第56話
青空の下で今、大勢の座っている生徒の前に立つ俺と奈緒。
グランドに居るため皆タオルを持参し、流れる汗をふいている。
「どもー、黄ブロック長の火野螢です。みんな宜しく!」
俺の声に・・・
《はぁい!》
うむ、元気な返事で良いのだが・・・まず言わせてくれ。
・・・多数決なんて理不尽だ!
と言うわけでブロック長っす・・・はい。
「副ブロック長の下田奈緒でぇす。ヨロシクね♪」
《よろしくー!》
おいコラ男共!
奈緒の時だけ大きな声で返事をするな!
「とりあえず──」
話しを進めようとしてあの男の声に遮られる。
「赤ブロック長の佐藤隼人だぁぁああぁあ!皆・・優勝したいかぁ!!?」
《イエーィ!!》
「「!?」」
隼人!?
なんちゅう盛り上がり!
負けられへん!!
「ねぇ・・・私、隼人にだけは負けたくない。」
その声を聞いた男共は・・
《赤には負けねぇーぞコラァ!!》
赤ブロック長にガンつける。
隼人・・気付こうよ。
「とりあえず俺の話しを聞いてくれ!」
男共の2割が視線を俺に戻した。
・・・悲しい・・。
「螢の話しを聞いてください!」
《はい!》
軍隊の様に視線を戻す男共。
・・悲しいを通り越し虚しく思いますネ。
「早速だけどブロック対抗リレーの選手を決めたいと思います。」
数分後・・・俺と奈緒は完璧に多数決が嫌いになった。
「今日はこれにて解散。」
《ありがとうございました!!》
瞬く間に散っていく我がブロックの生徒達。
「はぁ・・。」
ため息を吐くと背中に衝撃が走った。
「痛って!!」
「ため息つかないの!もう決まったことには仕方ないんだし・・・。」
「はい・・・。」
そうだな・・。
決まったものは仕方ないな。
うっし!
「お〜い、お疲れ。」
前方から笑顔で走ってくる敵総大将。
「「何だよ敵。」」
「俺が何かしましたか!?」
いや・・何もしてないよ?
ただの八つ当たりだ。
「みんなお疲れ様。」
「お疲れ♪」
和樹と美帆が俺達と合流する。
「おう、2人もお疲れ。」
「お疲れ様。」
「ちょ・・反応が違い過ぎません!?」
あぁ!?
「「「「黙れ敵!」」」」
「・・・ぐすん・・。うがぁぁぁああぁ!!」
隼人は発狂した。
もちろん俺達は見捨て、その場から去った。
《ナイスシュート!・・・ドンマイ!・・・ドンマイ!》
声が響き渡る体育館。
只今、部活真っ最中なのだが・・・
「兄貴・・隼人さんは?」
「知らん。」
隼人が来ていません。
心配そうな優だが、あの発狂した隼人を見てしまったら・・うん、絶対もう心配しないと思うね。
「あ、そうだ。兄貴・・俺ブロック対抗リレーで白代表で出るから。」
・・・なんですと!?
「まてまて!俺も黄色代表なんだけど!?」
「だと思った・・。」
「赤代表は俺だぜ?!」
「「!?」」
突如として姿を表した隼人。
・・・お前は何がしたいんだ?
「監督〜!今になって隼人が来ました!!」
「ちょ・・!」
真っ青になる隼人。
・・・ウケる。
「ぬぅあにぃぃ!?」
ズドドド・・・と音をだし突進してくる猪・・もとい監督。
「佐藤!」
「はい!」
お〜膝が震えてる。
「体育館を20往復!」
もっと酷いことを想像していたのだろう。
隼人の顔がパッと輝いた。
・・・・気にくわない。
「監督、隼人には20往復は楽だと思います。」
「兄貴・・・。」
「ハップニィィング!?」
疲れた顔の優と騒ぐ隼人。
監督は・・頷いている。
「そうだな。佐藤、プラス腕立て、腹筋、背筋、スクワットをそれぞれ100回ずつな?」
「クレイジィィイ!?」
なかなかの鬼具合だな。
「さっさとしないか!」
「うがぁぁあ!」
なんとも騒がしいコンビだ。
翌朝、いつもの様に学校にきたわけだが・・・。
「せーの!っで螢は右足をだして。」
「ま、まっかせろ。」
仲良く肩を組む俺と奈緒。
近距離のため少し意識してしまう。
あ、今グラウンドの端で2人3脚の練習中です。
「「せーの!」」
まず最初の1歩だけをひたすら練習する。
意外とこれ重要なんだぞ?
「そろそろ歩いてみない?」
「だな?じゃ〜いくぞ・・・すぅ〜・・はぁ〜・・・」
大きく深呼吸。
とくに意味はない。
「「せーの!1・・・2・・・1・・・2」」
流石に長い付き合いなだけあり、息はぴったしのようだ。
「「遅い!」」
「な!?」
後ろから走ってきた和樹と美帆に追い抜かれた。
2人の足は鉢巻で結ばれている。
「「楽勝だね(だわ)」」
基本負けず嫌いな俺達。
奈緒の瞳を覗くと炎が見えた。
「「抜き返す!」」
もはや掛け声なしで爆走。
徐々に2人に接近し──
「な!?」
「えぇ!?」
直ぐに抜き返した。
・・俺達の勝ち──へ?
「「はぁぁぁあ!!」」
抜き返したはずなのに・・気づけばまた前に2人がいた。
「「僕(私)たちの勝ち!」」
声からして2人は勝ち誇った表情になっているに違いない。
でも・・・
「奈緒、ペース上げるぞ!?」
「うん!!」
また抜き返した俺達。
だがまた抜き返され・・・と繰り返していると、気づけば俺等4人はグラウンドの先生が作ったばかりのコースを走っていた。
「いい加減にしないか!」
と言う先生の怒鳴り声が耳にはいるまで走りつづけた俺達だった。
次回は体育祭本番の話にしたいと考えています。只今執筆中ですので、楽しみにしていてください。又、《メモリー〜君と過ごした日々〜》もヨロシクお願いします。