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山田と潜入

 ――こちらスネーク、潜入に成功した。現在地はブリーダー帝国城下町の大通りだ。





 俺は、城下町城門の入国審査を王国を出るときに渡された偽装ギルドカードで何とか突破した。国を出るときに言われた「その鎧姿じゃ目立つから、変装したほうがいいよ」という助言を聞き入れた故の成功と言っても過言ではないだろう。


「ねぇママァー。何であの人、鎧の上からメガネとヒゲつけてるのー?」


「しっ! 見るんじゃありません!」


 迂闊! 技術研究所に無理言って作らせた変装道具だったが、この山田より溢れ出るスター性のオーラは隠しきれなかったということか! やはり熟考した結果、断念したが付け鼻とアフロヘアーも用意しておくべきだったか……


『冗談で言ってるんだよな?』





 問題はここからだ。軍備施設は帝国の中心、ブリーダー城のすぐ横に建てられている。もちろん警備も厳重だ。この山田の隠密スキルを以ってしても、一筋縄にはいかないだろう。

 だが、案ずるな。この神機妙算の泉より生まれいでし、この山田。策はすでに用意してある。


 まず作戦その1「ひき逃げアタック」


 進路上、すべてのモノを破壊しながら駆け抜ける。無論、人も建物もだ!


『却下だ馬鹿野郎! 目撃者が多すぎるわ!』


 むう、確かに女子供を打ち倒すのは、この山田の沽券に関わる。ムカつく女とかクソガキならいいかな? とも思うが、止めておこう。感謝しろ女子供。


 では作戦その2「三河屋作戦」


「ちわーっす! 三河屋でーす!」と言いながら、商人のフリして潜入。俺的には一番、成功率が高い気がするんだが……


『え? お前の世界の商人って、こんな重装備で金棒担いでくるの? 強盗じゃなくて? いや、強盗ですらもっと軽装備だと思うぞ』


 なるほど、この光り輝く山田オーラは誤魔化しきれんな。


 まだだ、作戦その3「陽動作戦」


 まず、俺が囮になる。……俺が囮になってどうするんだ馬鹿野郎!


『馬鹿はお前だ、馬鹿野郎』


 まだだ、まだ終わらんよ? 作戦その4「帝国兵のフリ」


 堂々と正面から入って行く。なーに、堂々としていれば、案外何とかなるもんだ。


『お前の作戦って、致命的に何かが欠けてるんだよなぁ』









「おう、ごくろうさん!」


『よりによってこの作戦かよ……』


 結局、いい案も出なかったので、堂々と軍備施設に入って行くことにする。やはり、施設は警備が厳重なだけあり、そこいらに帝国兵がいる。

 俺に警告しに来たのだろう、1人の兵士がこちらに向かって来たので挨拶してみた。なんにせよ挨拶というものは重要なコミュニケーションだからな!


「ここは一般人は立ち入り禁止だ」


「貴様! 上官の顔も忘れたのか! 名前と所属を言え!!」


「は? いや、兜被ってるから顔も確認出来ないんだが……取り敢えず、兜脱いでもらっていいか?」


「いいから黙って気絶してろ」


 口に手を被せ、直接瘴気を流し込んで気絶させる。初めからこうすりゃ良かったんだ。


『だが、全員にコレやるワケにもいかんだろう。どうするんだ?』


 施設内に入ればこっちのモンなんだがな。入る前に気付かれて援軍呼ばれるのもうっとうしいしな。流石に1人で国1つ相手に喧嘩売ろうとは思わないし、どうしようかなー。









「オヤジ、酒を樽で2つ売ってくれ。後、このねーちゃん、ちょっと借りてくぞ」


 一度街まで戻った俺は、酒場に向かい酒代にはかなり余るほどの金を払って酒と女を用意した。作戦その5「籠絡作戦」だ。


「わ、私をどうするんですか……」


「いいから、黙って俺の言う通りにしろ。なあに、運が悪けりゃ帝国に捕まるだけだ。大した事ないだろ?」


 俺は女の首根っこを掴んで、施設に向かう。入口辺りで酒を振舞えば、馬鹿な兵士共は虫ケラの如く群がってくるだろう。そんな馬鹿共を尻目に進入するという作戦だ。


「いいか、失敗は死を覚悟しろ。明日の朝日を拝みたければ、黙って俺に言われた通りにやれ。な、まだそんな若い身空で死にたかねえだろ?」


「は、はいィィィッ!」


『どこの悪党だ、お前は……』





「皆様、お勤めご苦労様です。差し入れを持ってきました」


「差し入れ? そんな話は聞いてないが」


 俺は建物の影に隠れ、女の様子を窺う。心配? そんなもの、この山田には無用の長物である!


「お城の方に警備されてる方の気付けと言うことで、お酒を用意するよう承ったのですが」


「今は勤務中だ、飲酒など出来るはずがない。貴様、少し怪しいな? ちょっと詰め所まで来てもらえるか?」


 アイツ真面目か! もうちょっとこう、はっちゃけて生きろよ!! 


『普通の対応だと思うぞ?』


 女が兵士に腕を掴まれ、連行されそうになっている。ヤバイ! 見知らぬ女だが、捕まると流石に目覚めが悪い! 作戦変更だ!!


「おい! 帝国兵が勤務中に女に手を出してるぞ! 職務怠慢だ、責任者を呼べ!!」


 俺のとっさの機転により、この場を逃れ……られるはずもなく、


「不審者だ! みんな来てくれ!!」


 辺りにいた兵士が皆、こちらに向かい集まってきだした。しかし、これはこれで好都合!


「おつかれ、もう帰っていいぞ」


 女を後ろに放り投げると、集まってきた兵士に酒を振り撒く。呪いの水晶を漬け込んでおいた、毒入り酒だ。漬けておいた時間が短かったのが功を奏したのか、皆、腹を抑えて四方八方に散って行った。


 さあ、後は壊すだけ壊してさっさと撤収しよう――

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