コウくんに関することパート2
公園闘争の話をしよう。
小学二年生と四年生、二つの勢力が何やかんやで揉めたためにそれは勃発した。当時は小学二年生でさも渦中の人物に思えるかもしれない。だが実際は訳も分からず巻き込まれたに過ぎない。事態を大きく深刻に見せるための数合わせにされた可能性は否めない。
「やめないか」
響く第一声。音をなくす超能力のように静寂が蘇った。掴み合いの乱闘に発展していた唯ひと組でさえ動きを止めて息をのんだ。蛇口から滴り落ちる水音が耳に障るのみであった。
アイドルのような長髪。その場の誰よりも大人びて見える少年であった。
「おい」
人混みに揉み倒されて伏していた二年生を引き上げて立たせてやった。
数合わせの人々が興味をなくし見る見るその場からいなくなる。バツが悪くなったのか。騒動の中心にいた連中もひっそりと姿を消していた。
「今日はもう帰れ」
行き場をなくした残りものたちも催促に慌てる。
少年は小学六年生で、有体に言えば不良であった。レザーのジャケットなど高級そうな身なりで、ネックレスやチェーンは周囲の少年たちを威圧していた。誰も関わり合いになりたくないし、親さえ彼の話には良い顔をしなかった。
「高城くん」
二年生は、少年の名前まで口に出来た意気は素晴らしい。だがそれより後。本当に言いたいことに手が届くことはなかった。高城少年は一瞥もくれてやらないまま、そそくさと公園を去っていった。
それからしばらく歩いて、お母さんに決められた時間より三十分が過ぎた。
「いつまで歩くの」
高城少年は答えない。
「まだ家は遠いの」
少年の歩みに対して二年生の足は棒になってしまって、帰り道を行けるのかという不安が芽生えていた。しかし逆方向に歩いても門限は一時間半オーバー。二年生は諦めムードで今夜は帰らない、半ば家出の覚悟を決めていた。
「隣町のゲーセンかあ──」
高城少年は黙々としていて慣れた様子であった。アーケードゲーム筐体の一つを選んで腰を下ろす。財布から繋がるチェーンがジャランという音を立てた。
ドーンオブロボティクス(DOR)。ロボット格闘ゲーム。
「すげえドンロボだ。置いてあるの初めて見た」
「うるせえな。気が散るんだよ」
向かいに座っていた青年が怒鳴り散らす。かなり気が立っている様子だ。
「ブレイブファイターとか。まだ使うやついたんだ。笑えるわ」
だんまりを決めていた高城少年も舌打ちをした。
怒り心頭の青年は立ち上がりかけるが、筐体越しに見える相手を前に思い直したようであった。その間も高城少年は、一度として画面から目を離さなかった。軽快な音楽を背景に、飛行音と射撃音。青年も慌てて画面に注意を向け直した。
「むやみに飛ばない。そして周到に着地を狙うべし」
懲りずに独り言を繰り返す。しかし見る見る内に表情が歪んでいく。どうやら勝敗が決したようである。
今にも殴りかかりそうな形相。実行に移されないのは少年の風貌に起因すると見て間違いない。
「凄え、本当に凄え──」
心なしか、高城少年は満更でもない。
その時から、斉藤マコトは高城コウに付き従うことを決心した。




