転生と能力の確認
また一つ、始めてしまった…(;・ω・)
「では佐々木君、この続きを読んで」
「はい」
どこにでもありそうな日常の風景。
退屈だ…。
窓際に座る少年。峰岸深雪は外を眺めながらそう考えていた。
120㎝をどうにか越えた程度の身長に、艶やかな黒髪。パッチリした少し大きめの目、ぷにっとした唇。性別はれっきとした男なんだが、容姿は完全に女性だ。いや、女性よりも幼女と言った方が適切かも知れない。
そんな見た目は幼女な青年が、学ランを着、高校生にまぎれて授業を受けているのは、じつに違和感のある光景だ。
極めつけは右目を覆う武骨な眼帯。
これが、違和感をさらに大きくしていた。
「だったらぶっ壊せばいいじゃん」
耳元で囁かれる少し高めの声。
「君にはそれだけの力があるんだよ?なんせ、僕を殺したくらいなんだからねー」
艶やかな黒髪に赤く染まった瞳。
黒い薄手のワンピースを着た吸魂鬼の少女、ツェツィーリエ・フォン・バイルシュミットは耳元でそう囁く。
「あの時の事を思い出すと、今でも、体が火照ってくる。嗚呼狂おしい、戦いの記憶」
少女は恍惚とした表情で身をくねらせる。太ももの内を小刻みに擦り合わせ、潤んだ目をしながら体を抱く。
そんな、官能的な情景が繰り広げられているが、回りは一切気にしない。
「まあ、肉体がないから火照った体を静めることはできなんだけどね。ああ、このモヤモヤした感じ、どうにかしてほしいな?」
「体は貸さないぞ」
「出来るなら奪うんだけど、いかんせ、君の力は強すぎる」
呟きながらツェツィーリエは峰岸の机に座り、足を組む。
「さて、話は変わるが、今から面白い事が起こるかもしれない」
「?」
「足元を見て」
ツェツィーリエの言葉に、訝しみながらも足元を見る峰岸。
「こいつは…!」
「うん、君は見覚えがあるよね、そう、これは魔法を発動させる為の魔方陣だね。それも、かなり大規模で高レベルなやつだ。おっと、何をするつもりかな?」
峰岸が立ち上がろうとするのを止めるツェツィーリエ。
「まさか、彼らを助けるつもりかい?」
「だったどうした?」
「へえー?君が、彼らを?基本的に、利己主義者の君が?」
その言葉に峰岸は自嘲的に笑った。
「確かに俺は利己主義者だ。己の為なら破壊活動にも勤しむし、人も殺す」
「だったら何故だい?彼らと君は仲が言い訳じゃない。むしろ一部の小数を除いて、彼らとは敵対しているはずだ」
机に座ったツェツィーリエは足を組み換えながらそう問いかける。
「いじめの標的にされ、仲が悪くない者も見て見ぬふり。そんな彼らを、何故君は助けようとするんだい?」
「敵対者と邪魔者にはそれ相応の報復をする。だが、逆に言えば敵対者以外には手をかけるつもりはない」
「つまり、彼らは敵対者や邪魔者ではないと?」
「俺から言わせればあの程度、いじめでもなんでもない。そして、この危機を知らせず、俺だけが生き残っても事情聴取やらなんやらでめんどくさい事になることは確実だ。そんな事になるなら助けた方が労力が少なくてすむ。そうだろ?」
「なるほど、なるほど、よくわかった。では、そんな君に一言」
ツェツィーリエは机から飛び降りながら一言。
「もう時間ないよ?」
「なぬ?」
高校に似つかわしくない、高く、幼い声が響く。
その瞬間、蒼白い閃光が教室を包み込む。
閃光が止むと、そこには誰もいない。
彼ら、30人の行方を知るものは、この世界には、誰もいない。
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「…あー、うえ、頭いて…」
深酒の後のような、二日酔いに近い酩酊感を感じ、俺は目を覚ました。目の前には青い空が広がる。
「うー。ここ、どこよ」
俺は仰向けからうつ伏せになりながら呟く。すると答えるように隣から声が聞こえた。
「どことなくノモンハンを思い出すね」
「…お前伏せる必要あるの?」
「いや、気分」
「あ、そう」
例の如くツェツィーリエだった。何故か黒いワンピースから旧日本軍の夏衣袴(九八式)に着替えていたが。
「確かに思い出すが、非武装なのが気に入らない。こんな訳もわからん土地に非武装とか寒気がする。拳銃の1丁でもほしいところだ」
「またまたー。徒手格闘で獅子でも白熊でも屠れる癖にー。まあ、その心配もわからなくはないけどね?」
何かありそうな含み笑いを浮かべ、うつ伏せから横向きに体勢を変えるツェツィーリエ。
「そうだねー。まず、ステータスとでも唱えてみようか」
「?」
「いいからいいから」
このままの状態では埒が明かない。とりあえず俺はツェツィーリエの言う通りステータスと唱えてみる事にする。
「ステータス」
言われた通りに唱えてみると、目の前に青みがかった半透明の板が表れた。なんじゃこりゃ。
ステータス
・身体情報
・スキル
・能力
・称号
・その他
「これ、なによ?」
「ステータス。この世界に飛ばされる最中、何者かが君に能力を与え、そのいつも首から下げてるネックレスを着けている間、ステータスと唱えることでそれらを閲覧、行使できるようにしたらしい」
「能力以外の身体情報、スキル、称号ってのは?」
「君自身の情報。何者かが君に能力を与えたあと、君自身に弄くろうとしたから僕が体を借りて逃げてきた、だからそれは君の元々の情報だね」
「と、言うことはあの閃光の時、あの場にいた全員が?」
「うん、あの場にいた全員が何らかの能力を与えられ、体を弄られてるね。とりあえず能力を確認してみたら?」
「そうしてみるか」
ステータスの能力を押してみる。
ステータス
能力
・武器、兵器召喚能力
(1945年8月15日までに計画、試作、量産された武器、兵器を召喚する事ができる召喚能力)
・人員召喚能力
(人員を召喚できる召喚能力 ※人員はほかの世界にいた人間コピーであり、拉致してきた訳ではない)
・建物、軍需品、その他を召喚する能力
(1945年8月15日までに計画、試作、量産された建物、軍需品、その他を召喚できる召喚能力)
「…なんと言うか、近代軍隊でも編成しろと言わんばかりの能力だな」
「どれどれ。…本当だねー。ただ現代軍隊は編成できないね。とりあえず非武装がやなら装備召喚したら?」
「そうするか」
ステータスをいじりながら装備品を検討する。
主武装は三八式歩兵銃。弾薬は120発だな。
副武装は九五式軍刀に三十式銃剣。モーゼルM1932 9パラ仕様。それとコルトM1851ネイビーだ。
手榴弾はMk-Ⅱ手榴弾。
被服は夏衣桍(九八式)の特別仕様だ。こいつは黒で染め上げられ、所々に朱殷色で幾何学模様が入れられている。
地下足袋に巻き脚絆、弾薬盒、革帯、剣吊帯、雑嚢、その他もろもろ。
こんなもんか。
「決まったー?」
「決まったー」
決定を押す。するとどこからともなく光の粒が集まる。それらは、各装備品の形を作ると、強く閃光。閃光が止むとそこには各装備品が鎮座していた。
「閃光邪魔だよ…。こんなの敵にもろバレだし…」
装備を身に着けながらぼやく。
「本当、その体つきには似合わないくらい重装備だよね。なんてったっけ?コマ○ドー?」
「あれみたいな装備もできるが、まあ、こんなもんか」
「次は何をすんの?」
「あー、人員召喚でもしてみるか」
再びステータスを開く。能力欄から人員召喚を選択し、説明を読む。
「あー。なになに。…召喚する人員は条件で絞り込むこともできると。条件を入力しない場合はランダムで召喚。召喚された人員の装備品を選択しない場合、その人員が属していた国の第二次世界大戦時の歩兵用軍服を着用して召喚されると、なるほどねー」
「何人くらい召喚するの?」
「まあとりあえず、歩兵2個中隊規模400人と砲兵1個中隊規模200人、機甲3個小隊規模37人だな」
「へーえ。その心は?」
「歩兵1個中隊が陣地防衛。もう1個中隊と機甲3個小隊がこの辺の偵察。砲兵中隊は偵察中の部隊が火力支援を要請した時用の保険だな」
話をしながら、召喚する人員の条件と装備品を決め、陣地防衛用の兵器や資材を設定していく。
主武装は三八式歩兵銃。下士官はM1A1サブマシンガン。三十式銃剣に下士官用の九五式軍刀。将校や下士官用にコルトM1911A1。分隊支援火器の九六式軽機関銃に汎用機関銃としてMG42。保険で八九式重擲弾筒とパンツァー・シュレックRPzB 58も持たせよう。
手榴弾はM26柄付手榴弾。
主武装が三八だから被服も旧軍にするか。夏衣桍(九八式)。その他、弾薬盒や背嚢などの装備品。
偵察隊用のM3ハーフトラック。車載用M2重機関銃。
歩兵部隊はこんなもんか。次、機甲ー。
使用車両は九五式軽戦車。
被服は夏衣桍(九八式)。自衛火器としてコルトM1911A1。戦車帽に戦車眼鏡。編上靴に巻き脚絆。こんなもんか。歩兵に比べ少ないが。次、砲兵。
使用砲はM1 155㎜榴弾砲。自衛火器のコルトM1911A1とM1A1サブマシンガン、三八式騎兵銃。被服やその他装備品。
陣地防衛用兵器にM2重機関銃と九ニ式重機関銃、120㎜ PM38、M1 81㎜迫撃砲。対空用、ボフォース40㎜機銃に2㎝ Flakvierling 38。
その他資材関係と糧食、予備弾薬か。
ステータスをいじっていると、ツェツィーリエが後ろから覗き込む。
「建物の欄で陣地関係の設営はできないの?」
「どうだろ。…ああ、できるわ。なら防空壕に塹壕、トーチカも配備するか、あとトーチカ用の九四式37㎜速射砲。本部用のコンクリ半地下陣地。こんなもんだな。はい、決定っと」
すべてを選択し終え、決定を押す。
さっき自分用の装備を出したときとは比べ物にならない程の光の粒が集まり。閃光。閃光が止むとそこには完全武装の兵士達が整列し、野戦陣地が完成していた。
「本当、この閃光邪魔だよね。かなり遠くからでも確認されちゃうじゃん」
整列する兵士達に聞こえないように小さな声で呟く。
「隊長殿に対しぃぃい!捧げぇぇ銃!」
先頭に立つ指揮官らしい女性が号令をかけると、一糸乱れぬ動きで答えてみせる兵士達。練度の高さが窺える。
返礼をすると、捧げ銃から立て銃に移行し、女性指揮官が喋り始めた。…どうでもいいが身長差がありすぎて泣ける。
「伊藤吹雪少佐以下637名。只今着任いたしました。これより隊長殿の指揮下に入ります!なお、現時刻から自分が隊長殿の副官を勤めさせていただきます!」
「ご苦労、貴君らの着任を認める。早速だが砲兵科の兵達は砲の点検と支援射撃の用意。歩兵科の兵達は1個中隊は陣地の守備に当たり、もう1個中隊は周囲偵察の用意。機甲科の兵達は偵察隊に入り、歩兵中隊と協力して偵察の用意を開始しろ。副官は無線手を連れ本部陣地に来い。以上だ」
「はっ!了解しました。総員、別れ!」
「「「「「「別れます!」」」」」」
一糸乱れぬ動きで敬礼をすると、各自持ち場に散っていく。
俺はその練度の高さに満足しながら本部陣地に向かった。
このような駄文を読んでいただきありがとうございます。m(__)m
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