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山田と神

「初めましてヤマダタロウ君、それに久しぶりだね、魔王ウェントワース君」


 魔王? 何言ってんだコイツ、病気か?


『俺だ、俺。大昔そんな感じで呼ばれてたんだわ』


 まあ別にコイツが大昔の魔王だろうがスケートの真央だろうが大した差じゃない。

 近頃では、やれ美少女魔王だ、やれロリババアだと嘆かわしい。いいか? 重要なのは質量と物量だ。王を名乗るからには最強である必要がある。どれだけ強い攻撃手段があったとしても、当の本人が紙装甲の場合、それは最強と言っていいのか?

 蟻単体では象には絶対勝てない。そこで質量と物量だ。巨大な美少女魔王。もしくは、私を倒しても第2、第3のロリババアが現れるだろう、と言いながら後ろに大勢のロリババアがスタンバってる。これなら認めよう。

 実際にロリババアっていたら近寄らないよな? 不気味すぎて。そんな重要性の低い考え事をしていると法王が話しかけてきた。


「2人揃ってこんなところまでどうしたんだい? 私に何か用事かな?」


 何しに来たんだっけ? この山田、過程を重視するあまり、目的を忘れることなど度々あることよ。ままならんのう。


『戦争止めに来たんだろうが』


 うむ、戦争とは哀しみで涙を拭う業深き行い。強敵ともの愛と悲しみを背負い戦い続ける、この山田。愛を忘れた貴様が明日を迎える術はない!!


『なんか、こう、ちょっとズレがあるんだよな、お前』


「大方、戦争を止めろとでも言いに来たのかな? ウェントワース君の入れ知恵で」


「話が早いな。戦争を止めろ! これ以上、罪無き子羊達を巻き込むことは、この山田が許さん!!」


 あれ? 俺、戦争反対派だったっけ? 戦争は駄目ですよ、なんて一度も言ったことがない気がするんだが……まあいい、流れがあれば自ら流れに沿い泳ぎ続けるのが、この山田。今こそ見せようぞ、この一撃必殺のクロールを!


『そうだよなぁ。お前、楽しそう、それだけの理由で動き回ってただけだもんなぁ』


「そうだね、止めてもいいけど……条件でも付けようかな? じゃあ私を楽しませることが出来たら止めてあげるよ」


 楽しませる? 何という愚問! 言葉を発するのもおこがましいわ!! この『利根川が生んだ最高のエンターテイナー』『日立かと思ったら山田だった』数々の賞賛を総嘗めにした、この山田。阿鼻叫喚の笑いの渦に落としてくれるわ!!


「やはり、人間の根底にあるものは争いだよ。私は人に限らず争いを見るのが好きでね。そこで、私の下僕と戦ってもらおう。君達が勝ったら、話を聞き入れてあげるよ」





 ――来なさい『空王ガルーダ』





 法王が何かを呼んだと同時に、気付けば頭上の空を巨大な鳥が旋回していた。何故見えるか? そりゃあの鳥、来ると同時に法王庁の屋根吹き飛ばして行ったからな。ペットの躾は飼い主の責任だぞ? 呼ぶ度に屋根壊すとか、どんな育て方したんだ。


『そもそも、あんなペットいらねえよ』


 空王か……海王もそういやいたな。じゃあ陸王はいないのか?


『昔、俺が殺した』


 見たかった……超見たかったぞ!! まあいい、そこは深海レベルの懐の深さで許してやる。涙して喜べ。ところで、法王って何者なんだ? 明らかに普通の人間じゃないよな。


「その質問には私自信が答えてあげるよ」


 あらやだ、この人、俺達の会話聞こえてるの?


「うん、全部筒抜けだよ。必ず殺せるクロールなんてかなり興味深かったけど、それは今は置いておくとしよう。君達の言葉で伝えるとすれば、私は創造主。所謂この世界の神だね」


『そういうことだ。全てコイツの箱庭。その事実に気付いたとき、踊らされているのが不愉快で俺は自ら命を絶ったんだ。あの頃じゃ勝てなかったしな』


「おや? 今なら勝てるような口ぶりだね」


『ああ、勝てる。500年もお前に一発食らわせる為だけに研ぎ澄ました俺の力と、この馬鹿のワケのわからん力があればな』


 それにコイツ、馬鹿だしな。『ああ、馬鹿だな』


「へぇ、神に向かって馬鹿、馬鹿と偉く自信があるみたいだね。その根拠を確かめさせてもらおうかな。――切り裂け、ガルーダ」


『ほらな。目的が目の前にいるのに、何でコイツが馬鹿正直にあの鳥と戦うと思った? 受け取れヤマダ、これが俺の全ての力だ』


 ああ、確かに死ぬわコレ。体中でなんかわからんモノが溢れ出て破裂しそうだ。歩くだけでも骨と肉が軋んでかなりきつい。視界なんか見えてるのか見えてないのかすらわからない。だが、一発で星も砕けそうな気分でもある。


「あっはっはっ! 見事だね! それは確かに私達の領域だ。人の身で足を踏み入れたことに戦慄すら覚えるよ。けど人である君は間違いなく死ぬよ?」


 漢というものはヒーローに憧れを抱くものだ。抱いたのなら死に様まで見事であるべきだ。死ぬことを恐れちゃいけない。それにヒーローはまた蘇るものだ。





 神ってのは宗教と共に人間が創った一種の芸術だと思う。人は堪えきれない困難に出会ったとき神に祈る。死に直面したとき心の安寧を守るため神に祈る。偶像崇拝という芸術であるべきだと思う。


 いたならいたでいいが、それが人の世界に茶々いれるのは駄目だ。理の外に身を置くべきだ。


「じゃあな」









「なんじゃ、お主また死んだのか」


 なんか覚えのあるとこだな。真っ暗の空間に薄らハゲ。もしや、俺の予感が正しければ、いや、間違えているはずがない。


「そうか、ここが天国か……」


「相変わらず話を聞かんヤツじゃ」


 生きているとか死んでいるとか些細なことだ。要は楽しいか楽しくないかだ。楽しくなければ楽しいことを探せばいい。さあ次は何して遊ぼう?


『そんなもんだな。お前の頭ん中は』


 何故いるガラクタ


「私もいますよ」


「異世界の神よ、お主、自分の世界の管理はよいのか?」


「まあ、いいじゃないですか。私は彼が気に入りましたので、暫くは共に彼の言う楽しみを追求しようかと」


「よし! 話も纏まったことだ、地獄行くぞ、地獄」


『何処だ、地獄って?』


 知らんのか? 今をときめく一大アミューズメントパークだ。血の池、針の山、多くのアトラクションが待っているぞ!


『おう、絶対に違うな』


「じゃあ、行きましょうか」


「好きにせい、手に負えんわ」


 まずは血の池地獄にブラックバス放流するところから始めるか――

非常にバカな話ながら皆さんい読んで頂いてる事を活力に完結まで辿り着く事ができました。今迄お付き合いありがとうございました。また新しい話を投稿した際は、バカがまたバカな話書いてると軽い気持ちでお目を通して頂けると幸いです。

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