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山田と新教会

「申し訳ないでござる。向こうの教会と闇ギルドが手を組んでいる線で洗っていたでござる」


「ああ、まさか教会の破壊を依頼したのが、シスター本人とは夢にも思わないだろうしな」


 闇ギルドから来たスーツの男、山田殿に代わり、わざわざ説明しに来てくれたでござるか。


「ウチのリーダーが知っていたことはこれだけだ」


 なるほど、先程、教会の周りをうろついていた怪しげな男。締め上げて吐かせた内容とほぼ一致するでござるな。


「やはり、向こうの教会が黒幕でござったか……だとすると、一刻を争う事態でござるな」


「ああ、そこに転がっているヤツだな」スーツの男が、先程捕らえた怪しげな男を指す。


「監視から何の連絡もなければ、向こうの教会もこちらに何か動きがあったと感づくでござろう。中野殿、夜分遅いでござるが、レトリバー王に事の次第を伝えて、協力を願えぬでござるか?」


「ああ、わかった。すぐに行って来る」


「後は、子供達の囚われている正確な場所がわかればいいのでござるが……闇ギルドの協力は願えるでござるな?」


「問題ない。ウチのリーダーが調べている。救出は無理だろうが、場所と最短ルートぐらいは何とかしてくれる」


 それは僥倖。後は時間との勝負でござるな。敵が気付く方が早いか、闇ギルドのリーダーの帰還が早いか……


「アレはどうするんだ?」


 スーツの男の視線の先には、獣人や人間の子供に埋もれて寝ている山田殿が見える。


「今はまだ寝かしておくでござるよ。必ず山田殿の力が必要な時が来るでござる。今、起こしたところで話がややこしくなるだけでござる」


「……違いない」


 さて、後は救出作戦を練るでござるよ――





「我、目覚めたり!」


 うむ。清々しい朝だな。しかし、どうにも寝苦しいと思ったら、小動物やら人間のガキやらが俺に群がって寝ていたのか。風邪を引くといけないので、頭まですっぽり毛布を被せておこう。……しかし、誰もいないな。昨日、重要なことを聞いた気がしたが、忘れた。まあ、忘れるぐらいの内容だったということだ。


「タロウ、どこ行くニャ?」


 子猫が一匹起きてきたので、朝の新鮮な空気を吸う為に散歩に行く、と伝えると付いてくるらしい。





「音速を超えるニャ! セブンセンシズに目覚めるニャ!!」


 俺は今、街中を駆け抜けている。それはもう全力でだ。理由はない。いつもの如く、衛兵共が沸いてくるが、俺の敵ではない。


「神の行く道を塞ぐ塵芥共よ、我が威光の前に平伏すがよい」


 いつもの如く、威圧のみで蹴散らす。


「すごいニャ! ここまでくると気持ち悪いニャ!!」


 ふふん、もっと褒めよ。俺は褒められて伸びる、伸びしろタイプだ。


 だが、いつのまにか見知らぬところに迷い込んだようだ。辺りにはえらく豪勢な屋敷が並ぶ。区画は整然としており、金を惜しむことなくつぎ込んだであろう、精工な彫刻なども通りに並んでいる。俺は缶スプレーか油性マジックを探す為ポケットを弄るが、不覚、鎧にはポケットがない。今度作ってもらおう。


 そういや、四次元ポケットの正式名称って『ロボット専用四次元空間内蔵秘密道具格納ポケット』って言うんだぜ? などと、未来の猫型ロボットに思いを馳せている俺の視界に、ひときわ豪奢な建物が入る。俺、絶対あそこ行くんだ――


「待て! 貴様、ここで何をしている!!」


 いつぞや俺に絡んできた、……えーと、


「第五……」


「王国第三騎士団、騎士団長サザーラントだ! 王国には第三までしか騎士団はない! それぐらい知っておけ異世界人!!」


 コイツ、名乗ってなかったよな?


「あの建物は何だ?」


「貴様、話を聞いているのか! まあいい、アレは王国の有力貴族により建てられた教会だ。司祭も法王庁より直接派遣されている。まあ少々、俺は好きになれんがな」


 なるほど。じゃあ記念に壁に名前でも彫ってくるか。


「どこに行く気だ」


「あの教会に遊びに行く」


 俺の答えにサザーラントは苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「……入れんぞ。貴族以外は門前払いだ」


 どうゆうことだってばよ?


「言った通りの意味だ。一般人はあの教会に立ち入ることが出来ん。そもそもここ自体が貴族の住む区画だ。一般人が足を踏み入れることは多くない」


「特に、お前の頭にしがみついている獣人の子供。法王庁は獣人を認めていない、完全な人族主義だ。古い教会の孤児院では獣人の子供も預かっているらしいが、誰かに密告されれば、ただでは済まんだろう」


 あのシスターよっぽど周りに好かれてるんだなー。


「わかった。じゃあ行って来る」


「入れんと言ってるだろうが!」


 壊してでも入る。乱世の怒りが俺を呼んでいるんだ――


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