表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

戦場は街

「オヤジ、こんな感じの武器は作れるか?」


「うーん、まあ、作れんことはないが、鍛冶屋と相談してからだな。少し時間はかかるぞ」


 今、俺は武器屋に来ている。蟻討伐の臨時収入で武器を買うのだ。人は道具を使うから人なのだ、素手で戦う者など野蛮人ぐらいである。だが、俺の眼鏡にかなう物は売っていない。


 ――剣? インパクトに欠ける。


 ――斧? 脳筋のイメージだ。俺とは合わない。


 ――槍? 持ち運びが面倒だ。


 ――ナイフ? 殴った方がマシだ。


 だが、俺は思い出す。俺にピッタリの武器が。ここにあるナマクラとは違う神々しく洗練されたあの武器が。ザクとは違うのだよザクとは!


 武器屋のオヤジに製作依頼をだして、店を出る。店先ではブラドが待ち構えていた。


「待て言うたやろうが、勝手に出歩くな!」


 こいつ、ギルドの支部長らしいが暇なのかな?


「武器の製作を依頼しに来ただけだ」


「アホか、1人で行くなっちゅう話や」


 お? 第3ラウンド始めっか? やってやんよ?


「ほんで、お前用の武器はいつ出来るんや?」


「明日中には何とかなるらしい」


「そうか、ほんなら問題ないな」


 何がだ? 何言ってんだコイツ?


「お前、ちょっと王都行ってこいや」


「嫌だな、面倒くせぇ。お前が行けよ」


「俺が行ってどうすんねん! 前にもちょろっと言うたと思うが、王都にもおるんよ、異世界人が。ほんで、王都には職種訓練所や魔術、技術の各研究所があんねん。異世界人のスキル、カードに書いてある固有技能な、この世界の人間とは全く違うモンらしいで?」


「スキル持っとるヤツ自体はそれなりにおるんやが、何ていうか、もうちょい、まともや。何やねん3分間皆殺して。レベル上がったら10分になるんか? アホか、余計タチが悪いわ。まあ、そんなはた迷惑なスキルでも研究所なら何とかなるかもしれん」


「お前みたいなアホはちょっと王都行って絞られてこいや。真人間になったら帰ってきてええで?」



 まだだ、堪えろ、逃げちゃ駄目だ。明日だ、明日この馬鹿をブチ殺す。今回ばかりは天使と悪魔が全面協力してくれている。


 俺は拳を握り締め、血を滲ませながら言う。



「……ああ、じゃあ明日の昼に向かうわ。どうやって行けばいい?」


「ほんまか! 一応、監視対象やから監視兼案内つけたるわ。明日の昼に街の門まで来さすから、よろしく頼むで」


 俺は馬鹿と別れた後、店に戻る。あいつは監視と言いながら1人で帰って行った。やはり馬鹿だな。


 武器屋のオヤジに更に金を積み、明日の昼までに仕上げてくれる様に頼む。オヤジは俺の尋常ならざる様子にイエスとだけ答えてくれた。ちなみにカードを確認すると、皆殺しがレベル2になっている。なるほど我慢しきれば、レベルがあがるのか。だが、こんなに苦しいのなら……こんなに悲しいのなら……スキルなどいらぬ!!


 俺は眠れぬ夜を過ごし、朝から旅の用意をする。昼になり門に行けば、以前、酒場で揉めていた3人のゴロツキがいる。こいつ等が案内役か。3人にすぐ出発出来る様、準備しておく事を伝えると、武器屋に向かう。


 出来ている。なかなか満足な仕上がりだ。オヤジに感謝を伝えると、そのままギルドへと向かう――



「何か、嫌な予感がすんねんけど……」


 ――あのアホがこのまま、すんなり旅立つとは思えん。


 と、その時、支部長室のドアが吹き飛んだ。そこに立っていたのは、人を痛めつける為だけに作られた様な禍々しいモノを持った、狂戦士だった。





 王都に向かう街道で、


「ヤマダさん、何スか、……それ?」


 ゴロツキの1人が俺が手にしているモノを見ながら尋ねる。


「ああ、これか? これは俺の国で一番ポピュラーな武器、所謂『釘バット』だ」


 切る、殴る、抉るの3拍子そろった優れものだ。


 馬鹿には一発も当たらなかったが、釘バットの出す神々しいオーラに気を取られて、腹に蹴りを受け吹き飛んで行ったわ。大満足である。


 こうして、俺は王都に向かうのだった――





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ