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〜番外編〜いまどき流行りのクリスマス



あれからベルセルクも含めセレスの家で冒険者生活を送っていた俺は今、なんだかいつもとは違って色めき立つ町並みを歩いていた。



此処はどうやら天候や気温の変化が激しいようで、この世界に来た当初は蒸し暑いぐらいだったのに一ヶ月程経った現在は雪が降っているレベルだ。



「うぅ、今日も寒いわね。 お金が無いから厚着も買えないわよ」



「まぁ冬季ですからね、ベロスも私みたいに毛布を身体に巻きながら歩いたらどうですか?」



「あー…………遠慮しておくわ」



「何故今ちょっと引いたんですか!?!? っていうか何よりベルセルクはそんな薄着で寒く無いんですか?」


「私は吸血鬼だから大丈夫だ。 私の事より裕也は大丈夫なのか?」



俺の前を歩きながら雑談を交わす三人をイライラしながら見ていた俺は、此処ぞとばかりに声を上げた。



「寒さとかそれ以前の問題だわ!! なんで俺が大量の荷物を運ばなきゃなんねぇんだよ!?」



そう、俺達は今冬季に入ったばかりで作物の値段が高騰し始めたので、これ以上高くならない内にと持ち合わせの金を全額はたいて買い出しに出ている。


そして、俺はその荷物をすべて持たされているという訳だ。



「裕也、四人でジャンケンして負けたのにそういう事言うのは私いけないとおもうの。これは世の中のノリというヤツよ?」



「黙れポンコツ門番。 こんなに沢山あるなんて聞いてないんだよ!! お前等には少しは手伝おうという優しい心は無いのかよ!?」



「無いわね」


「無いですね」



「………お前達今度覚えとけよ」



この女共め、いつかやり返してやる。

俺の生活信条は恩にしても怨にしても必ず倍にして返すのが俺流だ。


ふひひ、その余裕面を泣きっ面に変えてやるぜ!!



そんな事を考えながら溜め息を吐くと、ベルセルクが俺の裾をグイグイと引っ張った。



「それ程重いのなら私が持とうか? 流石に大変だろう?」



「わりぃ、それじゃあこの一番重いやつを持ってもらっても……へぶぅッ!!!」



俺は数ある荷物の中から一番重たい物をベルセルクに渡そうとすると、すかさずケルベロスが俺の後頭部を引っ叩いた。



「アンタ此処は普通『大丈夫だよ、俺が持つから』とか言うべきところじゃないの!? 裕也のクズっぷりに私驚きを隠せないんですけど!?」



「アホかお前は!! そんな所で格好つける為に何故俺が無理しなきゃいけないんだよ!! それに、そういうのは自分をよく見られたい異性にするもんだ!!」



「ちょ、ちょっと待ってくれ裕也。 それだと私の事を興味の対象でも何でも無いと言われているようなものなんだが?」



ベルセルクが俺の言葉にショックを受けたのか、おずおずとこちらを見る。


少しの罪悪感を感じた俺はケルベロスの言う通り、極めて紳士的な対応をする。



「当たり前だろ、だって大切なパーティーメンバーをそんな目で見れないよ」


「「「うわぁ」」」



そして、俺は大切でも無いパーティーメンバーにゴミクズを見るような目で見られた。



こいつ等は何故こういう時だけ一致団結するのだろうか? もしかしてあれか? 女同士の間で俺を陥し入れにかかっているのか?



俺は結局荷物をセレスの店まで運び込んで身体に付いた雪を払うと、既に定位置となった客間のソファに深く腰掛けた。



吸血鬼討伐クエストを失敗してからの俺達は、五十万ペールの借金を返す為にあれからしばらくの間冒険者をしている。



週に返却する金額には規定があり、そのノルマを達成しなければ即牢獄行きとまぁ、こんな感じで毎日毎日小物モンスターの討伐やら、薬草の採取やらをしていたのだが。


何故か今日と明日とでギルド自体が休みになってしまった為、俺達は買い物なんてしていたのだ。


まったく、突然定休日とかギルドも勝手だよな、人を働かせるだけ働かせておいて……。



俺はそんな不満を抱えながら先程からセレスが袋の中から出す食べ物を興味深そうに眺めるベルセルクに視線を送った。



ベルセルクはこう見えて吸血鬼という一般人から恐れられるモンスターなのだ。


なので、あれからベルセルクは外に出るときにその正体がバレないようにと前髪で特徴的な瞳を隠している。


まぁ、少々歩きにくそうだが、家にいるときは隠していないのでよしとしよう。


深い溜め息を吐くと、何故かケルベロスが嬉々とした様子でこちらの方にやって来た。



「ねぇ裕也、今日は寒いしそこの暖炉使ってみない? きっと暖かいわよ?」



「……そうだな。 でも暖炉に火を点ける為のマキがないぞ?」



「そんなの裕也が木を切り倒して作ってくればいいじゃない。 ホラ早く、私は寒くて凍え死にそうよ?」



さも当たり前のように俺に指示するケルベロスが早く行って来いと言わんばかりに扉を指差す。


こんのポンコツ門番は何処までも性根が腐っていますね。 俺を怒らせたらどうなるかって事を身に染みる程に分からせてやろうか。



俺はソファーに置いてある毛布を片手におもむろに立ち上がり、ケルベロスの元に歩いて行く。


彼女はそんな俺にジト目を送った。



「何やってんのよ、そんな毛布じゃ火種代わりになんてならないわよ?」



「大丈夫、ここによく燃えそうな火種代わりになる物があるから」



「あの、裕也さん? 何で私を毛布でグルグル巻きにしているのかしら? ちょ、本当にやめて!? 助けてぇー!! 殺されるー!!!」



ジタバタと暴れるケルベロスを押さえつけて毛布でグルグル巻きにした俺は、すかさず暖炉に投げ込んだ。


ガタガタと震えるケルベロスを前に俺は最高の笑顔を作る。



「さて、遺告は?」


「わ、私話せば分かり合えると思うの。 だからとにかく話し合いましょ? ね!?」


「却下だ。 ファイアボール!!」



俺はここ最近の連続クエストで覚えた初期魔法のファイアボールを使用する。



するとケルベロスに巻いてある毛布が燃え上がった。



「ギャーーッ!! ちょ、裕也さん!? 私本当に燃えてるんですけど!? 流石に冗談じゃ済まないんですけど!?」



「いいじゃん、まさしく今のお前は燃えキャラだよ。 良かったな」



「燃えと萌えは違うわよッ!!! いいから火を消して下さいお願いします裕也様ああぁぁぁぁー!!!!」



「ったく、しょうがないな」



俺はその要求にここぞとばかりに唇を吊り上げると、これまたここ最近で覚えたウォーターというその名の通り水を出現させる魔法を行使した。


バシャァッと音と共に毛布の火が消え、濡れ鼠となったケルベロスが暖炉から出てくる。



「うわぁぁぁあああん!! 裕也にイジメられたー!! 何もここまでしなくていいのに!!」



「自業自得だポンコツ門番。 俺はやる時はやる男なんだよ」



「グスッ、アンタ覚えてなさいよ!! 絶対にやり返してやるんだから!!」



「ん、何か言ったか? 俺のファイアボールでまた暖まりたいって?」



「ひぃぃーッッ!!!!???」



ケルベロスは顔面を恐怖に染めながらいそいそと二階に駆け上がっていった。


………うん、思い返してみると少しやり過ぎだったかもしれんな。


そんな事を思っていると、セレスとベルセルクが半眼を作って俺を見ていた。


「裕也、鬼畜ですね」


「鬼畜言うなッ!! 俺はケルベロスに対してしかるべき対処をしただけだ!!」


「私はちょっとケルベロスの様子を見てくる」


ベルセルクはやれやれといった感じで二階に上がっていった。


あれ、これ俺が悪い感じになってないか?


納得がいかない俺は眉間にシワを寄せて悩んでいると、セレスが呆れたような溜息をついた。


「ともあれ今日は神誕祭ですよ、裕也も家でベロスなんかをイジメていないで女の一人でも捕まえてきたらどうですか?」


「神誕祭?」


俺はセレスの口から出てきた聞きなれないワードに首を傾げた。


「神誕祭も知らないんですか? 今日この日に神ゼウスが生まれたと言われているんです。 神誕祭はそれを二日間かけて祝うんですが、端的に言うと、カップルイチャイチャ爆発しろな日です」


セレスは吐き捨てるように呟いた。


あぁ、成る程、つまりクリスマスもどきな訳だ。 だからギルドも定休日な上に、やたら街は活気づいていたのか。


しかし神誕祭か…………俺は元よりクリスマスにイチャイチャするカップルを見て何も思わない派の人間だった。


イケメンやおっぱい達が楽しそうにキャッキャウフフして幸せそうにしているのはいい事だと思う。


しかし人間というものは往々にして失わなければ物の大切さを分からないと言われている。

失ってこそ自分が幸せだったと気がつくのだ。

つまり、俺はそのカップル達がより幸せになる様に別れちまえと心から祈っている。


うん、俺はなんて幸福主義者なんだ。

世界のカップルよ………砕け散れ。


「あ、あの、裕也さえ良ければ今からでも街を一緒に回ってあげてもいいんですよ?」


俺がカップル爆発願望を露わにしていると、セレスが少し言い淀み、もじもじしながら頬を染めて問うてくる。


こ、こやつ意外にヒロイン性を秘めた可愛い所があるじゃないか。


「なんだセレス、俺と一緒に神誕祭を謳歌したいのか?」


「はい、裕也が居なければ出店の食べ物が食べられませんので」


「俺はお前の財布じゃねぇんだよ!! お前にそんな物を奢るくらいなら道端の犬に高級ステーキをあげた方がマシだ!!」


「あぁぁあん!! 高級ステーキを犬にあげるぐらいなら私に下さい!! 今お腹空いて死にそうなんです!!


「知るかそんなもんッ!! ってか引っ付くなビンボー女!!」


泣きながらまとわりつくセレスを追い払おうと暴れていると、唐突に二階からケルベロスが降りてきて俺の元にやってくる。


「今私にステーキをあげるとかなんとか聞こえたんだけど!? くれるの!?」


「お前じゃねぇッ!! ってかお前は本当に犬扱いされて怒ったりしないのか!? それでいいのか!?」


「だって私、地獄の番犬だもの。 なんでもいいからステーキ頂戴!!」


こいつ、本当にプライドとかそんなの欠片も無いのかよ………


ステーキを催促する犬に加えて必死に俺にしがみつくセレスを前に俺は呆れて深い溜息をついた。


本当に異世界なんて来るんじゃなかった!!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





次の日になってやる事も無いので一人で出掛けていた俺は、降りしきる雪の中で身体を震わせる。


朝一に何やら女三人で密会をしていたが、関わるとロクな事にならないので放置してきた所存である。


しかしなんというか………勘弁してくれよ。


溜息をつく俺は街行くイチャイチャカップルを半眼を作って眺める。


あーあ、あんなダメな女共じゃなくてヒロインとして観れる様な優しい美女とかはいないもんかね。


………ん、まてよ?


あの三人の中で唯一まともなのといえばベルセルクなんだよな、彼女はヒロインとして見れるんじゃないか?


容姿はこの世界でも上位と言っても過言はないレベルだし、性格も悪くはない…………いや、ダメだな。 時よりあいつが見せる俺に対しての捕食者の目が怖い。


理由は分からんが、最近では慣れたけど、最初の頃はその視線に怯えたもんだ。


はぁぁ、もうホント、美少女降ってこいよ。


そんな事を考えていると……


「ぎゃぁぁー!!!!!!!」


「ふぁっ!?!?」


突然に階段の上の方から女の子が転げ落ちてきた。


なんだなんだ!?


俺は逃げようにも道が狭いため、受け止める気など毛頭なかったのだが、結果としてはその子にぶち当たった。


後頭部を強打し、苦痛に顔を歪めながら瞳を開ける。


するとその女の子は俺の上に乗る様な形になっており、俺の顔を見るなり引きつった表情をする。


「いってて、怪我とかないか? 」


「…………ふえ?」


何故か彼女はそうやって問う俺に驚愕の表情を見せると、やがて何かに納得した様に頷き、ニッと笑う。


この子の容姿はサラサラな長くて黒い髪をサイドに留めており、それに加えて真っ赤なドレスと、どこかの貴族を連想させる様な美しさだったが、ちょっと変な奴だった。


それに、よく分からんが声とか顔に既視感を感じるが…………まぁ、気のせいだろう。


「あはは、大丈夫、大丈夫よ!! じゃなかった!! 助けて頂いてありがとうございます、お怪我はないですか?」


「俺の方は大丈夫だ。 それよりなんでアンタは階段から転げ落ちてきたんだよ?」


「あー、それは………まぁ色々ありまして。 それよりここで会ったのも何かの縁です、街を一緒に回りませんか?」


「…………へ?」


「私と回るのは嫌ですか?」


「いや、決してそんな訳じゃないんだけど………」


なんだこのお約束のイベントは!?

も、ももももしかしてこれからこの女の子と結ばれてハッピーでグッピーなエンドが訪れるのか!?


だとしたらこんなチャンスを逃してたまるものか!! 俺はこの神誕祭というビックウェーブに乗ってやろうじゃないか!!


思い立ったが吉日という事で、俺はすぐに目の前の彼女に向き直り、極めて紳士的な対応をする。


「僕で良かったら一緒に回りましょう、お嬢さん」


「ブフゥッ!!!!」


俺がそんな事を言うと、彼女は何故か盛大に吹き出した。


俺なんか変な事をいったか?


悩んでいると、彼女はしばらく肩を震わせてからワザとらしく咳払いをする。


「よ、良かったです!! 私の名前はベールです、よろしくお願いしますね、裕也さん」


「あれ、俺はアンタに名前教えたっけ?」


俺の問いにベールはしまったと言いたげな顔をして、あわあわと慌て出す。


「わ、私は昔から人の名前を当てるのが得意でして…………あはははは」


「…………なんだ、そうだったのか、はははは!! それならそうと言ってくれなきゃ驚いちゃうよ」


「ははは、と、とにかく行きましょうか!!」


ベールは何故かこんな時期だというのに冷や汗を流し、俺の手を握って引っ張っていく。


おー、これが異性と手を繋ぐという感覚が!!

…………素晴らしいじゃないですか!!


やがて、軒を連ねる屋台の通りにやってきたベールは、ステーキ串と書かれたで店の前で立ち止まった。


「す、すてーき………じゅるり」


「食べたいのか?」


そう聞くと、ベールはここぞとばかりに満面の笑みを俺に向けた。


「私お金持ってなくて!!」


「あー、それは俺も同じだ、諦めよう」


「うわぁ………」


あらあらベールさん、明らかにドン引きした様子でいらっしゃいますね。


しかし、こんな所で無駄遣いをしてしまえばギルドに借金を返せなくなってしまう。


さて、どうしたものか。


悩んだ俺は、仕方なく財布から五百ペールを出してステーキ串を二本購入した。


するとベールはそれを口に含みながら、


「わぁーーーい!! やった!! ほら裕也、久しぶりのステーキよ!! めちゃめちゃ美味しいわよこれ!!」


「喜んでもらえて光栄だが、なんか口調が俺の知り合いに似てきてるんだけど?」


「………い、いやですね裕也さん。 私少しだけ気分が高揚してしまいまして」


「いや、気にしないでくれ。 確かにこのステーキ美味しいしな」


しかしなんでだろう。

この女の子髪色とか雰囲気がどことなくケルベロスに似ている様な………


いや、でも普段のアイツはこんなに色気もないし、何より格好もこんなにちゃんとした女性の着物を着てないしな。


きっと勘違いだろう。


「おーいベロス!! その辺の男からお金をふんだくる計画は成功したんですか!?」


「待てセレス。よく見てみろ、ケルベロスは今男を連れているぞ?」


「あぁ、絶賛ふんだくり中だったんですね」


そんな事を考えていると、後ろの方から見知った声が聞こえてくる。


……………ちょっと待てよ、ベロスだと?


俺はゆっくり視線をベールの方に向ける。

すると、彼女は冷や汗をダラダラと流しながら俯いている。


「って、裕也じゃないですか!? 何で裕也がベロスと一緒にいるんですか? 散歩ですか?」


「あー、その、セレス、何故か裕也が物凄く怒ってるのだが………ってか今までにない程目つきが大変な事になっているんだが」


「ほえ? 何故ですか?」


そんな二人の会話を無視して俺はベールの肩を力強く掴んだ。 すると彼女は「ヒッ」と怯えた様な声を出すが関係ない。


「おいこら犬。 お前なんのつもりだったんだ?」


「あー、いや、その、なんと言いますか。 お金が欲しいから、ちょーっと試行錯誤を………」


「それで、この俺を騙そうとした訳か?」


「いや、本当は誰でも良かったんだけど、たまたま裕也と遭遇して、私に気が付かなかったもんだから………」


「おい犬」


「はい」


「そこに正座しろ」


「いや、下雪だし、私スカートだしそれは流石に………」


「正座しろ」


「はい」


こうして俺はケルベロスに小一時間程説教をし、セレスとベルセルクと共にお店に帰った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



帰り途中にマキを購入した俺は暖炉に火を灯してくつろいでいた。


ついでに言うと、ケルベロスは先程から反省中の札を首から掛けさせて正座をさせている。


「うぅ、グスッ………膝がいたいよぉ……」


「黙れポンコツ門番、お前のせいで俺のお金と尊厳を失いかけたんだ、それくらいの罰は受けろ」


「グスッ…………たったの五百ペールじゃない………」


「……今何か言わなかったか?」


「ひぃ!? 言ってないです!!」


怯えるケルベロスに呆れて溜息をつくと、ベルセルクが困った様に眉をひそめてこちらにやってくる。


「なぁ裕也、確かにベロスはやり過ぎたと思うが、許してやってくれないか?」


「ダメだ、情状酌量余地なし」


「じょうじょうしゃくりょ………まぁ、何を言っているか分からんが。 ベロスにも考えがあってああいう事をしたんだ」


「考え?」


首をかしげると、先程から二階で何やらガサゴソとしていたセレスが疲労を露わにしながら降りてきた。


「まぁ、元からベロスには期待していませんでしたからね。 一応昨日買い物した物の中で作りました」


「は………何を?」


「あれ、まだ聞いてないんですか? 折角の神誕祭という事でみんなでパーティーをしようという話になったんですよ。 そしたらベロスが裕也を驚かせる為にもっとお金が必要だなんだと言い出して、服を着替えたと思ったら『男を誘惑してお金をふんだくって来るわ』と勢いよく家を飛び出して行ったんです」


それを聞いた俺は「本当か?」という視線をケルベロスに向ける。 すると、彼女はどこか拗ねたように頷く。


……………ったくこのアホは、


「はぁ……そうならそうと早く言えよ」


「だって裕也が聞く耳持たなかったんじゃない……」


唇を尖らせるケルベロスに俺はジト目をおくる。


しかし、まぁ、コイツも結果はさておき俺の事を少しでも考えてくれていた訳だ。

それでここまでするのは、少しだけ可哀想だろう。


俺はケルベロスの首から反省中の札を取って立ち上がらせた。


「それじゃみんなでパーティーするか!!」


「おぉ、そのノリ好きですよ私!! 折角頑張って飾り付けや料理を作ったので楽しんでもらいたいです!!」


「そうだな、たまにはこう言うのも良いと私は思う!!」


嬉々として二階に上がっていく二人について行こうとすると、ケルベロスが未だに拗ねたままで不機嫌そうに立ち止まっている。


………ここは俺が折れるしかないんだろうな。


俺は息を吐いてケルベロスの頭をポンっと叩く。


「まぁ、お前のやり方はとことん間違ってた上に、結果的に俺の事を騙しまでした訳だが……それでもありがとな、それと一応悪かった」


俺の言葉にケルベロスはパァッと表情を明るくしたが、次の瞬間には腕を組んで得意げに胸を張った。


「そうよ、この私が一肌脱いであげたのにあの仕打ちは酷すぎるわよ!! もっと私を崇めなさい、そして謝りなさい!!」


こんの女、甘やかしたら調子に乗りやがって!!


「よし分かった。 お前やっぱり正座しろ。 そしてセレス作った料理はナシだ」


「えぇ!? ちょ、待ちなさいよ、待ってください裕也さん!! 私今日あのステーキ串しか食べてないからお腹空いたんですけど!?」


「黙れ犬、早く正座!!」


「なんでぇぇぇぇッッ!?!?!?!?」



こうして俺たちの神誕祭………まぁ、つまりはクリスマスは騒がしい中で幕を閉じたのだった。






どうも、辰太郎です。


今回はクリスマスということで、それに因んだ番外編を書きました。


良かったらゆっくり見て行って下さい。

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