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山田と法王庁

「戦争を煽ってるヤツ等、大体はわかってきたよ」


 俺は今、ダンディーの隠れ家に身を隠している。他の者と合流するためだ。ダンディーはマイケルと闇ギルドのリーダーと共に調査をしていた。


「今、帝国の政権は有力貴族が牛耳っているでござる。皇帝は高齢の所為か、余り政には関与していないらしいでござる」


「王国の有力貴族、帝国の有力貴族。その2つの共通点は共に法王庁に従属している。貴族の資金、それと教会の寄付金、それらが帝国に集まり、軍備を整える資金になっている」


 ふふん、これは理解したぞ。アレだな、パトロンだ。ヅラ疑惑のフリーアナウンサーが売れない俳優のよくわからん絵に何十万も払って購入してたが、そいつがその金で覚せい剤購入してたり、日ハムの3回まで投げれない先発が出版社にポルシェ貰おうとしてたヤツだろ?

 はっきり言って、ヅラ知らんフリしてたけど薬中はわかるからな? アイツ等、キマッてる時が正常で、薬切れると字も書けなくなるぐらい手ブレだすぞ? まあ正常と言っても目としゃべりはヤバイけどな。

 後、日ハムのピッチャーは意味合いは違うがいい加減にしろよ? そんなしょうもないことを考えていると、いつのまにかダンディーが黒幕について話し出していた。


「僕の推測ではあるけど、法王庁の上層部が今回の件に関与している可能性がかなり高い」


 ダンディーの推理によると、失敗に終わったが王国からの資金吸い上げ、有力貴族の資金提供。それらが帝国の軍備資金となり、帝国の大陸統一。共和国を襲った魔物は、俺が出会った自称勇者の行動とみて間違いないだろう、とのことだ。同盟国である共和国の戦力を削るってとこか。

 だが、誰が、何故、何の目的で帝国に統一させようとする? 法王庁が関わっていたとして、誰が得をする? それがわからないのだ。


『どうせ法王だろ』


 む? 知っているのか雷電?


『誰だよソイツ? まあ十中八九、法王の仕業と思っていい。昔、ひと悶着あったしな』


 鎧が人と揉めてんじゃねえよ。しかし、今の話を信用するなら、法王倒したら解決じゃん。さっさと倒しに行けばいいんじゃね?


『倒せたらな』









 さて、皆と別れて独断行動を取ったワケだが、どうしよう? 法王庁まで来たはいいが、鎧の話しぶりでは法王は相当強いみたいだな。俺より強いヤツに会いに行くのはストリートファイター山田の宿命。しかし、相変わらずの潜入作戦が付いて回る。正直めんどくさい。


 今回の相手は厳粛な規律を重んじる僧兵だ。今迄のザル共とは違い一筋縄ではいかないだろう。だが、案ずるな。『死んで仲達をパシらせてると思ったら山田だった』と喝采を一身に浴びる、この山田。策に抜かりなしである。


 作戦その1「間違えたフリして入る」


「あれ? ここカラオケじゃねえの? ッんだよ! ッぜえな、間違えちったよ」みたいな感じで何となく入る。途中で何故か理由もなくキレるのがポイントだ。


『確実に門前払いだな』


 次だ! 作戦その2「モグラ作戦」


 文字通り、地面を掘って地中を進む。多少の振動と音がすると思うが、見つかった場合は「ゲッゲッゲッ」とでも鳴けば「何だ、モグラか」で済む非常に高いメリットがある。デメリットがあるとすれば、何処を進んでいるのかわからないことと、汚れるぐらいだ。


『デメリットが致命的じゃねえか。後、お前の世界のモグラの鳴き声、気持ち悪ぃな』


 はいはい、次、次。作戦その3「ダンボール作戦」


 これも読んで字の如く、ダンボールはないから木箱か何かを被って潜入する。これが成功するほうが驚きだ。違和感しかねえよ。潜入なめんな馬鹿野郎。


『ほんとだな、馬鹿野郎』


 これラストな作戦その4――









 法王庁の建物自体は石造りの塔に似た形になっている。俺の取った選択は外壁を登るだ。ロッククライミングの経験? そんなものはない。指一本かかったらどんな壁でも登れるなんてヤツは、ヤモリか変態のどちらかだ。では、どうやって登っている? 答えは簡単だ。


「ふんっ!!」


 壁に拳を打ち付ける。次は足だ。こうすることで安全に外壁をよじ登っている。何度か壁を打ち抜き、中にいたヤツと目が合ったが、そこはご愛嬌だ。勘弁してやる。


 登ってる最中にふと思ったんだが、一番偉いヤツって、何で最上階にいるんだろうな? 逆に悪いヤツだと一番地下とかな。「法王どこにいます?」「2階の突き当たり、右の部屋です」とかだったら、それはそれで面白いんだけどな。


『悪いヤツは後ろめたすぎて、一番隅にしかいられねえんじゃねえか? 偉いのと馬鹿は、お前みたいに高い所が好きなんだろ』


 叩き落すぞガラクタ


 しかし、建物内がえらく騒がしいな? 侵入者がどうこう言っているのが聞こえるが。見つかるとは間の抜けたヤツだ。何故『壁にヤシガニが張り付いていると思ったら山田だった』と周りの視線を独占するこの俺のように華麗に潜入出来ないのか、疑問が尽きない。


『お前が見つかってんだよ、間抜け』


 うむ、さっさと登ってしまおう――









「ちぃーす、法王くんいるー?」


 やはり法王と名乗るからには礼節にはうるさいだろう。行儀良く窓から入るだけではなく、出来る限りの尊敬語で対応する必要がある。


『あ、いたいた。あの奥で座ってるヤツだ』


 無駄に豪華な椅子に座っている白髪の男。白髪とは言っても老人ではない。見た目だけで言えば、20代前半ぐらいだ。切れ長の目に薄っすらと笑みを浮かべ、こちらを見ている。


『やっぱり全然変わってねえな、500年前と』


 えらく長生きしてるな。亀は冬眠と夏眠を繰り返し、余り動かずにちんたら生きているから長生きだそうだ。


 コイツ、亀かな?――

次話で完結になります

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