山田破壊作戦
ホブゴブリンは激昂していた。
自分の配下のゴブリンが、口には毒キノコや毒草が詰め込まれ、鼻には2輪の花が生けられ惨たらしく殺されたのだ。
様子を伺っていた配下の報告によると、相手は人間らしい。
――人間如きが
――ヤツを必ず見つけ出せ
――俺の配下に手を出したこと後悔させてやる
「九頭龍閃!!」
フゥ……
一流の緋ムラーとして、俺は今日も飛天御剣流の特訓に余念がない。
俺が木の枝を振り回して遊んでいると、前方に10人ほどの緑色の小人に囲まれた男を見つけた。
何だろう、観光客同士のトラブルだろうか?
まったく、空気が読める男を自負する俺の様に、少しは周りに気を使ってほしいものだ。
だが、1級トラブル解決士の俺としては、首を突っ込まずにはいられない。そのトラブル、生活笑百科を毎週欠かさず見ている俺が、まぁ~るく治めてやる。
しかし、俺が首を突っ込むまでもなかった。緑色の観光客は全員が俺をガン見していた。
……照れるじゃないか。確かに俺はリバー・フェニックスに似ているが、俳優ではないし、死体も見つけられない。
サインはNO、記念撮影と握手までならと、断りを入れようとしたところ、俺はぐるりと緑色のファンに囲まれた。
なるほど、サインを貰うまでは逃がさないというわけか。これもスターの宿命。甘んじて受け入れよう。
そのうち、2人のファンがナイフと棍棒を手に熱烈なアタックを仕掛けてきた。
よかろう。ファンに対してファンサービスは重要である。相手になろう。
――なんだこれは。
最初はファンのアタックを如何に格好良く避けるか、――反復横とびなんかいいんじゃないかなと。
しかし、すぐ飽きてきたので、すべてを受け入れるプロレス方式に変更したんだ。
――痛くない。傷すらつかない。俺の身に何が起こっている?
2人から4人、4人から6人、最終的には全員にアタックされていた。
だがナイフで刺されても、棍棒で殴られても、俺を傷つけることが出来ていない。
これ進化じゃね? ガイアが俺に輝けと囁いてね?
だが、この時、俺は調子に乗りすぎていた。
何故、傷ついてないとわかる? 何故、素肌が見える?
俺の一張羅のジャージはボロボロだった。
――俺の目の前は真っ暗になった。