山田と新教会2
「貴様、何者だ? ここは貴族、関係者以外立ち入り禁止だ。今すぐ立ち去れ」
門番の僧兵達が高圧的に言い放ち、俺に詰め寄る。
「お前等のその矮小なシジミ目は節穴か? どこから見ても貴族にしか見えんだろうが」
――使うごとに神秘性を増す、釘バット。恐らく今まで殺された者達の想いを乗せているのだろう。
――ところどころ錆び付き、赤黒く鈍い光沢を放つ、鎧。本部に祝福されているのだろう、俺の身を守護ってくれている。
――止め処なく溢れ出る、瘴気。まさに神に差す後光の如き。
――兜にしがみつく、子猫。邪魔だな。
迂闊! 貴族ではなく、神にしか見えんではないか!
「待て、その男は俺の付き添いだ」
サザーラントが会話に割って入ってくる。ついて来たのか。
「王国第三騎士団長サザーラントだ。司祭殿より教会周りの警備の相談を受けている。通してもらおう」
「しかし、その男の頭にしがみついているのは、獣人では……」
「アクセントだ」
僧兵達が「はあ? 何言ってんだコイツ?」みたいな顔で俺を見るが、
「鎧のアクセントだと言っている! お前等には獣人に見えるのか!!」
と、威圧的説得をする。流石は茨城のネゴシエイターと呼ばれた、この山田。平和的解決の模索に余念がない。
俺の交渉術により、訝しむ僧兵達を強引に黙らせる。何事もなかったように教会内に入ると、当てもなく突き進む。人の気配はするが、姿を現す様子はない。恥ずかしがり屋かな?
「暴れられるよりは大人しく通させて、監視していたほうがマシだ」
ふふん、このツンデレが!
「結局、お前は何の用事があるんだ。見学しに来ただけか?」
「司祭に会う。会って古い教会に手出しするなと交渉する」
無論、一方的な物理的交渉だが。
「馬鹿なこと言うな! そんなことをさせる為に連れて来たわけではない!」
いや、お前勝手について来たんだろうが……
「それに簡単に会うことなんか出来ないだろう。ここは普通の教会じゃないんだ」
「問題ない。俺に策がある」
俺は大きく息を吸い、腹の底から叫ぶ。
「出て来い、生臭司祭! この山田が直々に足を運んでやったぞ!! 5秒数える内に姿を見せなかったら、教会を破壊する!! ――5!! ――4!! ――3!!」
「馬鹿野郎! なんてことをするんだ!!」
サザーラントが俺を止めようとするが、ふふん、もはや手遅れよ! 0と叫んだ時点で破壊してくれるわ!
「おやおや、これは何の騒ぎですか?」
ほら出て来た。――ドブネズミが。
「結局、山田殿は見つからなかったでござるな」
闇ギルドのリーダーの話では、子供は3人、教会地下の一室に捕らえられているとのこと。進入経路は裏の食料運搬用の出入り口。子供と面識がある中野殿と闇ギルドの2人で救出に向かうでござる。山田殿には教会前で陽動を頼みたかったのでござるが……
「中野殿、手筈は問題ないでござるか?」
「大丈夫だ。アレは王に渡してきた」
「では、陽動は拙者が引き受けるでござる。しかし、やけに教会が騒がしいでござるな」
先行していた闇ギルドのリーダーが戻ってきたが、様子がおかしいでござるな?
「おい、中で何故か騎士団の男とヤマダが、司祭と揉めているぞ?」
「……は?」
「お前が司祭か? 一度しか言わないからよく聞け。向こうの教会から手を引け」
「あなたが最近噂になっている、異世界人のヤマダさんですね? もっぱら、狂人という噂ですが。それに神聖な教会に薄汚い獣人を入れるなど、不愉快極まりないですね。門兵は何をしていたのでしょうか?」
「失礼なヤツニャ! タロウ、懲らしめてやるニャ!!」
「おい、取り消せ。地面に頭擦りつけて詫びろ。殺すぞ」
「やめろ! 貴様も煽るな!!」
サザーラントがまた割って入ってきた。この目立ちたがり屋が!
「ゲーガン殿。神聖なる教会にて騒動を起こしたこと、先にお詫び申し上げます。ですが、王国は獣人、奴隷、すべて平等に人権を認めております。市民を護る者の末端に籍を置く身としては、先程の発言、見過ごすことは出来ません。取り消して頂きたい」
コイツ、ゲーガンって名前なのか。どうでもいいけど。
「あなたは、第三騎士団長のサザーラントさんですね? これは法王庁により、神により決められたことです。武人如きが異見するは、超越行為に値しますよ」
神? 俺か? そんなこと決めたっけ?
「ですが、教会の所在は王国故、軽はずみな発言は控えて頂きたい」
「神に弓引く愚か者達には神罰が下りますよ?」
そうゲーガンが言うと、物陰から10名ほどの武装した僧兵が姿を現し、俺達を取り囲んだ。
「これがあなたの仰る神罰ですか?」サザーラントも剣を抜く。
「じゃあ、俺に神罰とやらを当ててみろ。俺が死んだならお前等が正しい。お前等が死んだなら俺が正しいってことだな。俺がお前等に神罰を下してやるよ」
「やめとくニャ! 僕が1番タロウをうまく使えるんニャ!!」
……猫降りろ




