが爆発した!?」
俺「な、なんだぁ!?」
幼馴染「ほらっ、そんなことより急がないと遅刻するよ?」
俺「お、おうそうだった!」だだーっ!
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学校
教室「ワーワーッ! バレンタインデーワーワーッ!」
俺「チェッ! バレンタインデーだからってギャーギャー騒ぎやがって!」
ギャル「オラッ本命チョコレートやるよ! ホワイトデーには1000倍返しな! ニンテンドースイッチとゼルダの伝説買ってこいよ!」
いじめられっこ「ちょ、ちょっと! これどう見てもかじりかけのチロルチョコじゃないか!」
ギャル「なんか文句あっかオラーッ!?」
いじめられっこ「ヒエーッ!?」
俺(ひ、卑劣ッ!)
ギャル「いいから受けとれオラーッ!」
パァン!
ギャル「な、なんだーッ!? チョコが破裂したーッ!?」
いじめられっこ「や、やった! これでホワイトデーにお返しをする義理はないね!」
ギャル「ぐ、ぐぬぬー!」
俺「い、いったい何がおこったんだーッ!?」
女子「金持ちくん! はいバレンタインデーチョコ!」スッ
金持ち「ハッハッハ! ホワイトデーには期待してくれたまえ!」
パァーン!
女子B「オラァーッ本命チョコ!」(本当は失敗したチョコの残飯処理だけどな!)
男子B「わーい! ありがとう!」
パァーンッ!
教室ではあちこちでチョコが破裂し、阿鼻叫喚の大混乱状態だった。
俺「い、いったいなにが……」
???「フッフッフ!」
俺「! だ、誰だ俺の肩付近で笑うのは!?」クルリ
ランプの精「わたしだよ!」
底には露出度の高い、肩とおへそ丸出しのアラビアンな衣装を身にまとったポニーテールの貧乳妖精の女の子がいた。
俺「ど、どわーッ!? だ、誰だお前ーッ!?」
ランプの精「フッフッフーッ! かくかくしかじかで、お前が寝言で言った願いを叶えてやったランプの精が私だーッ!」
俺「な、なんだとーッ!? お前ーッ!」手を振りかぶりーッ!
ランプの精「おっ!? 怒った怒った!? 願いを叶えてやったのにキレるんじゃねーよワハハーッ! あっ?」
なでりこなでりこ
俺「よくやったぞーッ! お前は最高のランプの精だっつーのーッ! ありがとなーッ!」
ランプの精「!」(赤面ーッ!)
ランプの精「な、なんだよ……人間をおちょくるのが好きで、寝ている間の夢を叶えてやってるっていうのに、感謝なんかされたら、て、照れるじゃねぇか……でもまぁ、たまには素直に感謝されるのもいいかもな……へへ……」てれてれ
幼馴染「誰と話してるの?」
俺「おう幼馴染! こいつは俺の親父が送ってきたランプの精霊なんだ!」
幼馴染「ランプの精霊? ……誰もいないけど……」ジト目~
俺「えっ!? 何を言ってるんだ? ここにちゃんといるだろ?」
ランプの精「フフフ……無駄無駄。あたしの姿は所有者のお前にしか見えてないのさ」
俺「な、なんだそうだったのか」
幼馴染「どうしたの? バレンタインデーの毒気にあてられて頭おかしくなっちゃった? かわいそうに……」
俺「う、うるせーッ! というか、お前は何をしにきたんだよーッ!? バレンタインデーで意気消沈してる俺をあざ笑いに来たのかーッ!?」
幼馴染「そ、それは……そのう……」モジモジ
俺「?」
幼馴染「はいこれ。バレンタインデーのチョコ」スッ
俺「! お、幼馴染、これは!?」
幼馴染「か、勘違いしないでよね! あんたがバレンタインデーの精神ダメージで後日脱け殻みたいになっているのを世話するのが面倒臭いだけなんだからね! 義理よ義理!」つーん!
俺「義理でもうれしいっつーのーッ! ありがとな幼馴染ーッ!」ニコーッ
幼馴染「ま、まぁ、そんなに喜んでもらえると……こっちも多少はうれしいわね」てれてれ
俺「じゃあ早速いただきま……はっ!」
ランプの精「いっておくが『義理チョコ禁止』のルールはお前にも適用されるからな」ニヤニヤ
俺「お、幼馴染、ダメだ! このチョコは受け取れない!」
幼馴染「はぁ? なに言ってるのよ。私のチョコが受け取れないっていうの?」
俺「そうじゃなくて、ば、爆発、爆発するんだー!」
幼馴染「何わけわかんないこと言ってるのよ! オラーッ! 受けとれー!」グィイッ
俺「ウヒャーッ!? ……あ、あれ? 爆発しない?」
ランプの精「ほほう……これはこれは……」
幼馴染「ちょ、ちょっと形は不恰好かもしれないけど、ちゃんと味見はしたから……つべこべ言わずに食べてよね……」
俺「わ、分かった」
幼馴染「ひ、昼休みまでに食べないとダメだからね!」
俺「? あ、あぁ」
クラスメイト「ヒューヒュー! 幼馴染が俺にチョコあげてるぜーッ! イッチャラブーッ!」
幼馴染「なっ!」カァ~(赤面)
幼馴染「ち、ちがっ……こ、これは義理チョコ! 義理なの!」ダッ(疾走)
幼馴染「勘違いしないでよねーッ!」タタターッ!
俺「な、なんだったんだ……やけに慌ててたけど……」
ランプの精「フフフ……女の子には色々事情があるのさ」
俺「知ったような口を聞きやがって……ところでなんで幼馴染みのチョコは爆発しないんだ? 俺にも義理チョコ禁止のルールは適用されるんじゃなかったのか?」
ランプの精「さーてね。食べてみたら分かるんじゃないか?」ニヤニヤ
俺「まぁ、昼休みまでに食べろって言われたから食べるけど……おや? 手紙が入っている」
手紙『今日のお昼休み、校舎の裏に来て』
俺「幼馴染が書いたのか? それにしても呼び出しくらい口で言えばいいのに、いったい何の用だろう?」
ランプの精「ニヤニヤニヤ」
俺「なんだよさっきからにやにやしやがって……」
ランプの精「ぶぇーつにー?」
その日のお昼休み、俺と幼馴染の関係は大きく変わることになるのだが……
それはまた、べつのお話……
終わり
目覚まし時計が喋っているのは最近久しぶりにプレイしたバンジョーとカズーイの大冒険の影響です。
あとランプの精の外見イメージは横スクロールアクションゲームのシャンティの主人公です。