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山田と援軍

 ――ワンコロ王国城門 物見台





「暇だな」「ああ、平和なもんだ」衛兵も全く働く気もなく、ぼーっと景色を眺めていた。それもそのはず、ここ百数年、王国が攻められたこともなく、魔物に侵入されたことすらない、完全な平和ボケだ。


 だが、その危機感のなさが巡る攻防の一手を遅らせる。終には、全てにおいて後手に回る結果となる。よって『城門を閉める』このような簡単な行動さえ、迅速に行うことすら出来なかった。









「全軍、突撃ィ!!」


 慌てふためけ、愚民共よ! 神の帰還なるぞ!!


 俺はゴロツキ、狼を引き連れ王都になだれ込む。兵は神速を尊ぶ、このまま城に突入するのだ!


 こんなことをする理由? ない! 理由などは弱者の言い訳! 強者であるこの山田は好きなときに喰い、好きなときに眠るのだ!! 


 だが、都民の反応は様々だ。慌てふためき、叫ぶ者もいれば、「何だ、狂人か……」と呆れている者もいる。最近、この俺のアイデンティティが消失している気がする。ちょっと自分探しの旅に出ようかな。


「市民を混乱に陥れる困者を捕縛せよ。いや、討ち取れ! 突撃!!」


 前方に武装した騎士団が姿を現した。サザーラントか、この神の道を塞ぐとは愚かを過ぎ、憐れなり! その不憫さ、貴様の死をもって許そう!!


「雑兵共が! 一息に吹き飛ばしてくれるわ!!」


「おのれが吹き飛べや! クソアホがッ!!」


 威圧を放とうとした俺の死角から、強烈な蹴りが飛び込んでくる。避けることも叶わず、大通り横へ蹴り飛ばされ、壁に激突する。もちろん壁は見る影もなく粉々に砕け散っている。


 この山田を蹴り飛ばすとは、暴虎馮河の蛮勇の如し! 貴様の命と釣り合いが取れると思うな!!


「なあ、何しとんのお前? 何で狼引き連れて攻めこんどるん? 真人間になれ言うたよな? なんやその禍々しい鎧、何で化け物なってるん?」


 やはり、馬鹿のブラドか。俺は拳を握り締め立ち上がる。だが、案ずるな。この策士山田、貴様に一撃食らわせる策など、とうに練っておるわ!


「まあ、落ち着け。これには色々とワケがある」


 紳士のような落ち着きを見せ、古い友人に会ったかのように温和に話しかける。この策士山田の餌食となれ!


「おお、そうか。ほんならそのワケ言うてみい」


 今だ! 俺は握り込んでいたモノをブラドに向かい、投げ掛ける。馬鹿め! 目潰しを食らえ!!


 しかし、そこに居たはずのブラドの姿はなく、その後方のサザーラントに命中する。あれ? 


「貴様! 何をする!!」と、怒り苦しんでいるサザーラントを尻目にブラドを探すが、時すでに遅く、


「不意打ちは食らわん言うたやろ?」


 後ろに回りこまれていた俺は背中へ連撃を受け、案の定蹴り飛ばされ、壁に激突する羽目になる。コイツ、ブーツに何か仕込んでやがるな?


「どうや、効くやろ? お前のその悍ましい武器に対抗する為に作った、風魔術をエンチャントした鋼鉄入りの特注品や!!」


 殺す気か! さっきから鎧着ているのに芯に響くと思っていた。もういい! 策とかどうでもいいわ! 物量で勝負だ!!


「お前、マジでふざけんな! 虫ケラみたいに潰れろ、クソ虫が!!」


 崩れた瓦礫を持ち上げ、ブラドに投げつける。その辺のヤツ等ごと潰れろ!





 その結果――









 今、俺と馬鹿はギルドでラスケイジを前に正座させられている。ちなみにゴロツキ共は俺を止めれなかった罰として、騎士団と大通りの清掃。シルバーウルフは城の番犬にするらしく、引き取られて行った。まあ、あの王なら何でもありか。


 しかしこのオッサン、超つえー。ギルドから飛び出したと思えば、落ちてくる瓦礫を一瞬で粉塵に変え、瞬く間に俺と馬鹿を組み伏せた。流石に勝てんと思った。


「お前等は何を暴れとるんだ!」


「ちょっと待ってください! 俺はこのアホが暴れてるから止めに行ったんですよ!?」


「お前も暴れただろうが、言い訳すんな、見苦しい」


「上等や、クソガキ!!」「お、やんのか? 白黒つけてやんよ?」そして拳骨を食らう。痛い。


「大体、何でお前は狼引き連れて暴れとるんだ!」怒鳴られる。


「なんとなくだ!」法に縛られんのがこの山田だ。それぐらい察しろ! そして拳骨を食らう。痛えんだよクソが!


「お前はこんなことをする為に、わざわざシバの街から来たのか!」今度はブラドが怒鳴られる。


「すんません……」ププッ、だっせぇ!


「上等や! 表出ろクソガキ!!」「お? 怒られて縮こまってる虫ケラが! オラ、かかってこい!!」そして拳骨を食らう。痛えつってんだろうが、ジジイ!


「お前等、こんなに仲悪くて大丈夫か? 共闘出来るのか?」


 ……何のことだ?





 ラスケイジの説明だと、友好国である共和国より援軍の要請があったらしい。急に海の魔物が増え暴れているらしく、国内の戦力では追いつかなくなった。そこで王国は騎士団を派遣、各ギルドも物資や戦力を提供。不本意ながら、俺と馬鹿も戦力に選ばれた。


「行きたいのは山々だが、俺がギルドを留守にする訳にはいかん。だから2番手のコイツに白羽の矢が立った。まともに渡り合えるお前もな」


 ちょうど海行きたかったから、別にいいけど。


「どうやって行くんだ?」


「騎士団とギルドのメンバーは戦力を温存する為、荒野を迂回するルートで、すでに出発している。お前等2人は問題ないだろ。残りの戦力を引き連れて荒野を横断しろ」


「まあ、このアホを待っとったから時間もないし、しゃーないですね」


「ああ、それとお前等2人は怪我してもいいが、連れて行くヤツ等には傷1つさせるなよ?」


「それは無理な相談だな。なんせ足手まといの虫が1匹いるからな」


「気が合うな。なんせ暴れるしか能のないボンクラがおるからな。虫らしく地べた這いずり回っとれよ?」


「そろそろ殺してやる。ツラ貸せ!」「おどれ、しばらく肉食えると思うなよ?」





 ラスケイジは思う。確実に人選を間違えたと――

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