第55話
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「お袋!優!ちゃんと起きろよ!?」
習慣となってしまっている2人を起こすという行為。
2階からは2人の気の抜けた返事が微かに聞こえた。
「行ってくる。」
ドアを開くといつものように奈緒がいた。
「螢、おはよう♪」
「おはよー、奈緒。」
互いに挨拶を済ませると肩を並べて歩き始める。
通学中は大抵、昨晩のテレビの内容やバスケなどだ。
毎日同じやり取り。
だが俺は飽きない。
楽しいから・・・奈緒と話すことが。
嬉しいから・・・奈緒と一緒に時間を過ごせることが。
「でね昨日ママが──」
いつの間にやら話の内容は奈緒の母親のドジな話になっていた。
話をしている奈緒は楽しそうに笑顔だ。
その笑顔が俺は大好きだ。
教室に入るとバカップルと和樹が楽しそうに話をしていた。
「おっはよー♪」
奈緒が3人挨拶する。
「おはよう奈緒!」
美帆が奈緒に抱きついた。
ム・・・羨ましい。
と思っていると隣からスッゴい視線を感じた。
やはり・・お前からの視線か。
すぐそこから俺を睨んでいたのは隼人だった。
睨む相手は俺じゃないだろ?
と理不尽に思えたので
「ゲフォ!?」
とりあえず鳩尾を殴っておいた。
もちろん隼人の鳩尾だ。
「何しやがる!?」
「やっぱオマエ回復早くなってるわ・・・。」
「皆席につけぇ〜。」
教室に入ってきた担任の声を聞いて、隼人は舌打ちをしつつ自分の席に戻っていった。
そして朝のホームルームは始まった。
ホームルームでの話などは聞いてなくても良いような話である事が大半なので、隣の席である奈緒に話しかけようと首を曲げたときだった。
「皆分かっていると思うがもうじき体育祭だ。と言うわけで・・・まず男どもクジ引け。引いたクジの色がteamだからな。」
首は再び前を向いた。
・・・・体育祭の事忘れていた。
そして先生・・・発音いいっすね。
担任の話を聞いた生徒の中には、俺と同じく『そう言えば!』と言う顔をしている者がいる。
すぐ隣にも・・・同じみたいだ。兎に角、担任に言われたとおりに、まず男子生徒がクジを引いていく。
「次、火野。」
名前を呼ばれたので教卓の前に移動する。
教卓には当たり前だが担任がおり、箱を持っている。
「早く引きなさい。」
「はぁい。」
箱に手を入れ中にある物・・手触りで紙と判断できた。その紙の1枚を手に取り、箱から取り出した。
黄色の紙が姿を見せた。
ブロックの色は赤、青、黄、白の4種類あり、この紙の色は自分の所属するブロックの色を表しているのだろう。
体育祭を詳しく説明すると学校側の『他クラスや別の学年の生徒と親睦を深めてほしい』と言う願によりクラスメートがバラバラの体育祭となっている。
紙を持って席に戻る途中で奈緒と視線が交わった。
「何色だった?」
イスに座るや速攻で聞いてくる奈緒。
・・・スッゴく迫力があります。
「黄色だ。」
「マジかよ・・・・。」
と声がしたので奈緒のいる方向と逆を向くと・・赤の紙を手に持つ隼人が立っていた。
「螢も和樹も敵かよ・・・ツまんねぇ〜!」
「まぁまぁ。良いじゃないか?たまには僕たちがバラバラになって戦うのも。」
爽やかな笑みを浮かべながら登場した和樹は隼人の肩に手を乗せた。
「でもよ・・。」
隼人は余程バラバラになるねが嫌な様子だ。
そんな俺達をよそに、クジは既に女子の番になっていた。
キャ〜キャ〜と女子楽しそうにクジを引く。
そんな雰囲気の中・・・ただ1人だけが異様なオーラを発している。
「なぁ・・奈緒だけピリピリとしてないか?」
俺がそう言うと隼人と和樹は奈緒を見る。
そして直ぐに視線を奈緒から逸らした。
「あれ・・どうかしたのか?」
「ぷっ・・くくく・・なんでも・・ねぇ・・くっ。」
そして笑いを堪える隼人。
和樹をチラ見すると隼人同様だった。
何笑ってんだコイツら?
「いただきます。」
奈緒から受け取った弁当を食べる。
・・・うん
「相変わらず美味い。」
今いる場所はグランド付近の芝生。もちろんビニールシートを敷いている。
「ありがとう。」
ニコニコ笑う奈緒。
いや・・朝から笑っている奈緒。
「ゲホッゲホッ・・兄貴は何色になった?」
少し涙目の優。
今日も相変わらずの味なのか・・?
「黄色だ。」
「げっ!?敵じゃん・・他の人たちはどうなってんの?例えば・・魂の抜けた顔の隼人さん。」
隣を見てみると朝から同じ顔をしている隼人が座っていた。
いい加減に正気に戻っていただきたい。
「俺と奈緒は黄色。隼人は・・赤。美帆と和樹が青だ。」
「はかあはんにゃさおひてふんへすね?」
愛ちゃんはパンを頬張りながら言葉を発する。
たぶんだけど・・・こう言ってたんだと思う。
『だからあんな顔してるんですね?』
そうだよ、美帆と離ればなれがショックだったらしくてあんな顔してるだよ。
美帆は気にしてなくて元気だけどな。
「愛!食べながら話さないの!」
紫織ちゃんに注意され愛ちゃんはパンを飲み込んだ。
「ん!?く・・!み・・み・ず。」
・・・ミミズ?
何故に??
て言うか顔が青白くなってるような気が・・・。
「ほら!水。」
優が持っていたペットボトルを愛ちゃんに渡す。
なるほど・・水が欲しかったのか。
受け取った愛ちゃんは豪快に水を飲み干していく。
「ぷはっ!ありがとー!」
「おう。飲み終わったのなら返せ。」
「え・・・?」
固まる愛ちゃん。
「お〜いどした?愛?」
美帆がペシペシと愛ちゃんの頬に平手打ちをする。
「これって・・優の水?」
叩かれた頬がワンダフル・・ってな感じに赤い。
「は?そうだけど?」
「にゃ?!」
猫が君臨した!
・・・じゃなくて、愛ちゃんの顔が一気に紅くなり、頬の赤さが分からなくなった。
「じゃ・・か・・かかかか」
「間接キス?」
美帆がブラックな笑みでそう口にした。
「にゃーー!?」
猫 再 臨 !
──ゾクッ!
殺気だと!?
ま・さ・か・・この殺気は・・・??
ふと優の向いてる反対方向を見てみると・・・ものごっつう愛ちゃんを睨む紫織ちゃんがいた。
「下田妹よ・・まぁ落ち着け。」
いつ間にやら姿を現した生徒会長様が紫織ちゃんの隣に座った。
「──キッ!」
だが紫織ちゃんは生徒会長を睨む。
すると生徒会長はため息を吐いて、立ち上がる。
「はぁあ!」
と言いながら手刀を紫織ちゃんの首に振り下ろす。
「うっ・・・。」
直撃した紫織ちゃんは・・気を失った。
紫織ちゃんは気を失ったために前へ倒れる──が生徒会長がガシッと受け止める。
「ふむ、我ながら完璧だ。」
素直な感想は以下の通りです。
とても恐ろしい!
紫織ちゃんを生徒会長はゆっくりと横にした。
「あれ?何で寝てんだ?」
今頃になって気づく優。
ちゃんと見てろよ!と思いますね。
「昼寝ではないのか?」
「ぅお!?早苗さん?!・・いつ来たんですか?」
「なんだ?私に来てほしくなかったのか?」
そんな会話を聞きながら今日の献立を考える俺だった。