山田とスキル
2人が帰った後、教官らしき男とマンツーマンでの訓練が始まる。
教官の名はシルベスター。黒髪長髪の目尻が垂れ下がった男だ。
訓練の内容は至ってシンプルだ。俺のスキルがどういうものなのか、有用なものであれば伸ばしていき、危険なものであれば制御出来るようにする。中には、スキルを使うことでリスクが発生することもあるらしく、その辺りも確認するみたいだ。
「ヤマダ、まずはスキルを使ってみろ」
シルベスターが、俺に向かってそう言うが……
「これ、使おうと思って、使えるモンなのか?」
「ああ、使える。お前のスキルはどんな時に発動した?」
そうだな、怒ったときかな? オコ、激オコでは発動してないと思う。プンプン丸ぐらいか?
「穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めたとき、発動したな」
「まあ、言ってることの意味はさっぱりわからんが、要するに激怒したときに発動したでいいな?」
うん。
「じゃあ、激怒してみろ」
じゃあ、激怒してみろってアンタ……。『怒ってみてください』『はい、わかりました』それで激怒出来るヤツは何かの病気だと思うぞ?
「怒る要素がないんだが……」
「そうだな。じゃあ……」
突然、部屋に乾いた音が響いた。そう、俺は今、この男にビンタされたのだ。だが、俺も大人だ。いちいちこれぐらいのことでキレてなどいられない。俺キレさせたら大したモンだよ。
「ほう、簡単に怒りだすと聞いていたが、それはスキルのレベルアップの所為か?」
「おう、少々のゆとりが心に出来た感じだなガハッッ!!」
この野郎……、人が喋ってる最中に殴ってくるとは……。
「まだ怒り出さんか。これでもか?」
シルベスターは俺の顔を鷲掴みにして、そのまま地面に頭から叩きつけた。やり過ぎだこの馬鹿が――
俺が落ち着いた頃には、部屋の壁や床には所々に穴が開いており、天井にはシルベスターが突き刺さっていた。死んだかな?
「なるほど、ある程度は理解出来た」
そうくぐもった声が聞こえると、シルベスターが天井を破壊して降りてきた。オッサンすげえな。
「これは強化系のスキルだな。激怒したときに身体能力が数段跳ね上がっている。リスクは近くにあるモノ、目立つモノ何でも破壊しようとする。うむ、制御しろ。むしろ使うな」
「スキルレベルが上がることで、怒りにくくなったと仮定すると、それは単にエネルギーを溜め込んでいる状態でしかない。いざ爆発したときの威力が増すだけだ」
ふーん。スキルレベルが上がれば上がるほど、キレたときに強くなるってことか。まさに狂戦士、超ウケる。星とか破壊出来るようにならないかな?
「スキルというよりは呪いに近いな。……いや、待てよ?呪いか」
シルベスターが1人で三文芝居を始めたんだが、どうしよう。今なら鳳凰幻魔拳が当たるかな?
俺が、『そういや聖矢達の父親って最低だよな、世界中で子供作った挙句、放置だもんな』等と、青銅聖衣に思いを馳せながら白鳥の真似して羽ばたいて遊んでいると、シルベスターが何かを思いついたように話しかけてきた。
「ヤマダ、お前ちょっと呪われてこい」
「嫌に決まってんだろ。お前が呪われろ」
自ら進んで呪われる馬鹿がいるなら見てみたいものだ。
「すまん、言葉が足らなかったな。お前のスキルを呪いで制御するということだ」
呪われたくないという話なんだが……
「まあ、魔術研究所に行け。所長に話は通しておく」
今度は魔術ナントカか……。メンドくせぇ――
すいません、今までの話は辻褄合うように書き直していきます。




