第54話
久しぶりである早めの更新です。
思い出した・・・。
あの時、私を背中に抱えて帰った人は螢さんではない。
今、目の前にいる彼だ。
「結局、財布忘れたから電話できないで家までおぶって帰ったんだけどな。」
「・・・・。」
何も言えない。
私は・・・私は忘れていた。
大切な事を・・・忘れていた。
そして間違った記憶
・・最低だ私・・・。
「バスケをしない理由は約束を守り抜くためだった。・・本当はバスケが大好きだ。」
「・・・ごめんね。」
「紫織が謝るのは間違っている。謝らないといけないのは・・俺だ。俺は・・・約束を破った。本当に悪かった。ごめん!」
優は頭を下げて謝っている。
「私は約束を忘れていたんだよ?それに優の大好きなモノまで私は奪っていた・・。謝るのは優じゃない。私だよ。ごめんなさい!」
私は頭を下げた。
分かってる。
謝っても、謝っても謝りきれない事だって。
結局、私はずっと近くに居てくれた優のことを私は何も分かっていなかった。
私は・・・楽しかった。
毎日が凄く楽しかった。
日々の思い出には必ず優の笑顔あった。
でも・・・・私は気づかなかった。
違う、気づけなかった。
笑顔の裏にある優の思いと苦しみを。
「頼むから顔を上げて?」
「・・・ごめんなさい。」
「紫織?」
「ごめんなさい!」
「もう・・謝らなくて良いから。」
私は頭を上げようとして・・その場に座り込んだ。
「おい!?どうした!??」
優の焦ったような・・ううん。
心配している声が耳に入ってきた。
でも私は絶対に顔を上げられない。
「・・・何でも・・ない。」
泣くなんて行為は余計に彼を心配させるだけなのに・・そう思っているのに涙はあふれ出てきてしまう。
「何でもないわけないだろ?」
「本当に・・・何でも・・ない・・・から。」
呼吸がウマくできなくなってきてしまった。
「・・紫織??」
もはや返事すらできない。
もう・・泣いている事はバレているはず。
不意に何か温かいモノが頭に───これは優の・・・手?
うん、絶対にそうだ。
私が泣くと優は時々頭を撫でてくれる。
すると自然と私の涙は止まってしまう。
今回も私の涙は直ぐに止まってしまった。
そして私は・・俯いたまま口を開いた。
「優・・あのね?私と新しい約束をして?」
「おは・・よう・・・?」
「う〜ん・・・。」
朝、玄関を出ると眠そうな顔をした優がいた。
あまりにも見た目が変わっているから驚いた。
金だった髪が黒とまではいかないが焦げ茶に、長かった髪はうんと短くなっている。
「・・なんだよ?」
「べ、べつに!」
少し(?)動揺したものの、すぐさま彼と並んで歩き出した。
約束その1
毎日一緒に登下校すること。
やっぱり優とこの道を歩かないと1日が始まらない。
学校に向かう足取りはこの前までとは違って軽い。
教室に入ると愛がすでに来ていた。
「まぁ〜な!おはよう♪」
「おはよう紫織。あと・・優??」
「なんだよ?」
愛は開いた口が塞がらないようだ。
視線は髪に集中している。
「やっぱ・・変か?」
優はガックリと肩を落とす。
「ううん!そっちの方が・・なんて言うか・・・。」
ん?愛の顔が紅いような・・。
「カッコいいよ!」
その言葉を聞いた優の頬が少し赤くなった。
なに・・これは?
「ねぇ〜し・・おり?」
愛が凍りついた。
「何でお前は愛を睨んでいるんだ?」
どうやら私は今現在、愛を睨んでいるらしい。
約束その2
「うっめぇー♪」
「俺の唐揚げ!かえせ!」
大好物の唐揚げを盗った隼人さんを螢さんは追っかける。
「唐揚げの恨みだぁぁあ!」
ドスッと鈍い音がした。
「メロス?!」
螢さんのドロップキックで隼人さんは数メートルを軽やかに飛んだ。
て言うか・・メロスって一体・・。
《ピピー!》
ホイッスルを鳴らし何処からか姿を現した早苗さんは何かを螢さんの突きつけながら駆け寄る。
あれは・・・・レッドカード?
つまりは・・退場?
意味が分かんないよぉ・・。
あれ?
螢さんが嘆いている。
「落ち着いて飯食わせろっつぅの。」
約束その2とは皆と一緒に昼食をとること。
もちろん・・・
「み・・・水!!」
優が食べている弁当は私の手作りだ。
・・・・もっとママに御料理習おうかな?
本日の最後である授業のチャイムが鳴ると優はいそいそ帰り支度を始めた。
「じゃ行ってくるわ!」
「頑張ってね。あとで練習見に行くから。」
「おう!」
笑顔で教室を出る優を見送ってから、帰り支度を始める。
最後の約束は・・・バスケをまた心から楽しんでください。
これにて優と紫織の話は無事終了・・・かな?次回からは視点が主人公である螢様に戻ります。