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山田と依頼

 ……金がない。


 有り金は全部シスターにやったのだ。完全な無一文である。これは早々に働く必要がある。ギルドに行ってみるか……





 ギルドは朝から賑わっていた。人、犬、猫いろいろな人種で溢れかえっている。鈴木さんの奥さんに似た人を見かけたが、恐らくオークではない。多分、人間だろう。


 仕事の請け方は簡単だ。壁に貼り付けてある依頼書を受付に持っていくだけだ。後は受付が全部処理してくれる。

 俺は依頼書に書いてある内容はわかる。『薬草採取』『護衛任務』『ゴブリン討伐』など様々だ。だが、魔物の強さがわからない。


 魔物の強さはA~Fにランクづけしてあり、Aの上にSクラスがいる。Sクラスはそれはもう何かヤバイらしい。シバの街から一緒に来たゴロツキ共に教えてもらったが、あいつ等の知能ではこれが精一杯の説明だろう。


「チィース、ヤマダさん」


 噂をすれば、何とやらだ。


「お前等、シバに帰ったんじゃないのか?」


「いやー、帰るのも面倒ですし、こっちの方が仕事に幅がありますからね」


「ヤマダさんも仕事探しに来たんスか?」


「ああ、何か楽して大金稼げる仕事ないか? 10年ぐらい遊んで暮らせるやつ」


 働いたら負けと思っているが、問題ない。もうすでに負けている。


「流石にそんな実入りのいい仕事はないですが、ヤマダさんならAクラスの魔物は問題ないと思いますよ」


 もう1人のゴロツキが俺の前に一枚の依頼書を持ってきた。


「そこで提案なんですが、この依頼、俺達もお供させてもらえないッスか?」


 依頼書には『シルバーウルフ討伐』と書いてある。動物虐待じゃないのか? シルバーウルフって名前のオッサンなら別にいいけど。


「シルバーウルフ自体はBクラスの魔物なんですが、こいつ等は群れますんでAクラスに登録してあるんス」


「恥ずかしながら俺達、今までAクラスの魔物と戦ったことがないんですよ」


「そこで、ヤマダさんならAぐらいなら何の問題もないわけッスから、今後の勉強の為、連れて行ってもらいたいんスよ」


 まあいいか……本当は明らかに魔物やってますよ! って見た目のほうがやりやすいんだけどな――


 シルバーウルフは草原と森の境界辺りでよく出没しているらしい。旅人やキャラバンが襲われるのも大体その辺りだと言う。

 キャラバンも護衛は付けているのだが、運良く逃げ延びた者の話では、少なくとも10匹以上の群れで襲い掛かってきたと。


 出没エリアまでの距離は、王都から約3日ほど。俺1人なら1日で着く距離だが、ゴロツキ3人が一緒だ。

 その所為か、食料等の準備は3人が全部揃えるらしい。恩に着てやる。感謝しろ。


「王都から往復で6日。探索で4日。10日分の準備はしていきます」


「まあ、運悪くシルバーウルフに遭遇出来なくても、森が近いから薬草や毒草採っていけば、そんなに痛い出費にはならないッスよ」


「じゃあ、明日の朝一出発ってことでオッケーッスか?」


 オッケーッス。さあ、することなくなっちゃったなー。何して遊ぼうかなー。





「で、遊びに来たぞ。後、腹減った。何か食わせろ」


「遊びに来る場所じゃないと思うんだがな……」


 することのなくなった俺は、王都という人波の迷宮を当てもなく彷徨い続け、遂に闇ギルドにたどり着いた。


「おい、また狂人きてるぞ……」「惨殺しまくった所によく遊びに来れるよな……狂人だからか……」遠巻きに俺の様子を窺っているが、リーダー以外は全然近づいてこない。

 何となく瘴気を撒き散らしてみると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「……何やってんだ。戦う理由はもうないだろうが」


「まあ、堅いこと言うな。暇なんだ。構ってくれ」


「狂人、暇ならウチの依頼受けてくれないか?」


 スーツの男が、俺にパンと干し肉を投げて渡してきた。


「犯罪は嫌だぞ?」


「犯罪じゃないが、誘拐みたいなもんだな。帝国の諜報員らしい。王国からの依頼だ」


 あの王なら闇ギルドでも何でも使いそうだな。見た目からもう堅気じゃないしな。


「その諜報員かなり腕が達つらしい。ウチの腕利きが何人も誰かさんに殺られちまったから人手不足なんだわ」


 ほほう、そんな猛者がいるのか。ぜひ一度お会いしたいものだ。


「報酬ははずむぞ。受けてくれるか?」


「ああ、報酬はこれとそこそこの金、孤児院にでも放り込んどいてくれ」


 手にしたパンと干し肉を平らげる。もう次の仕事も決まってるしな。


「で、何処に行けばいい?」


「潜伏先は調べてある。今日の夜中にここへ行ってくれ」


 スーツの男に場所を書いた紙を手渡される。ここは工業区画か。そういや行ったことないな――

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