ギルド突入
俺達は夕暮れに街に着いた。
森でアンジェが依頼の毒キノコを収集していた為、少し時間がかかったのだ。それ以外でも見たことのない獣に襲われるなどのトラブルに見舞われた。あれが絶滅危惧種ではないことを願おう。
しかし、早く食事にありつきたいものだ。俺の腹はかなり前から台風前の海鳴りの様な音がしている。そろそろ時化るぞ。間に合わなくなっても知らんぞ。
「アンタ、身分証持ってないから、このままじゃ街入れないわよ? ギルドカードでも身分証の代わりになるから、ギルド行って発行してもらわないと。取りあえずは街に入れる様に門番に説明してくるわ」
門番に向かうアンジェを見送る。出来る娘である。よきに計らえ。
すぐに許可が下りたみたいだ。えらく信頼があるようだ。もしくは警備がザルか……
門番が俺の様子を窺いながら、尋ねてくる。
「見慣れない格好しているな。何処から来たんだ?」
「ああ、イタリアから来たんだ」と、嘘をつく。理由は特にない。
「イタリア? よくわからんが問題を起こすなよ。起こせばお前ら2人に罰則がいくことになるぞ」
起こすなと言われれば、起こしたくなる。押すなよ精神だ。俺の芸人魂に火が点きそうになるが、それより飯だ。何か食わせろ。
ザル門番の横を通りすぎ、街に入る。文明に触れるのも久々のような気がする。何か食わせろ。
重厚な石畳に石造りの建物、精練された奇麗な街並みだ。夕暮れでも人通りはそれなりに多く、人口の多さが窺える。時折り、2足歩行の猫や犬を見かけるが、サーカスで見たこともあるので気にするほどのことでもない。
「あそこの2階建ての建物が冒険者・傭兵ギルドよ。向こうが商人ギルド、ここにはないけど王都に行けば、手工業ギルドとかいろいろあるわ」
とりあえず、ギルドカードとやらを貰いに建物に入る。中はそれなりに明るい。小奇麗にまとまっているが酒場が隣接しているのだろう、隣でゴロツキ共が酒盛りをしている。ゴロツキ共も最初はこちらをチラチラ見ていたが、やがて興味もなくなったのか、また酒盛りに戻った。ちょっとショック。入り口正面の受付へ向かい、若……づくりの女性に話しかける。
「いらっしゃい、ここは初めてかい?」
「ああ、取りあえずギルドカード? それを発行してもらいたいんだが……」
受付のオバサンに白いカードを渡される。どうやらこれに念じれば、名前とか職種とか何とか勝手に書き込まれるらしい。外国スゲェな。
ともかく言われたとおりにやってみよう。職種が神とかだったらどうしよう。サッカーとかやろうかな。
念じてみれば、カードに文字が浮かんでくる。見たことのない文字だが何か読める。やっぱ外国スゲェな。
とにかくカードを見てみる。
名前:山田 太郎
人種:異世界人
年齢:18
職種:狂戦士
固有技能:自動翻訳 3分間皆殺し
いろいろ突っ込みどころが満載だな。取りあえず、狂という文字は人に向けて使っていい字じゃないと思うんだが……